水素化リチウム

水素化リチウムとは

水素化リチウムとは、リチウムと水素の化合物です。

リチウムヒドリド (英: lithium hydride) とも呼ばれます。純粋な水素化リチウムは白色です。光に当たると黒色化するため、市販品は灰色の固体です。

水と激しく反応して水素を発生するため、水素の輸送や貯蔵に利用されます。水素化リチウムの粉塵は湿気のある空気中や静電気により爆発する可能性があり、取り扱いには非常に注意が必要です。腐食性もあり、皮膚に付着した際には流水により洗い流す必要があります。

水素化リチウムの使用用途

水素化物の中でも水素含有量が非常に高く、水素化リチウムは注目されています。水素化リチウムを使用すると、効率的に水素の貯蔵や輸送が容易になると期待されています。現在、水素の需要が高まっていますが、水素は低密度かつ極低温沸点であり、輸送に課題があるためです。

また水素化リチウムは、放射線の放射線遮蔽材として使用可能です。一般的な放射線遮蔽材には、コンクリート、水、ホウ素、鉛、鉄、グラファイト (黒鉛) 、ポリエチレン、水素化チタンなどがあります。その中でも水素化リチウムはメリットのある素材です。小型原子炉などの開発では、危険な放射線を遮蔽する素材の一つとして検討されています。

水素化リチウムの性質

水素化リチウムの融点は680°Cとなり、720°Cで分解します。水素化リチウムの特性としてジエチルエーテルにはわずかに溶けます。

アルカリ金属の水素化物中で、最も安定です。常温の乾燥空気中では分解しませんが、光に当たると分解して黒くなります。水素化リチウムはアルコール類とも反応します。

水素化リチウムの構造

水素化リチウムの化学式はLiHで表記されます。式量は7.95であり、密度は0.82g/cm3です。

水素雰囲気下で金属リチウムを赤熱すると、無色の立方晶系のイオン結晶が得られます。HとLi+から構成される塩化ナトリウム型構造を取っており、Li−H間の距離は2.04Åです。

水素化リチウムのその他情報

1. 水素化リチウムの合成法

水素化リチウムは溶融状態のリチウムに水素ガスを反応させて製造されます。600°C以上で急速に反応が進みます。0.001~0.003%の炭素の添加や圧力の上昇によって、2時間で収率を最大98%まで増加可能です。ただし収率は水素化リチウムの表面状態に大きく依存します。

水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム、n-ブチルリチウム、エチルリチウムなどの熱分解によっても、水素化リチウムは生じます。

2. 水素化リチウムの反応

水素化リチウムは水分と激しく反応し、水素と水酸化リチウムが生成します。水やプロトン性試薬に対して、非常に反応性が高いです。水素化リチウムの粉末は低湿度の空気と急速に反応すると、LiOH、Li2O、Li2CO3を形成します。湿った空気中で粉末は自然発火して、窒素化合物を含む生成物の混合物を生じます。

水素化リチウムと二酸化硫黄が反応すると、亜ジチオン酸リチウムを生成可能です。アセチレンとの反応では、炭化リチウムと水素になります。無水有機酸、フェノール、酸無水物ともゆっくり反応し、水素ガスと酸のリチウム塩を生成します。塩化アルミニウムとの反応によって、水素化アルミニウムリチウム (LiAlH4) を合成可能です。

3. 水素化リチウムの危険性

水素化リチウムは湿気の多い空気中で爆発しやすいです。乾燥した空気中でも、静電気によって爆発する可能性があります。空気中の濃度が5~55mg/m3の水素化リチウムの粉塵は、粘膜や皮膚を刺激し、アレルギー反応を引き起こす場合があります。

水素化リチウムが反応して生じる一部のリチウム塩は有毒です。通常、特定のプラスチック、セラミック、鋼で作られた容器を使用して油中で輸送され、乾燥したアルゴンやヘリウムの雰囲気で処理されます。

参考文献
http://www.ekouhou.net/
https://ja.warbletoncouncil.org/hidruro-de-litio-11766#menu-6
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21246113/

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