アニリン塩酸塩

アニリン塩酸塩とは

アニリン塩酸塩 (英: Anilinium chloride) とは、芳香族アンモニウム塩に分類され化学式C6H8ClNで表される有機化合物で、アニリニウムイオンと塩化物イオンの塩です。

CAS登録番号は、 142-04-1です。別名には、塩酸アニリン、塩酸ベンゼンアミン、塩酸フェニルアミン、塩化アニリン、アニリン塩、塩化フェニルアンモニウムアニリン塩酸塩などの名称があります。

IUPAC命名法による名称は塩化アニリニウムです。アニリン塩酸塩は、毒物及び劇物取締法において劇物に指定されています。

アニリン塩酸塩の使用用途

アニリン塩酸塩の主な使用用途は、染料原料及び有機合成原料です。アニリン塩酸塩を酸化するとアニリンブラックという不溶性の黒色染料となることが知られており、繊維質上でこの反応を行うことによる染色方法があります。

また、5度以下でアニリン塩酸塩と亜硝酸を反応させると、塩化ベンゼンジアゾニウムが生成します。この塩化ベンゼンジアゾニウムはフェノール塩と混合するとジアゾカップリングを起こす物質です。

ジアゾカップリングの生成物は、赤から黄色の色素であるため、染色に用いられます。また、アニリン塩酸塩は、アニリン合成における中間体としても用いられる物質です。

アニリン塩酸塩の性質

アニリン塩酸塩の基本情報 (1)

図1. アニリン塩酸塩の基本情報

アニリン塩酸塩は、分子量129.59、融点198℃、沸点245℃ (分解) であり、常温常圧では白色の板状結晶です。

空気および光に曝露すると暗色になります。密度は1.22g/mL、水への溶解度は107g/100mL (20℃) です。水の他にエーテルやエタノールにも溶解します。ベンゼンには溶けません。

アニリン塩酸塩の種類

アニリン塩酸塩は、主に研究開発用試薬製品や、産業用化学薬品として販売されています。産業用化学薬品の用途としては、医薬原料・フラックス・有機合成原料などが想定されています。

研究開発用試薬製品には、25g、100g、500gなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。冷蔵もしくは室温にて保管されます。

アニリン塩酸塩のその他情報

1. アニリン塩酸塩の合成

アニリン塩酸塩の合成

図2. アニリン塩酸塩の合成

アニリン塩酸塩は、アニリンに濃塩酸を加えることで得られます。また、ニトロベンゼンをスズと塩酸を用いて還元するアニリンの合成方法では、生じたアニリンと過剰の塩酸とが反応して塩酸塩を与えることがあります。

2. アニリン塩酸塩の化学反応

アニリン塩酸塩の化学反応

図3. アニリン塩酸塩の化学反応

アニリン塩酸塩は弱塩基であるため、水酸化ナトリウムなどの強塩基を加えることにより、アニリンが遊離します。また、アニリンの重要な化学反応の1つは、塩化ベンゼンジアゾニウムの合成反応です。

アニリン塩酸塩と亜硝酸を5度以下で反応させると、塩化ベンゼンジアゾニウムを生じます。塩化ベンゼンジアゾニウムは、フェノール塩とのジアゾカップリング反応によって種々のジアゾ化合物を与えます。一般的にジアゾ化合物は、色素・染料として有用な化合物です。

3. アニリン塩酸塩の反応性

アニリン塩酸塩は通常の取扱い条件下では安定ですが、可燃性であり、加熱や酸との接触により分解する物質です。特に酸化剤と激しく反応し、アニリン、窒素酸化物および塩化水素を含む、有毒で腐食性のフュームを生じます。

4. アニリン塩酸塩の危険性と法規制情報

アニリン塩酸塩は、GHS分類にて下記の危険性が指摘されています。

  • 急性毒性 (経口) : 区分4
  • 生殖細胞変異原性: 区分2
  • 発がん性: 区分1B
  • 生殖毒性: 区分2
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露): 区分1 (血液系、神経系)
  • 特定標的臓器毒性 (反復ばく露): 区分1 (血液系、神経系)

これらの危険性により、アニリン塩酸塩は毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが重要です。

参考文献
https://stableisotope.tn-sanso.co.jp/msds/img/TNI00025.pdf

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