デカンター遠心分離機

デカンター遠心分離機とは

デカンター遠心分離機とは、遠心力を用いて固体と液体もしくは液体同士の混合物 (懸濁液) を分離・脱水する工業用遠心分離機の一つです。

重力場では液体は下に溜まり、遠心場では内容物が回転筒内面の全周に溜まることを利用して混合物を分離しています。二相分離だけでなく、水、油、固形分の混合液を分離する三相分離型の装置もあります。

幅広い混合液に対応するとともに性状の変化にも対応し、大型の装置が多いです。連続した大容量処理を行うことができます。

デカンター遠心分離機の使用用途

デカンター遠心分離機は、開発当時は鉱物などの無機系スラリーの固液分離および脱水を主な用途としていました。現在では排水処理や各種工場の製造プロセスなど、産業における幅広い用途があります。

具体的な用途として、水処理では都市下水などの下水汚泥や電子工業排水処理をはじめとする工場排水の固液分離、様々な工業における工場排水などの固液分離・脱水が挙げられます。また、産業プロセスでは食品分野、医薬品製造分野をはじめ、化学分野、鉄鋼業などで活用されている装置です。

1. 食品分野

食品分野では、豆乳・おからの分離・脱水や果汁の抽出、野菜ジュースの分離などの他、コーンスターチ、馬鈴薯などを用いたデンプンの分離に用いられます。酵母、豆乳、飲料などの製造に用いられることが多い装置です。

2. 化学分野

化学分野では、塩化ビニルやポリエチレンなどをはじめとした合成樹脂の製造工程 (脱液) や、酸化チタンや黄鉛などの各種染料・顔料、有機溶剤を含むスラリの分離、触媒の回収、石炭液化、重質油、廃プラスチックなどの用途があります。その他、無機化学肥料などの製造工程においても用いられる装置です。

3. 鉄鋼業分野

鉄鋼業分野においてデカンター遠心分離機で分離される主な物質は、微粉炭、鉱石粉、スラグ、鉄粉、ガラス粉、銅粉などです。

デカンター遠心分離機の原理

デカンター遠心分離機は、重力場において液体は下に溜まること、遠心場においては内容物が回転筒内面の全周に溜まることを利用して、固形物を沈降させています。分離の流れは下記のとおりです。

  1. 混合物はフィードパイプから装置内へ入り、外胴であるボウルへと運ばれます。
  2. ボウルが高速回転することにより、ボウル内で遠心力場における比重差による固液分離が行われます。
  3. ボウルで分離された固形物は、内胴であるスクリューによって運ばれ、この間に更に脱水されます。
  4. 脱水された固形物や清澄液がそれぞれ固形物排出孔、清澄液排出孔からボウル外に排出されます。
  5. 分離された固形物と清澄液は別々にケーシングで集められ、機外に排出されます。ケーシングとは、分離された固形物および清澄液を捕集するボックスです。

なお、ボウルとスクリューコンベアに回転差を与える装置は差速装置と呼ばれます。軸受箱およびケーシングを支える構造物がフレームです。分離した固形物をケーキと呼ぶこともあります。

デカンター遠心分離機の種類

デカンター遠心分離機の多くは、回転軸が水平方向となっている横型ですが、回転軸が垂直な竪型の装置もあります。

1. 竪型装置

竪型装置は横型に比べて設置面積が少ないことが特徴です。

2. メカニカルシールを使用した装置

メカニカルシールを使用した装置は高気密で密閉性が高く、耐圧構造の装置では高圧の条件下で分離を行うことができます。

3. その他

分離板装着によって遠心沈降面積を大幅に拡大させ、分離能力を向上させた製品 (分離板型デカンタ) や、高効率脱水用デカンタなどもあります。装置によっては高温に対応しているものもあり、また三相分離型では水・油・固形分が1工程で分離可能です。

一度脱水したケーキのリスラリ洗浄が可能なケーキリンス型や、汚泥濃縮用デカンタなどのように特定の用途に特化した種類もあります。

参考文献
https://www.en-boon.com/maker-by-use/decanter.html
https://www.kakoki.co.jp/products/m-021/index.html
http://www.hiroshimamm-chemtech.com/knowledge/knowledge-859/