定電流供給装置とは
定電流供給装置とは、出力電流が常に一定になるように制御して供給する電源回路のことです。
定電流電源、定電流源、定電流安定化電源と呼ばれる場合もあります。直流の定電流供給装置が一般的ですが、交流の定電流供給装置も存在します。
定電流供給装置の使用用途
定電流供給装置すなわち定電流電源の主な使用用途は、LEDの電源や二次電池の充電、センサー信号電源などです。それ以外では、低抵抗測定や動作試験 (ケーブル、ヒューズ、スイッチ、超伝導コイル、アースライン、電流保護装置など)、大電流通電時の温度分布測定、電解処理などの用途もあります。
1. LED
定電流供給装置はLEDの電源として使用される装置です。LEDの光量すなわち明るさは流れる電流値で決まります。そのため、電流値が変動すると、それに伴って明るさが変化し、ちらつきが発生してしまいます。安定した明るさを保つためには、安定した電流供給が必要です。
また、LEDは温度によって抵抗値も変動します。定電圧回路では安定した電流値の制御が難しい理由の一つです。大型のLED照明やディスプレイでは消費電流も多くなるので、大電流に対応できる定電流回路が求められます。
2. 二次電池の充電
二次電池は、電圧と電流が比例しないという性質があります。そのため、加える電圧の値によらず一定の電流が供給されるよう充電に際して定電流供給装置・定電流電源を使用することが必要です。
二次電池の例としては、スマートフォンなどに使用されているリチウムイオン二次電池が挙げられます。また、バッテリーの内部抵抗などを測定するバッテリー試験器にも、定電流供給の機能がある充放電バッテリテスタがあります。
3. センサー信号用電源
定電流供給装置は、センサー信号の電源としても用いられています。多くのセンサー信号は、条件に応じて抵抗率が変化するセンサー素子を用いていますが、信号として抵抗率の変化を読み取ることが必要です。定電流供給装置を用いて一定の電流を供給することにより、抵抗値の変化がそのまま電圧の変化に変換され、信号を電圧の変化としてCPUで読み取ることが可能となります。
センサーに使用されている素子の例には、圧力に応じて抵抗率が変わるピエゾ素子や温度変化に伴う金属の抵抗率差の測定に用いられる測温抵抗体などが挙げられます。
定電流供給装置の原理
起電力E、内部抵抗rの電源を可変抵抗Rに接続したときの電流値Iは、キルヒホッフの法則より以下の式で表されます。
I = E / (R+r)
rがRに比べて十分大きい時 (理想的には無限大) 、R+r ≈ r と近似することができ、電流値I は次のように近似されます。
I ≈ E / r
すなわち、定電流供給装置・定電流源とは、回路内の合成抵抗に対して内部抵抗が十分に大きくなるような電源です。
なお、電圧源と電流源は相互に等価変換することが可能です。 起電力Eの理想的な電圧源と内部抵抗rが直列接続された電源は, 電流Iを供給する理想的な電流源と内部抵抗rが並列接続された電源と等価であると見なされます。
定電流供給装置の種類
1. 直流安定化電源
定電流供給装置の種類の一つに、直流安定化電源があります。広く普及している直流安定化電源では、ほとんどの製品で定電圧モードと定電流モードの切替ができるようになっています。
制御方式には、入力と出力の間に制御回路を入れて安定化させるシリーズレギュレータ電源や、入力のオンオフを繰り返すことで高周波を作りだし、整流・制御によって安定化させるスイッチング電源などがあります。スイッチング電源のほうが効率が良いとされますが、シリーズレギュレータ方式に比べてノイズが大きいことがデメリットです。また、定電流モードだけでなく、定電圧モード、定電力モードや定抵抗モードなどにも切替可能な可変スイッチング電源もあります。
2. その他
上記の直流安定化電源以外では、出力絶縁型定電流電源や交流の定電流供給装置、交流安定化電源も存在します。使用する場合は、用途に合わせて適切に選択することが必要です。
参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/constant.html
https://physnotes.jp/em/current-sup/
https://www.matsusada.co.jp/column/words-dcpsel.html
https://www.matsusada.co.jp/column/ps_types_and_application.html