粘弾性測定器

粘弾性測定器とは

粘弾性測定器とは、試料の粘弾性を評価する測定機です。

粘弾性測定には大きく2つの種類があります。金属材料などの個体の動的粘弾性 (DMA: Dynamic Mechanical Ayalysis) を評価する装置と、流体に近いペースト状の材料の粘弾性を評価するレオメーターと呼ばれる装置です。

粘弾性測定器の使用用途

1. DMA

DMAと呼ばれる粘弾性測定器は、主にプラスチック製品が用いられます。プラスチック製品以外では、食品用途で歯ごたえや食感を決める時にも使われています。

2. レオメータ

レオメータは塗料やコーティング剤の特性評価、食品ではチョコレート、ケチャップ、ヨーグルトなどの製品評価、ポリマーや石油化学製品、粘着剤、医療品、化粧品の製品評価に用いられています。これらの製品を製造する装置を選定する際にも、粘弾性測定器による評価が必要です。

粘弾性測定器の原理

粘弾性測定の原理は、評価対象に何らかの外力を加えて、現象を記録することです。粘弾性は単独で存在する物性ではなく、粘性と弾性が混じり合って存在しています。

1. 粘性

物体に外力を与えた時にひずみが発生し、外力を取り除いてもひずみがなくならない性質です。加えられたエネルギーは物体内に残らず、熱エネルギーに変換されて放出されます。そのため、ひずみが残り、形状が外力を加える前に戻らなくなります。

2. 弾性

物体に外力を与えた時に発生するひずみが、外力を取り除くことでなくなる性質です。加えられたエネルギーは物体内で貯蔵されるため、外力がなくなると元の状態に戻ります。

外力が付加された状態から取り除かれば場合、すぐに元に戻るのが弾性体、元の状態に戻らないのが粘性体、完全には戻らないものの、徐々に元の状態に戻ろうとする特性を示すものが粘弾性体です。

外力を与えた際のエネルギーから見ると、エネルギーが全て物体内に蓄えられるものが弾性体、エネルギーは熱などとして発散・放出されるのが粘性体、貯蔵と発散・放出の両方に振り分けられるものを粘弾性体といいます。

粘弾性測定器の種類

粘弾性を測定する機械には、大きく2種類あります。

1. DMA

DMAは動的な機械特性を測定する装置です。例えば高分子材料の物性を把握する上において、粘性や弾性は重要な指標になります。高分子の成形加工では、成型品の収縮や射出時の膨張が課題にあります。

この現象も粘弾性によるものであり、成型時には粘弾性を考慮した設計が必要です。主にDMAを測定できる装置が用いられます。与える外力は引張、圧縮、両持ち梁曲げ、自由支持3点曲げ、せん断のモードがあります。

2. レオメーター

レオメーターは食品、医薬、化粧品製品分野で、粘度の性質を測定するために用いられています。食品には舌触り、歯応え、歯切れ、口溶け、喉越しといった、人間の感覚に関わる特性を定量的に評価することが重要です。このような官能評価は個人差があるため、数値によって評価することは安定した品質確保に欠かせません。

レオメーターに類似したものに、粘度計があります。粘度計は主に回転といった1方向だけの外力を与えて物性を評価します。レオメーターはDMAと同様に、振動 (正弦波) による評価をするのが違いです。

粘弾性測定器のその他情報

動的粘弾性測定での評価

レオメータやDMAと呼ばれる動的粘弾性測定においては、周期的な振動荷重を加え、試料に生じる応力と位相差から、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正弦といった特性を評価します。貯蔵弾性率は試料の弾性特性の強さ、損失弾性率は試料の粘性成分の強さを表します。

損失正弦とは損失弾性率と貯蔵弾性率の比であり、tanδとして評価される重要なパラメータです。tanδは粘性の寄与率を表し、tanδが大きいほど液体に近い性質をもちます。

参考文献
https://www.ites.co.jp/chemistry/index/others/dma-2.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/42/9/42_9_734/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnbr1987/21/1/21_16/_pdf
https://www.anton-paar.com/?eID=documentsDownload&document=58433&L=0
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/viscoelasticity-basic1/#i-3
http://www.unius-pa.com/wp/wp-content/uploads/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/80/10/80_10_404/_pdf

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