3Dレーザースキャナ

監修:クモノスコーポレーション株式会社

3Dレーザースキャナとは

3Dレーザースキャナ (英: 3D Laser Scanner) とは、物体や環境の形状や位置を高精度で3次元的に計測するためのデバイスです。

レーザー光を対象物に向けて発射すると、レーザー光は対象物に到達して反射して戻ってきます。この戻ってくるまでの時間や角度を計測すると、距離や位置が求められます。3D レーザースキャナは、このレーザー光による計測により、非常に高速かつ大量の距離・位置データを取得し、このデータを組み合わせることで三次元の形状を再現したデジタルデータ (点群データ) を生成します。

非常に高い精度で距離 ・位置のデータを計測できるため、正確な三次元モデルや測定結果をデジタルデータとして生成できます。したがって、高い精度が求められる用途において有利です。

また、高速かつ非接触で作業することができ、被測定物の表面を傷つけずに大量のデータを取得することが可能なため、建築 ・土木や地形調査をはじめ都市空間の調査など様々な用途で使用される高性能デバイスの1つです。

3Dレーザースキャナの使用用途

3Dレーザースキャナは様々な産業で使用されます。主な使用用途は下記の通りです。

1. 建築

3Dレーザースキャナは、高速かつ非接触で複雑な形状や細部を正確に捉えることができるため、既存の建物や構造物の現況調査や、図面のない建築物のリノベーションや増改築の計画をする際に使用されます。高速かつ非接触で計測し、点群データや3Dモデルとしてデジタル上で可視化して取り扱うことができるため、建築設計の正確性が向上し、かつ作業時間や人件費などコスト削減が実現します。

2. 土木

3Dレーザースキャナは、道路 ・橋梁 ・トンネル ・ダムなど土木インフラの維持管理、設計、工事に利用されます。道路面の段差やひび割れの検出、橋梁やトンネルの変形やずれなど安全性の評価など維持管理業務に用いられるほか、災害時の変状調査にも使われます。

また、工事現場においても、工事の進捗 ・品質のリアルタイムでの把握、設計図と工事現場の差異の検出に利用されます。土木分野において、インフラの品質や長寿命化、また、工事現場の管理や品質を向上させる有効なツールです。

3. 工場・施設・設備管理

3Dレーザースキャナは、複雑な現況を正確に把握できるため、工場 ・施設・設備の管理に使用されます。工場や施設は、設備の入替・拡張が頻繁に行われることも多く、図面での把握が困難です。3Dレーザースキャナにより現況をデジタル化し、レイアウトや機器配置の最適化、設備の改修計画や定期的な機器交換管理など、工場・施設・設備の効率的な管理に活用されます。

4. 文化財

3Dレーザースキャナは、文化財の研究・保存・活用に使用されます。発掘現場などでの遺跡や出土品の記録に用いられるほか、歴史的建造物や彫刻など大小幅広い文化財を3Dレーザースキャナにより詳細にデジタル化し、修復やレプリカ作成、損傷の進行監視、さらには遠隔地や非公開の文化財のバーチャル公開や教育利用など、文化財の利活用にも重要な役割を果たします。

5. デジタルコンテンツ

3Dレーザースキャナは、現実の場所や物体を高精度のデジタルデータとして再現するため、これをそのまま使用することで、現実と瓜二つのデジタルツイン空間の生成に利用されます。また、3Dレーザースキャナのデータを元に編集・加工することにより、ゼロから制作するよりも効率的にリアリティある新たなデジタルコンテンツを制作することができます。

このように、3D レーザースキャナは、3DCG、ゲームのキャラクターや背景デザイン、映像制作、観光コンテンツ、メタバースなど幅広いデジタルコンテンツの制作に利用されています。

3Dレーザースキャナの原理

3Dレーザースキャナは非常に細かいレーザービームを対象物の表面に向けて照射します。このレーザービームは直線的である点が特徴で、物体の表面に当たると一部が反射され、3Dレーザースキャナが反射光を検出します。

距離を計測する原理には複数の方式があり、主に採用されているのは 「タイム・オブ・フライト (TOF) 方式」「フェーズシフト方式」の2種類です。

タイム・オブ・フライト (TOF) 方式は、レーザービームが発射されてから反射して戻ってくるまでの時間を計測することで距離を計算する仕組みです。フェーズシフト方式は、レーザー光の位相を変調させながら照射し、反射光の位相差を検出することで物体との距離を算出する仕組みです。

タイム・オブ・フライト(TOF)方式は比較的シンプルで低コスト化が期待される方式ですが、一方、フェーズシフト方式は反射光識別により干渉に強いという特徴があり、メーカーや用途によって採用方式は様々です。

レーザー光源を回転させてスキャン領域全体をカバーするように計測することにより、多くの距離データポイントを一度に取得することが可能になります。収集された距離データは、照射した角度情報と統合され、XYZ の空間位置座標が算出されます。これが3次元点群データであり、対象物の位置や形状をデータ上で再現した集合データとして生成されます。

3Dレーザースキャナの選び方

3D レーザースキャナを選定する際に考慮すべき要素が存在します。3D レーザースキャナの用途は多岐にわたるため、用途に応じた選定が必要ですが、以下は、一般的に屋内外で使用される3Dレーザースキャナの選定要素一例です。

1. 測定精度

測定精度は 3D レーザースキャナが物体の実際の形状をどれだけ正確に再現できるかを示す指標です。通常はmm単位で表されます。求められる精度に応じて3Dスキャナを選ぶ必要があります。

2. 最大測定距離

最大測定距離は 3D レーザースキャナが物体との距離をどの程度まで測定できるかを示す指標です。特に屋外環境や広範囲な場所で使用する場合には、長い最大測定距離の製品が必要です。

3. 解像度

解像度は、3Dスキャナが生成する3Dデータの精細さを示す指標です。高い解像度の場合、対象物の細部や小さな特徴を詳細に捉えることができます。

4. 防水・防塵性能

使用環境に応じて、防水性能と防塵性能が重要となることも多いです。一般的にはIP規格で表示されることが多く、2桁の数字で性能が表されます。防水性のが高いほど1桁目の数字が大きくなり、防塵性能が高いほど2桁目の数字が大きくなります。

本記事は3Dレーザースキャナを製造・販売するクモノスコーポレーション株式会社様に監修を頂きました。

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