ポリイミドフィルム

ポリイミドフィルムとは

ポリイミドとは、極めて強固な分子構造をしているために熱硬化樹脂の中最も耐熱性に優れたプラスチックです。

他にも高絶縁性、低誘電率、体誘電損失などの電気特性、耐薬品性、耐放射線性に優れています。電気・電子機器や各種産業機器、宇宙航空分野などでは不可欠の材料で、熱に対する膨張率が低いため寸法誤差を抑えることが可能です。

密着性、半田耐熱性、寸法安定性など、製品の小型化に大きく貢献しています。

ポリイミドフィルムの使用用途

ポリイミドフィルムは、低誘電率、かつ熱に対する膨張率が低いことから、精密フレキシブルプリント配線の基板やモーターコイルの絶縁体として用いられています。それらは、ノートパソコンやスマートフォンなどに組み込まれています。

通常、ポリイミドは黄色や橙色をしていますが、透明なタイプのポリイミドフィルムは用途が幅広いです。スマートグラス用基板や次世代ディスプレイ基板、太陽電池用基盤などの透明性を生かした基盤、タッチパネルやディスプレイなどの表示機器として使用されます。

ポリイミドフィルムの原理

ポリイミドは主鎖構造が主に芳香環 (ベンゼン環とイミド環) で構成されています。自由回転が可能な単結合が少ないため配座構造がほとんど変化せず、ガラス転移点や融点が高くなることを意味します。これがポリイミドの高い耐熱性の理由です。

多くのポリイミドフィルムは黄色や橙色に着色しており、イミド環の分極に基づいて、分子内、分子間での電荷移動錯体を形成していることに由来します。光学材料として使用するために無色透明なポリイミドが求められ、置換基で意図的に立体障害を起こさせ非平面構造にしたポリイミドや、脂環構造のポリイミドが例に挙げられます。

基盤として使用する際には信号の高速化のために、ポリイミド絶縁膜の誘電率をできるだけ低くすることが重要です。主鎖中にかさ高い連結基を導入して分極率の高いイミド環の割合を減らしたり、フッ素やトリフルオロメチル基を置換基として導入したりすることで可能になります。

ポリイミドフィルムの種類

1. 一般用途ポリイミドフィルム

一般用途ポリイミドフィルムは、最も一般的なタイプのポリイミドフィルムであり、広範な産業分野で使用されています。その主な特徴は、耐熱性の高さです。

一般用途ポリイミドフィルムは通常、耐熱温度が200℃以上であり、高温環境での使用に適しています。また、耐薬品性や耐摩耗性も優れており、様々な環境において長期間の使用に耐えることが可能です。

2. 超高耐熱ポリイミドフィルム

超高耐熱ポリイミドフィルムは、一般用途ポリイミドフィルムよりも更に高い耐熱性を持つタイプのフィルムです。耐熱温度が一般的に300℃以上に達し、高温環境での使用が必要な厳しい産業分野や航空宇宙産業で広く利用されています。

航空機や宇宙機器の部品として、エンジンや推進系の高温部位での絶縁材として使用されることがあります。また、エンジンや高温炉、電子機器など、高温環境下での断熱や保護が必要な場面で重要な役割を果たすフィルムです。

3. 透明ポリイミドフィルム

透明ポリイミドフィルムは、通常のポリイミドフィルムと同様の特性を持ちながら、透明性を持つフィルムです。通常のポリイミドフィルムは一般的には非透明ですが、透明ポリイミドフィルムは特別な加工により透明化されています。

高温環境下での透明な窓が必要な自動車のセンサーカバーや高温透明袋、光学センサーなどの透明部品の製造に使用されます。また、半導体製造や光学機器などの分野でも利用が可能です。

4. 粘着付きポリイミドフィルム

粘着付きポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムの片面に粘着剤を付けたタイプのフィルムです。これにより、簡単に貼り付けることが可能で、特に電子機器や電気部品の組立や保護に重宝されます。

粘着付きポリイミドフィルムは、配線の絶縁、部品の保護、シール材として使用され、電子機器の製造工程で活躍します。また、高温環境下での粘着性が保たれるため、高温部品の保護や絶縁にも適したフィルムです。

参考文献
www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1998/4/7/4_7_640/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/46/8/46_8_566/_pdf

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