グラファイト金型

グラファイト金型とは

グラファイト金型とは、金属製の金型を作る際に、グラファイト製の電極から金属に放電加工をおこなって電極の形状を転写して作った金型です。

通常の金型は、金属を切削あるいは曲げ加工などして製造します。そのため、切削工具や曲げ加工で対応できる形状やサイズにしか対応できず、非常に複雑な形状や微細なサイズには対応できません。

グラファイト金型では、グラファイト製の電極から金属に放電加工をおこない、電極の形状をハンコのように写し取り金型を製造します。金属を切削および曲げ加工する場合よりも、複雑な形状や微細なサイズに対応可能です。

グラファイト金型の使用用途

グラファイト金型は様々な製品の製造に使用されています。例えば、自動車工業用鍛造型やプラスチック型、アルミニウム押出金型用途に使用されています。繊細な形状や微細なサイズにも対応できるため、カメラやレンズなどの精密機器に使用する製品の金型、家電製品に使用する製品の金型などとしても好適です。

グラファイト金型の原理

グラファイト金型は、グラファイト製の電極から金属に放電加工して電極の形状をハンコのように写し取って製造した金型です。グラファイトでは、炭素が亀の甲のように六角形に結合したものが層状に結合しています。当該物質の最も身近な例は、鉛筆の芯です。

なお、グラファイトは、以下のような特性を持つ物質です。

  1. 耐熱性が高い
    大気中では200℃~450℃、非酸化雰囲気中では3,000℃と極低温から高温まで耐えられます。急激な熱変化にも強い特性を持ちます。
  2. 機械加工性が良い
    切削性がよく複雑な形状の加工が可能です。
  3. 熱膨張係数が低い
    熱膨張係数が低いため電極の仕上げ面や製品形状が安定します。なお、グラファイトの熱膨張係数は、同様に放電加工で金型を作る電極に使用される銅の3分の1です。

また、グラファイトよりなる電極を使用して金型を作った場合、銅電極を使用した場合よりも放電加工能力に優れており加工速度が上がるため、生産効率も上がります。グラファイトにはこのような特性があるため、金型加工に使用する放電電極として非常に好適です。

グラファイト金型のその他の情報

1. グラファイト金型の製造方法

グラファイト金型の製造に使われる型彫放電加工機は、簡単に解説すると、金型にする被加工物を配する加工槽、グラファイト製電極を配する電極部、電極に電流を流す電源より構成されています。

最初の工程では、加工槽の中に加工される被加工物をセットします。なお、加工層には加工液が入っており加工される物質は加工槽内に沈められた状態です。
加工液は加工される物質の温度を一定に保つ、電極と加工される物質間を絶縁する目的で配されています。

次の工程は、加工液に沈められた被加工物にグラファイト製の電極を向い合わせた状態で近づけ、電極に電源から所定の電流を流して加工する工程です。加工液により加工される物質と電極の間は絶縁されていますが、所定の距離まで近づくと絶縁破壊が生じて電極と加工される物質の間にはアーク柱と呼ばれる高密度な放電状態が発生します。これにより、局所的に6,000〜7,000℃の高温になるため、金属よりなる被加工物が溶融します。

さらに、アーク柱の周囲の加工液が急激に高温となって気化して局所的な爆発現象を起こし、被加工物と電極の表面にある溶解金属を吹き飛ばします。これで、グラファイト製の電極の形状が被加工物にハンコのように転写され、金型が製造される仕組みです。

2. グラファイトモールド

「グラファイト金型」は、通常はこれまで解説してきたような「グラファイト製の電極から金属に放電加工して電極の形状を転写した金型」です。しかし、近年では海外の企業などが「グラファイトをモールディングした金型」を「グラファイト金型」として紹介するケースがあります。アルミニウムや金など金属のインゴットの鋳造や、ガラスビーズの製造、金属や非金属のリング状部品の製造、ダイヤモンド工具の製造などに使用されています。

3. グラファイトとカーボンの違い

カーボンは、炭素原子を含む物質全般の総称です。つまり、グラファイトもダイヤモンドもカーボンの中に含まれます。カーボンと称されるものには、石炭や石油、アスファルトのように炭素原子と他の物質が結合した化合物も含まれています。一方のグラファイトやダイヤモンドは純粋な炭素原子の固まりです。

炭素を含む有機化合物であるカーボンが、窒素やアルゴンなど不活性ガスの中などの不活性雰囲気や、空気を密閉した状況下で数百℃~数千℃域で過熱されると灰や炭になります。この現象は炭素化と呼ばれ、得られる物質は炭素のみを含む結晶と不純物を含有する無定形炭素です。

そして、無定形炭素に空気を遮断した状態で2,700から3,000℃位の高温を掛けて、不純物を燃焼および気化させる黒鉛化をおこないます。その結果、炭素だけを含むグラファイトが生成されます。なお、このグラファイトにさらに熱と膨大な圧力を掛け続けて得られる物質がダイヤモンドです。

参考文献
https://mrc.toyotanso.co.jp/202108-mag-edm-basic/
https://www.0ho.co.jp/product/p6/
http://graphite-jp.com/aboutgp/aboutgraphite/
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https://www.0ho.co.jp/carbon/p1/
https://ja.cngraphitemold.com/graphite-mold/