光学プリズムとは
光学プリズムとは、ガラス・石英などの透明な媒質でできた光学素子です。
光を分散や屈折させる目的で、入射面と出射面が角度をなすような構造をしている多面体の物質を指します。単純に「プリズム」と呼ぶ場合も多いです。光学分野のみならず、測量・医療・半導体・通信など多くの分野で用いられています。
光学プリズムの使用用途
光学プリズムは、媒質の屈折率を利用した光学素子です。光学機器をはじめ、画像・映像、測量などに関わる多くの機器に用いられています。
1. 光学機器・カメラ・半導体
分光機器・レーザー干渉計の他、画像・映像分野では以下の用途があります。
- フィルムカメラ
- デジタルカメラ
- VTRカメラ
- DVDカムコーダ
- LCD/LCOSタイプ液晶プロジェクター
- DLPプロジェクター
- 画像情報処理機 (カラーセンサー)
- 3CCDビデオカムコーダ
光学プリズムは、カメラ内部で光軸を曲げるのに汎用されている素子です。半導体や液晶分野では、照明系やステージ系の露光装置に使用されています。
また、顕微鏡、双眼鏡などの観察・観測機器にも使用されています。通信分野では、光ファイバーとともに用いられて大容量・高速通信に貢献している素子です。
2. 測定・測量
光学プリズムは、測定器、測量機 (測量船) 、光波測距儀など測量分野においても用いられ、航空機、船舶、ロケットにも応用されています。
3. 医療分野
医療分野では、内視鏡などの医療機器に光学プリズムが用いられています。マイクロプリズムと呼ばれる研磨面寸法 (有効径寸法) 5.0mm未満のプリズムが利用されます。マイクロプリズムは、高性能な小型医療機器の実現に大きな役割を果たしている光学素子です。
光学プリズムの原理
光学プリズムは、媒質によって屈折率が異なることを利用して、光の分散・偏角・全反射などを起こさせる光学素子です。材質には一般光学ガラスや低熱膨張ガラス、石英、Si、CaF₂などが用いられます。どの材質も透明な物質です。プリズムは、入射面と反射面が非平行な構造になっており、それによって目的とする屈折や反射を起こしています。
媒質における屈折率は、光の波長によって異なっているため、屈折角すなわちプリズムから出る光の方向は波長によって変わります。この現象を分散と呼び、プリズムを用いた光の分散によってスペクトルを得ることが可能です。
多くの光学機器において、光学プリズムは偏角すなわち屈折を利用して通過する光の進む方向を変えたり、分散を利用して波長の異なる光を分光 (進む方向を変える) したり、光の進む方向を合わせたり(合波) するために用いられています。
光学プリズムの種類
光学プリズムは、形状によって、直角プリズム、コーナーキューブプリズム、偏角プリズム、ダブプリズム、ペンタプリズム、ポロプリズム、ダハプリズム、菱形プリズム、ドーブプリズム、ビームスプリッター、などの様々な種類があります。中には、プリズム出射面にレンズが形成された複合素子もあります。
また、同じ形状でも材質やコーティングなどによっても機能が異なるため注意が必要です。用途に合わせて適切に適切な種類を選択します。
1. 直角プリズム
光学プリズムの代表的な種類の1つが三角柱型の直角プリズムです。直角二等辺三角形や、30°と60°の角を持つ直角三角形などの形状があります。ビーム偏向と再帰反射に適しており、光の方向を90°や180°変えて出射させることが可能です。入射角度を適切に調整することで光を分散することもできます。
2. ダブプリズム
ダブプリズムとは、直角プリズムの一部を切り取った形状のプリズムです。全反射を使用して、偏向せずに反転画像を生成することができます。様々な光学機械システムにおいてイメージローテータとして使用されているプリズムです。
3. ペンタプリズム
ペンタプリズムは、光線を90°偏向させるプリズムです。光軸に対する角度とは無関係に、透過される全ての光線に適用されます。プリズムの向きを正確に制御できない用途に対して有効です。
4. ポロプリズム
ポロプリズムは、正立プリズムの一種で全ての反射面が全反射するプリズムです。特徴として、光の損失がなく加工も容易な点が挙げられます。
5. コーナーキューブプリズム
コーナーキューブプリズムは、再帰反射により光路を入射方向に戻すプリズムです。3回の内部全反射を利用する仕組みです。
反射面にアルミコートや銀コートをする場合もあります。測量機において、コーナーキューブプリズムは、レーザーを反射させ、光が進むのに要した時間から距離を計算する場合に利用されています。