マイクロチューブとは
マイクロチューブとは、生化学および分子生物学などで用いられるマイクロリットルからミリリットル単位のポリプロピレン製小型試験管です。微量遠心機にセットして使用することが多いため、微量遠心管とも呼ばれます。
マイクロリットル単位で行う実験において、異物の混入は実験結果に大きく影響するため、基本的には使い捨てで使用する、ディスポーザブル型消耗品です。
0.2ml, 1.5ml, 2.0mlなど多様な容量のものがあります。ロック式の蓋が本体から繋がっており、密閉性が優れています。
マイクロチューブの使用用途
図1. マイクロチューブの概要
マイクロチューブは試料調整・反応・保存・抽出・濃縮・培養などに用いられます。用途に応じて多様な素材や形状のものがあります。
例えば、遺伝子を扱うPCR試験においては熱制御が重要であり、また、DNase、RNaseや核酸などの汚染がないものを用いることが必要となります。そのため、PCR試験では比較的壁が薄く均一で熱伝導効率に優れ、清潔が保証された専用のマイクロチューブが用いられます。
その他、タンパク質やペプチドを扱う解析では、内壁への吸着を低減するタイプのマイクロチューブ(低吸着チューブ)を使用します。
マイクロチューブの構造
マイクロチューブは、一般的にはポリプロピレンでできています。ポリプロピレンは熱可塑性樹脂の中では耐熱性が高いため、オートクレーブにも使用することができます。
また、ポリプロピレン製マイクロチューブは、耐薬品性にも優れ、硫酸や水酸化カルシウムなどの酸・アルカリにも強く、多くの有機溶剤にも耐性があります。ただし、クロロホルムや濃度の高い酸など一部利用できない薬剤もあるので、必ず製品情報を確認することが必要です。
ポリプロピレン製では用いることのできない溶剤を利用する場合は、ガラス製のマイクロチューブを使用します。ガラス製のマイクロチューブはポリプロピレン製のマイクロチューブよりも耐薬品性が強いです。透明度も高いので、内容物の観察が必要な場合にも適しています。
その他、低吸着タイプのマイクロチューブにはシリコンコーティング、MPCポリマーコーティングなど低吸着の処理方法も多様で、目的に合った製品を選ぶ必要があります。
マイクロチューブの選び方
図2. 特殊なマイクロチューブ
まずは、扱う試料・溶媒量に合わせて、チューブの大きさを選択します。次に、使用する溶剤・薬品の中に、チューブ素材のポリプロピレンを溶かしたり、ポリプロピレンと反応したりするものがないか確認し、ポリプロピレン製チューブが使用できない場合はガラス製マイクロチューブを選択します。
マイクロチューブは基本的には無色透明であることが多いですが、完全遮光チューブや半透明の一部遮光チューブもあります。試料や薬品が光刺激に弱い場合は、遮光性のあるものを選んでください。
タンパク質・ペプチドなどを用いる場合は、実験の性質や試料の特性に応じて、低吸着チューブを選択します。低吸着化の処理方法にも種類があるため、実験系に適した製品を選択することが重要です。
図3. ポリプロピレン製マイクロチューブの薬品耐性一覧
例えば、シリコンコーティングは撥水性加工のため、粘性の高い血液や核酸などに適しています。有機溶剤を使用するとコーティングが剥がれる恐れがあります。
一方で、MPCポリマーコーティングは親水性加工のため、タンパク質などの疎水性サンプルの利用に適しています。アセトニトリルやDMSOなどの有機溶剤には耐性がありますが、強酸および強アルカリには耐性がありません。
ポリプロピレン表面処理によって低吸着化を図るのではなく、独自のタンパク質・ペプチド低吸着樹脂原料を配合することで表面吸着を抑えるタイプの低吸着チューブもあります
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/htsj1999/43/180/43_180_24/_article/-char/ja/
http://www.hi-tech-inc.jp/prd43.htm