ニトロアセトアニリドとは
図1. ニトロアセトアニリドの3つの位置異性体
ニトロアセトアニリド (英: Nitroacetanilide) とは、化学式C8H8N2O3で表されるアセトアニリドのニトロ誘導体化合物です。
ニトロ基の置換位置により、2-ニトロアセトアニリド (o-ニトロアセトアニリド)、3-ニトロアセトアニリド (m-ニトロアセトアニリド)、4-ニトロアセトアニリド (p-ニトロアセトアニリド) の3つの位置異性体が存在します。
分子量は180.16であり、3つの異性体とも常温では固体の状態で存在します。
ニトロアセトアニリドの使用用途
ニトロアセトアニリドの主な用途は、有機合成原料・有機合成中間体です。
例えば、4-ニトロアニリンを合成する際は、アニリンのアミノ基を保護してアセトアニリドとした後、ニトロ化反応によって4-ニトロアセトアニリドを中間体として経由します。アニリンを直接ニトロ化しようとすると酸化による分解やアニリニウム塩形成による配向性の変化が起こるためです。
4-ニトロアニリンは、色素や医薬品合成の中間体、酸化防止剤、ガソリンのガム状化防止剤、など、工業的に種々の利用法がある有用な化合物です。
ニトロアセトアニリドの性質
1. 2-ニトロアセトアニリド
2-ニトロアセトアニリド (o-ニトロアセトアニリド) は、融点93℃であり、常温では薄い黄色もしくは褐色の結晶性粉末です。アミド基から見てオルト位 (2位) にニトロ基が結合しています。CAS登録番号は、552-32-9です。
光によって変質する可能性があるため、保管時には高温と直射日光を避ける必要があります。強酸化剤とも反応するため、混触を避けるべきとされます。
2. 3-ニトロアセトアニリド
3-ニトロアセトアニリド (m-ニトロアセトアニリド) は、アミド基から見て、メタ位 (3位) にニトロ基が結合しています。融点は151-154℃であり、常温では薄い黄色から黄褐色の結晶性粉末です。CAS登録番号は、122-28-1です。
光によって変質する可能性があるため、保管時には高温と直射日光を避ける必要があります。強酸化剤とも反応するため、混触を避けるべきとされます。
3. 4-ニトロアセトアニリド
4-ニトロアセトアニリド (p-ニトロアセトアニリド) は、アミド基から見て、パラ位 (4位) にニトロ基が結合しています。融点は213-216℃であり、黄色から黄褐色の結晶性粉末です。エタノールやアセトンには溶けますが、水には溶けにくい性質を示します。CAS登録番号は、104-04-1です。
光によって変質する可能性があるため、保管時には高温と直射日光を避ける必要があります。強酸化剤とも反応するため、混触を避けるべきとされます。
ニトロアセトアニリドの種類
図2. ニトロアセトアニリドの誘導体
ニトロアセトアニリドは、前述の通り3種類の位置異性体が存在しますが、どれも研究開発用試薬製品として市販されています。容量の種類は、25g、100gなどです。常温で取り扱い可能な試薬製品として販売されています。
関連してその他に販売されている誘導体には、2′-メチル-4′-ニトロアセトアニリド、4′-フルオロ-2′-ニトロアセトアニリド、4-アセトキシ-1-アセチルアミノ-2-ニトロベンゼンなどがあります。
ニトロアセトアニリドのその他情報
ニトロアセトアニリドの合成
図3. ニトロアセトアニリドの合成
2-ニトロアセトアニリドと4-ニトロアセトアニリドは下記の工程で得ることが可能です。
- アニリンからアセトアニリドを合成する (アニリンのアミノ基のアセチル化反応)
- アセトアニリドを混酸によってニトロ化する (芳香族求核置換反応)
- 生成した2-ニトロアセトアニリドと4-ニトロアセトアニリドの混合物を精製する
2の芳香族求核置換反応は、オルトパラ配向性の反応であり、特にパラ位が有利です。このため、この反応では、4-ニトロアセトアニリドが主生成物として生成し、副生成物として2-ニトロアセトアニリドが生成します。3-ニトロアセトアニリドを合成するためには、また別の合成経路からの合成となります。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0235-0357JGHEJP.pdf