TOC計とは
TOC計とは、サンプル中の有機炭素の総量を測定するための分析装置です。
TOCとはTotal Organic Carbonの略であり、全有機体炭素と訳されます。有機体炭素とは有機化合物に含まれる炭素のことであり、TOCはサンプル中に含まれる有機化合物の総量を示す指標です。水や土壌または化学製品など、さまざまな環境サンプルや化学製品中の有機物の総量を測定するために使用されます。
TOC計は非常に高感度で、微量の有機物を検出できます。微小濃度の有機物にも対応できるため、環境モニタリングや品質管理において正確な測定が可能です。また、製品によってはリアルタイムまたは非常に短時間で測定を行うことができます。
一般的には液体サンプルを測定するTOC計が多く販売されていますが、固体サンプルを測定する製品も存在しています。
世界的に取り組みが活発なカーボンニュートラルの一環である、CO2排出量の削減、もしくは排出されたCO2の資源化を目的としたカーボンリサイクル関連施策では、効果測定として「炭素固定化量」の正確な評価を行うことが重要となり、固体TOC分析はその中核技術となりつつあります。たとえば、セメント・コンクリートや海藻類(ブルーカーボン) へのCO2の固定化量の分析などがあげられます。
TOC計の使用用途
TOC計は様々な産業や環境分野で幅広く使用されています。以下はその使用用途一例です。
1. 浄水場
浄水場は安全で飲料可能な水を提供する重要な設備です。したがって、水質を常に監視し、有機物の濃度を追跡するためにTOC計が使用されます。有機物が高濃度である場合は浄化が不完全な可能性があるため、TOC計によって水質の安全性を確保しています。
2. 農業
農業分野では土壌中の有機物含有量をTOC計で測定して、土壌の肥沃度を評価する場合があります。これにより、土壌に不足している栄養素を肥料などで補うことが可能です。したがって、TOC計で土壌成分を監視することは作物の収量と品質に影響を与えます。
3. 環境監視
官庁において河川や湖沼などの水域において有機物の濃度をモニタリングし、水生生態系への影響を評価することも多いです。これにより、環境汚染源の特定や改善策の立案ができます。
また、土壌汚染調査や浄化計画においては、土壌中の有機物汚染度合いを監視するためにTOC計が使用されます。環境保護に貢献することが可能です。
TOC計の原理
1. 燃焼法
サンプル中の有機物を高温で完全に燃焼させる方式です。有機物が酸素または酸化剤の存在下で燃焼し、CO2に変換されます。生成されたCO2が検出器によって測定される仕組みです。
測定されたCO2の量から、有機炭素の総量が計算されます。測定結果は直接的で信頼性が高く、他の無機物の影響を受けにくい点が特徴です。燃焼によって生成されるCO2は、一般的に非分散型の検出器を使用して測定されます。
2. 酸化法
サンプル中の有機物を酸化剤を使用して酸化させる測定方法です。一般的に使用される酸化剤は過硫酸塩や酸化カリウムです。酸化反応によって生成される酸化生成物や酸素ガスなどが測定する仕組みです。
燃焼法に比べて低温で測定でき、エネルギー消費が低い点が特徴です。また、燃焼法よりも簡素なプロセスで測定することができます。ただし、燃焼法に比べて精度がやや低いことがあるため注意が必要です。
TOC計の選び方
TOC計を選ぶ際は、以下のような選定要素を考慮することが重要です。
1. サンプル種類
対象となるサンプルの形状や性情を、予め把握することが重要です。液体サンプルのTOC測定には液体TOC計が使用されます。固体サンプルのTOC測定には、固体サンプル用の特別なTOC計が必要です。
2. 測定元素
一般的にはTOC計は炭素を測定しますが、一部の装置では多元素を同時に測定することが可能です。TOC計の構成によって、同時に測定できる元素が異なることがあります。必要な元素の測定範囲に注意して選定します。
3. 最大流量
測定対象のサンプルの最大流量を考慮ことが必要です。高い流量を処理できるTOC計が必要な場合もあれば、小規模なサンプルを処理するためのTOC計が必要な場合もあります。最大流量要件に基づいて適切なTOC計を選ぶことが重要です。
4. 精度
TOC計の精度と感度については、特定の用途に合わせて考慮することが必要です。高精度が必要な場合や微量の有機物を測定する必要がある場合、高感度のTOC計を選定します。TOC計は通常ppmやppbなどの単位で結果を表示されることが多いです。