アレン

アレンとは

アレンの基本情報

図1. アレンの基本情報

アレンとは、二重結合2つにより炭素原子3つが直鎖上に結合した構造を持つ有機化合物です。

これらの化合物を総称してアレンと呼びます。アレンの中で、最も基本的な構造を持つ化合物はプロパジエンです。プロパジエンのことをアレンと呼ぶ場合もあります。

2,3‐ジブロモプロペンや2,3‐ジクロロプロペンのエタノール溶液に、亜鉛末を作用させると、プロパジエンを合成可能です。その一方で、プロパジエンに硫酸を吸収させて、水を加えて蒸留するとアセトンになります。

アレンの使用用途

狭義の「アレン」であるプロパジエンは、MAPPガスの成分として利用されています。MAPPガスとは、プロパジエンとメチルアセチレンの混合物のことです。MAPPガスははんだ付けや溶接などに用いられています。安全性が高く輸送しやすいですが、コストパフォーマンスが悪いです。

広義の「アレン」に分類される化合物は、あまり工業的に利用されていません。しかし、アレンは反応性に富みさまざまな付加反応を起こすため、有用な化学反応への応用が期待されています。アレンの特徴として、軸方向にキラリティーを持つことなどが挙げられます。

アレンの性質

アレンの化学的性質は、一般的なアルケンとは大きく異なります。共役ジエンや孤立ジエンなどと比較すると、アレンはとても不安定です。アレンのC–H結合は、ビニル基のC-H結合よりも弱く、酸性が強いです。

アレンは[2+2]環化付加反応や[4+2]環化付加反応を起こします。遷移金属触媒を用いると、形式的環化付加反応が進行します。

アレンのうち最も基本的な構造を有するプロパジエンは、甘い臭気を持つ無色の気体です。融点は-136.3°C、沸点は-34.4°Cです。水にはほとんど溶解しません。分解しやすいですが、安定性は高く、メチルアセチレンとともに溶接燃料に使用されます。

アレンの構造

アレンの合成

図2. アレンの合成

アレンのように、二重結合が2つ以上連続した構造を集積二重結合と呼びます。化学式はR2C=C=CR2と表わされます。二重結合が3個以上連続した構造を持つ化合物の呼称は、クムレン (英: Cumulene) です。アレンのRをアルキル基としたR2C=C=CR–のような置換基は、アレニル基 (英: allenyl group) と呼ばれます。

最も基本的な構造を有するアレンである、プロパジエンの化学式はH2C=C=CH2です。プロパジエンは、化学式がH3C-C3≡CHのメチルアセチレンとの平衡状態として存在しています。アレンの合成には特殊な合成法が、必要な場合も多いです。ただし工業的にプロパジエンは、メチルアセチレンとの混合物から合成されています。

アレンのその他情報

1. アレンの幾何構造

アレンの中心炭素原子は、σ結合とπ結合を2個ずつ持っています。末端にある炭素原子2個は、sp2混成軌道を有します。炭素原子3個は直線構造を形成しており、結合角は180°です。末端炭素原子2個は平面構造を形成し、各平面は配置が90°ねじれています。

2. アレンの分子対称性

アレン分子は、2枚羽のプロペラに例えられることが多いです。すなわちアレンは4個の置換基を有し、中心炭素原子を通って2種類の末端CH2平面から、45°傾いた2本の2回回転対称軸C2が存在します。

C=C=C結合軸に沿って3個目の2回回転対称軸を有し、2個のCH2平面はいずれも鏡映対称面になっています。以上のことから、アレン分子の対称性は点群D2dに属し、置換基を持たないアレンは総双極子モーメントがない非極性分子です。

3. アレンの異性体

アレンの異性体

図3. アレンの異性体

アレン分子の持つ炭素原子2個が、異なる置換基2種類と結合した誘導体は、鏡像異性体を有します。アレン分子を軸に沿って見た際の置換基の優先順位によって、R配置とS配置を決定可能です。奥側より手前側が優先され、手前と奥の相対配置によって決まっています。

このように、アレンは珍しい光学特性を有するため、有機材料の合成でビルディングブロックに利用されます。

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