監修:ティビーアール株式会社
陸上養殖設備とは
陸上養殖設備とは、陸上に人工的に整備した魚介類の養殖を行うための施設です。
一般的な養殖は海の一部に養殖設備を設置しますが、陸上養殖は陸上に水槽などの養殖設備を設置する為、外部影響を受けにくく寄生虫の発生を防ぎやすいといったメリットがあります。また、陸上養殖は漁業権を必要とせず、適した用地を見付ければ参入しやすい養殖方法です。
陸上養殖設備には、かけ流し式、閉鎖循環式、半閉鎖循環式の3つの方式があります。
かけ流し式は、設備導入のコストを抑えることが可能で、自然から常に新しい水を供給し比較的水質は安定しますが、汚れた飼育水をそのまま排水するため外部環境を汚してしまう点が課題です。
一方、閉鎖循環式は飼育水を循環ろ過し繰り返し使用することで、排水は比較的少量ですむため環境に優しい養殖が可能になり近年注目されています。閉鎖循環式は、設備の導入・維持管理費用の高コストが難点ですが、高級魚の養殖を中心に各地で広がっています。
陸上養殖設備の使用用途
かけ流し式及び閉鎖循環式の陸上養殖設備における養殖実績は多種にわたりますが、主要な魚種として、ヒラメ、クルマエビ、トラフグなどがあげられます。
また、陸上養殖の中でも閉鎖循環式は天然ものなどに比べコストがかかる為、高級魚を中心に養殖される傾向にあり、その中でも特にサーモンが注目されています。天然もののサケは寄生虫のリスクがあり生食が難しいですが、閉鎖循環式の養殖により生食可能なサーモンを飼育することが可能になります。
陸上養殖設備の原理
以下に陸上養殖の3つの方式と、閉鎖循環式の主要な構成・原理を記載します。
・かけ流し式
かけ流し式は、海や川からポンプで水をくみ上げ水槽に供給し、飼育で汚れた水を排水する方式です。
水槽と給排水のポンプがあれば飼育でき、設備導入コストを抑えることが可能です。
自然から水を供給するため水質が比較的安定しつつも水質調整が難しいことや、汚れた水を排水するため外部環境を汚してしまう難点があります。
・閉鎖循環式 ( 英 : Recirculating Aquaculture Systems , RAS )
閉鎖循環式は、海や川などと分離された陸上の水槽やプールなどで飼育し、飼育で汚れた水をろ過・殺菌し飼育水として再利用する方式です。海洋深層水や人工海水などの安全な水を魚種に合わせて使用します。
メリットは、水温など飼育環境をコントロールすることで成長を促進し安定生産可能になることや、外部環境を汚しにくい点、トレーサビリティに対応可能なことなどです。
水質を維持するため高度なろ過技術が必要とされ、設備の導入・維持費用が高いことが課題です。
・半閉鎖循環式
半閉鎖循環式は、かけ流し式と閉鎖循環式の両方を組み合わせた方式です。閉鎖循環式で水質を維持しながら、汚れた飼育水をろ過・再利用又は排水します。
水質調整はしやすくなり、排水の量もかけ流し式よりは減りますが、使用する装置が増える為コストはかけ流し式より高くなります。
1. 水槽
水槽は、魚介類を飼育するために使用します。魚介類の種類や設置場所に応じて、材質や形状など様々なものがあります。
2. 循環ポンプ
循環ポンプは、水槽内の水を循環させろ過装置などに水を送るために使用します。
3. ろ過装置
閉鎖循環式及び半閉鎖循環式において要になる技術がろ過装置です。
まず、餌の食べ残しや排泄物などの目に見えるゴミを、フィルター等を用いた物理ろ過と呼ばれる装置で除去します。その後、生物ろ過と呼ばれる装置で、飼育物からのアンモニア・亜硝酸イオンなどをバクテリアの働きで除去していきます。
4. 殺菌装置
水槽内のウイルスや雑菌などを殺菌・不活化するのに使用します。紫外線殺菌装置やオゾン発生装置など様々な装置があります。
5. 水温調節機
水槽内を飼育物に合わせ適切な温度に保つために使用します。水温調節は、飼育物の成長の促進、病気のリスク回避に重要です。
その他
近年注目されている閉鎖循環式の陸上養殖設備における課題及び対策について記載します。
1. 設備の導入費用
設備導入には高価格がハードルになりますが、近年は小型の設備も開発されてきていますので、小規模から始めることにより導入費用を抑えることが可能になります。
2. 設備の維持費用・手間
設備の維持にあたり複数の装置を常時作動しているため電気代が高額となります。対策としては、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用することなどが考えられます。
また、水質・水温管理や餌やり、設備のチェックなどの手間もかかりますので、IoTやAIの活用などが進められています。
3. 災害対策
災害時には、地震・水害による設備破損や停電による設備停止などのリスクが想定されます。
その為、設備を設置する用地は災害リスクの少ない地域を選定することや、バックアップ電源の確保など災害対策をする必要があります。
本記事は陸上養殖設備を製造・販売するティビーアール株式会社様に監修を頂きました。
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