テレメトリーとは
テレメトリーとは、観測対象から離れた地点から遠隔で観測を行い、データを取得する技術一般(遠隔測定法)を指す言葉です。
テレメトリーという言葉自体は遠隔測定法一般を広く指すため、様々な分野において多様な形態で行われています。分野によって少しずつ意味合いや形態が異なります。
テレメトリーの使用用途
テレメトリーは、様々な分野において多様な用途で用いられている技術です。具体例には下記のようなものがあります。
1. ソフトウェア製品
ソフトウェア製品や、ソフトウェアを搭載した機器製品などでは、パフォーマンスデータを収集し、監視と分析のためにそれを遠隔地に伝達するプロセスをテレメトリーと呼びます。
テレメトリーにより、開発者の側で、ユーザーの嗜好・利用時間・利用パターンの情報を得たり、クラッシュ報告を得たりすることが可能です。ネットワーク管理では、個々のソフトウェアの情報収集にとどまらず、複数のネットワーク関連機器から稼働情報を収集して一元化する場合もあります。
2. 課金情報
テレメトリーは、ガスや電気のメーターでも利用されています。各世帯での利用量などのデータをガス会社・電力会社で遠隔取得することが可能です。また、自動販売機では、テレメトリーを用いて商品の在庫切れやつり銭の不足解消、売り上げ管理などが遠隔で行われています。
従来人が行っていた作業をテレメトリーで遠隔化することで、人件費の削減や、人為的ミスの予防などを行うことが可能です。
3. 生物・医療
生物学の分野では、発信器などを取り付けて行動・生理・環境に関するデータを遠隔測定し、行動や生態を調査することをテレメトリーと呼ぶ場合があります (バイオテレメトリー) 。前臨床研究 (毒性学、薬理学、安全性薬理学研究など) として実験動物に対して行うものや、野生動物の生態、環境保護を目的に行われるものもあります。
また、実際に医療分野で患者の容態を遠隔モニタリングすることにも用いられている技術です。無線テレメトリー方式の生体情報モニタでは、心電図・脈拍・血圧・体温・パルスオキシメトリーなどの情報をスタッフステーションなどに常時送ることができます。
4. その他
レーシングカーではセンサーなどを取り付け、タイヤの磨耗・ブレーキの温度・燃費などを離れた場所から観測することに用いられています。宇宙分野では、ロケットや人工衛星は地上の管理側から離れているため、テレメトリーによる観測が非常に重要です。
また、軍事分野では、遠隔監視や得られるデータをテレメトリーと呼ぶこともあります。
テレメトリーの原理
テレメトリーは、観測対象と観測する側のデバイスを通信でつなぐシステムです。無線方式で繋ぐ方法と有線方式で繋ぐ方法とがありますが、通常は無線方式であることが多いです。
観測する側には
- センサや測定器・計測器
- 測定データを電気信号などに変換して伝送するための送信機
が搭載されている必要があり、観測する側には
- データ受信機
- データを蓄積・分析するためのシステム
が必要です。
テレメトリーの種類
テレメトリーは、様々な分野で使用されている技術であることから、製品形態も様々なものがあります。
1. 産業分野
産業分野では、各用途に合わせたテレメトリー用センサー製品が多く販売されています。例えば、ドローン飛行に適した製品の例では、サーボセンサー、光学回転センサー、磁気回転センサー、温度センサーなどがあります。また、人工衛星搭載用のテレメトリー装置は、無線を用いて人工衛星の状態情報を送信する装置です。
2. 動物・前臨床研究
前臨床研究での動物実験用には、専用の製品が販売されています。ラット・マウスや、大型動物に埋め込むための装置や、ジャケット型 (主に手術や麻酔に耐えられない場合) の装置があります。
心電図、脳波、筋電図、眼電図、血圧、呼吸数、体温、加速度などを測定することが可能です。毒性学、薬理学、安全性薬理学研究などに広く役立てられています。