除電ガン

除電ガンとは除電ガン

除電ガンとは、対象物の帯電を中和する機械のことです。

空気をイオン化させ、空気とともに対象物に向けて放出することで対象物の帯電を中和します。イオナイザのガンタイプと類似した役割で、静電気除去ガンとも呼ばれています。

高圧の空気を対象物に放出するため対象物に付着している塵も一緒に取り除くことが可能です。塗装や製造の現場では静電気によるほこりを除去するために利用されます。

除電ガンの使用用途

塗装対象物に向けて除電ガンを使用すると、静電気だけでなく塵やほこりを取り除くことができ、不良の軽減につながります。塗装対象は大変多く、自動車や家具、楽器、ガスコンロ、プラスチックなどがあり、除電ガンは塗装下地の前処理に利用されています。用途によっては空圧が高く特に除塵能力が高い除電ガンが好まれています。

また、電子部品や印刷フィルム、半導体や液晶、磁気ヘッドなどの製造や、各種計測器の組み立て、補修などの際にも静電気障害を防止するために使われています。

除電ガンの原理

除電ガンは、空気等をイオン化し対象の帯電を中和する機能と、同時に送風することで対象の表面に付着したほこりなどを除去する機能から構成されています。

1. 帯電を中和する機能

図1-除電ガンによる除電のイメージ

図1. 除電ガンによる除電のイメージ

物体の表面は、なんらかの原因で+もしくは-の電荷が過剰に増え帯電したり不均一になったりしています。そこで除電ガンを利用して、+と-のイオンを照射して中和します。

除電ガンにはコロナ放電型と呼ばれる方式が多く利用されています。コロナ放電とは、金属針の先に高電圧を加えたときに、針の先端で生じる弱い放電のことです。この放電により針の近くにある一部の空気がイオン化し、帯電した対象物に正負反対の電荷をもつイオンが接触することで帯電が中和されます。

図2-交流電源を用いる除電ガンの種類と特徴

図2. 交流電源を用いる除電ガンの種類と特徴

コロナ放電型の除電ガンは、加える電圧によって、イオンの発生量や周期が変化します。加える電圧の種類は、DC (直流) 、AC (交流) 、パルスDC、パルスAC、高周波AC、SSDCなどがあり、除電の範囲、速度、イオンバランスといった除電性能が異なるため、用途に合った電圧の種類を選択する必要があります。

除電ガンに一般に使われるACを用いる方式では、+と-のイオンが周期的に発生します。イオンバランスが良い代わりに、電圧が小さいと除電速度が遅くなります。また、同じ電極針から正負の両方のイオンが出るために、電極針から距離が離れるに電荷の再結合が起こり、除電能力が低下する傾向にあります。

電極針にはタングステンや、シリコン、SUSなどが利用されています。使用していると電極とその周辺が汚れるため定期的に清掃する必要があります。また、長い間使用すると放電電極先端部から金属原子が飛び出し、その部分が摩耗したように形状が変化すると言われているため、電極針は定期的 (1年から2年程度) に交換する必要があります。

この現象は、空気の汚染が問題になる半導体産業などでは避ける必要があります。石英の薄いカバーを付ける、シリコン製の電極針を使用するなどして対策することが必要です。

2. 表面のほこりを除去する機能

図3-除電ガンによる除塵のイメージ

図3. 除電ガンによる除塵のイメージ

物体の表面に付着したほこりは帯電している場合があります。そこでエアを使用して対象物の表面に付着した異物を取り除き、イオンを同時に照射することで除電も行い、異物の除去と再付着の防止を行います。

しかし、有風型の除電器は異物を吹きつけたりホコリを巻き上げたりして異物不良の原因になるため、近年では無風型の除電器が主流になりつつあります。

除電ガンの除電効果は、設置距離、角度、風量・エア圧力によって大きく変わります。

除電ガンのその他情報

1. ハイパワー化された除電ガン

帯電量の多い対象物の帯電除去には、高い除電能力だけでなく、高い衝突力を併せ持つ強力な除電ガンが必要です。

ハイパワー化された除電ガンは、圧力損失を最小限に抑えた大流量電磁弁を搭載し、内部構造も最適化することで高効率なエア排出を実現しています。また、微細なくびれを持つ収縮拡大形状が特徴のラバールノズルなど、ノズル形状にも工夫が見られます。ハイパワーな除電ガンの筐体は、ガン先端から発射される高圧エアに耐えられるように一般的な除電ガンよりも更に頑丈に設計されています。

ノズル先端でのエアーの初速は音速を超える数値を記録します。その威力は離れた距離においても有効で、実際の作業条件に近い約30cm先の対象物へ最大風速50 m/s (0.7 MPa時)もの圧縮エアを噴射可能です。

2. 確実な静電気除去に不可欠な除電ガンの除塵機能

対象物の静電気除去を効果的に実施するために欠かせない工程が、適切な除塵作業です。帯電を取り除いてもほこりが残留していては前処理として不完全になってしまいます。

除電ガンが持つ静電気除去能力を十全に引き出すための除塵機能は、パルスエア機能とダストチェックライトが代表的です。

パルスエア機能
電磁弁の動きを制御することで強力エアの間欠放出をすることが可能です。パルスエアの噴射によって、対象物の周囲には振動した空気がムラなく全方位的に注がれ、より確実な静電気除去および強力な除塵能力を発揮します。パルスエアの効率は連続噴射と比較して約2倍であり、半分の出力で同等の効果を得られる省力化のメリットがあります。

ダストチェックライト
除電ガンを使用する作業の前後で大切なのが、対象物に付着したチリ・ホコリ等の異物確認です。ノズル面に面発光LEDを搭載した除電ガンは、高輝度でムラのない作業照明として重宝します。ライトなしでは見逃してしまうような微細な異物も容易に視認できるので、不良率低減と作業効率改善に寄与します。

参考文献

https://www.keyence.co.jp/ss/products/static/static-electricity/lineup/gun.jsp
https://www.vessel.co.jp/product/staticelectric/gun/detail/623045
https://www.vessel.co.jp/product/staticelectric/gun

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