ニッケルクロム合金とは
ニッケルクロム合金とは、ニッケルを主成分とし、クロムを添加した合金ことです。
ニッケルクロム合金はその名の通りニッケルとクロムの組み合わせにより、優れた特性を発揮します。特に、高温環境下における耐酸化性、耐熱性、耐食性に優れていることで知られています。クロムの含有量は用途によって異なりますが一般的には10%から30%程度であり、含有量によって合金の特性が大きく変化する点が特徴です。
ニッケルクロム合金は、化学プラントや石油精製プラントなど腐食性の高い環境でも使用されます。クロムの添加により合金表面に緻密な酸化被膜が形成され、腐食の進行を抑制することが可能です。酸化被膜は高温環境下でも安定して存在するため、高温での耐酸化性向上が実現できます。ニッケルクロム合金は機械的強度にも優れています。高温環境下でも強度を維持するため、ガスタービンの燃焼室や航空機のジェットエンジン部品など高い信頼性が求められる用途にも使用されています。
ニッケルクロム合金の使用用途
ニッケルクロム合金の使用用途として、電熱線としての利用、航空宇宙産業における利用、化学工業における利用、医療機器への利用の4つを解説します。
1. 電熱線としての利用
ニッケルクロム合金の一般的な用途の一つは、電熱線としての利用です。ニッケルを主成分とし、クロムを添加した合金、特にニクロムと呼ばれる組成は電気抵抗が非常に高く、通電することで効率的に熱を発生させます。また、高温環境下でも酸化しにくく長期間安定して使用できるため、電熱線として理想的な材料と言えます。家庭用電化製品では、トースター、電気こたつ、ヘアドライヤーなどの発熱体に広く用いられています。
2. 航空宇宙産業における利用
航空宇宙産業では、極限環境に耐えうる材料が求められます。ジェットエンジンの燃焼室やタービンブレードなどの高温部品には、耐熱性、耐酸化性、クリープ強度に優れたニッケルクロム合金が使用されています。
3. 化学工業における利用
化学工業では様々な化学物質を取り扱うため、耐食性に優れた材料が必要です。ニッケルクロム合金は、酸、アルカリ、塩類など多くの腐食性物質に対して優れた耐性を有しています。そのため、化学反応容器、配管、バルブなど腐食環境に晒される部品や装置に広く用いられています。
4. 医療機器への利用
近年では医療分野でもニッケルクロム合金の利用が進んでいます。その生体適合性や耐食性から、人工関節や歯科インプラントなどの医療機器に用いられています。