水冷機とは
水冷機とは、冷媒として水を用いる冷却機器です。
装置の内部に冷却用の液体を循環させる冷却機器では、循環液を冷却する必要があります。水冷機とは、この循環水や循環液を冷やすために、外部から取り込んだ水を冷媒として用いる冷却機器です。また、冷却用の循環液自体に水が使われる場合もあります。
水冷機に分類される製品には、水冷チラー、水冷式冷却水循環装置など、様々なものがあります。空冷式の冷却機と異なりファンを内蔵しないため、低騒音、クリーン、室内への排熱がない点が特徴です。
水冷機の使用用途
水冷機は、循環液 (または循環水) を繰り返し循環させることにより、対象物・装置から熱を奪って冷却する装置です。研究機器、金属加工、食品加工、医療機器など、様々な分野・産業で使用されます。主な使用用途は下記の通りです。
- 各種研究機器、計測機器を冷却し、一定の温度に保つ (ロータリーエバポレーター、電子顕微鏡、X線回折装置や赤外分光光度計など)
- 食品加工工場での製造工程上の冷却や、洗浄・成形工程における冷却
- 工作機械の温度調節
- 金属加工において、加工による発熱を抑えるための冷却
- プラスチックの射出成形における、成形物の冷却・固化
- 印刷機のローラー部分の冷却 (印刷の精度を向上させる)
- レーザ加工機や高周波加熱装置などの発熱部を冷却する
- MRIで使用されるヘリウムガスの冷却
- 医薬品を製造する際に発生する反応熱の除去
- 成形機の金型温調
- リフロー炉 (リフローはんだ付け装置) における冷却
- その他産業機器の冷却
水冷機の原理
1. 概要
水冷機は、循環液などと呼ばれる液体が内部を循環して、冷却対象の装置から熱を奪います。一度排熱に使われた循環液は温度が上がってしまうため、外部から冷水を流して循環液を冷却し、排熱を行う仕組みです。循環の動力にはポンプや圧縮機 (コンプレッサー) などが用いられ、循環液には、純水、蒸留水、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの混合物が主に用いられます。
冷水としては、工業用水や水道水などが使用されます。また、水道水などは水温が安定しないため、クーリングタワー水などの一次冷却水を用いる場合もあります。また、通常は安全装置として、温度プロテクタ、過電流継電器、水圧センサなどが搭載されていることが多いです。
2. 特徴
空冷式と異なり、室内に排熱が出ないため、室内が上昇しないという点が長所です。空冷式の冷却機よりも効率が良く、短時間で冷却が可能であるという特徴があります。ただし、水を通すための配管などが必要であるという点には注意が必要です。冷水を通す配管経路上に水槽を用意するケースもあります。
水冷機の選び方
水冷機は、冷却能力や対応可能温度が製品によって異なります。具体的には、下記のような点を検討し、製品決定を行います。
- 循環液の温度を決める
- 設置場所を決める (製品によっては屋外も可能)
- ワークの温度変化や、循環水の流量・温度差などから冷却に必要な能力を算出する
- ポンプの能力を決める
冷却能力は、低いものでは1kW程度から、高いものでは14kW〜15kW程度の製品まであります。循環液温度は5℃〜40℃の範囲で対応している製品や、-10℃〜80℃の範囲まで対応している製品など、様々です。外部から水を流す配管が必要であり、比較的スペースも必要なため、設置場所を決める際は注意が必要です。製品によっては、屋外に設置することもできます。
このように、水冷機の選定にあたっては、様々な観点が必要ですが、用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。
水冷機のその他情報
その他水冷機のように水を冷媒とする冷却用品として、水冷服などの熱中症対策用品があります。例えば、水冷服では、リチウムイオンバッテリーなどを動力として少量の冷水を循環させ、冷凍ペットボトルや氷、保冷剤などを用いて水を再冷却する仕組みなどが用いられます。