産業用音響カメラ

産業用音響カメラとは

産業用音響カメラとは、カメラの周囲に複数個のマイクを配置し、視覚では捉えにくい配管からの空気漏れなどを音で捉えて見える化する観察機器です。

工場のパイプラインからの気体の漏れや稼働設備からの異音の発生などは、問題個所を視覚的に探すよりも、音を頼りに探した方が発見しやすい場合が多くあります。産業用音響カメラはカメラとマイクを組み合わせて問題個所を探す機器です。

カメラのレンズの周囲に配置された複数のマイクが、音の発生源を探し出し、その場所をカメラのモニター画面上に色や形で表現します。

産業用音響カメラの使用用途

工場や社会インフラの設備は、何か不具合が発生した際に異音を発生することがよくあります。産業用音響カメラは、設備の不具合場所の探索や、日常の保守点検で使用されています。

例えば多くの工場では、圧縮空気を機械を駆動するために使用しています。しかし、圧縮空気の配管からは空気漏れが頻繁に起こります。空気漏れを、漏れ量が大きくならない早期に発見できれば、設備の停止を防ぎ、エネルギーコストを抑えることが可能です。

しかし、稼働中の工場内では様々な音に包まれています。音のフィルタリング機能を持った産業用音響カメラは、騒音の中でも空気漏れの音を捉えることができます。同じように、工場では真空漏れや各種ガスの配管系統からのガス漏れなどを検出することにも使用されます。

電気関係では、高電圧の電気を送る鉄塔の上部についているがいしから発生する音や、高電圧設備の発生する部分放電音を産業用音響カメラで捉えて解析することで、設備の劣化状態を知ることができ、そのデータは予防保全に活用されています。

また、産業用音響カメラは自動車、電車、飛行機や、風力タービンなどの開発過程で、これらのものが発生する騒音を低減する目的で、開発用機器としても使用されています。

産業用音響カメラの原理

産業用音響カメラは光学カメラがとらえた画像に、マイクが探索した音の発生源の情報を重ね合わせることで、音源を見える化します。

1. 産業用音響カメラの形

産業用音響カメラは、スマートフォンに使われているのと同様の小型のカメラのレンズが平板の上についています。レンズの周囲を数十個から百数十個程度の小型のマイクが囲んでいます。カメラ全体の形状は、ハンディカムのようなレコーダー一体型ビデオカメラに似たものもあれば、タブレットPCに持ち手が付いたような物もあります。レンズの反対側には、モニター画面があり、タッチパネルや周辺のスイッチでカメラを操作します。

2. 産業用音響カメラによる音源の特定

カメラを観察したい方向に向けると、その方向の映像が映し出されます。カメラの周囲に配置された複数のマイクが音を捉えて、それぞれのマイクに入って来る音の時間的な僅かなずれ、即ち音の位相のずれから音の伝わって来る方向を算出します。

カメラの映像に、音源の方向をグラフィック化して重ね合わせることで、そこにある対象物から音の発生個所が特定可能です。

産業用音響カメラが使用される現場の多くは、様々な騒音に包まれています。産業用音響カメラは検出対象とする事象と発生する音の周波数の関係に着目して、検出する音の周波数帯を限定したものや、フィルタリング機能を備えたものがあります。

例えば、工場内でコンプレッサーから送られてくる圧縮空気が途中の配管のつなぎ目などでエアー漏れを起こした場合、その音は30kHz~50kHzの超音波を発生することが知られています。その付近の周波数帯に絞って音の発生の有無を調べることで、配管からのエアー漏れを検査することが可能です。

産業用音響カメラの選び方

産業用音響カメラは、視覚よりも音で捉えやすい設備・機械の異常を早期に発見するのに有効なツールです。しかし、測定環境や、測定対象の音源は様々で、観察方法も異なります。

例えば配管のエアー漏れ箇所を探す場合や、電源設備の異音を探す場合等の音源の違いがあります。また、高い鉄塔の上にある高電圧のがいしの発生する音を地上から観測したい場合もあります。さらに、産業用音響カメラを一か所に据え付けて、定点観測を行う場合もあります。

これに対して、産業用音響カメラは特定の使い方に最適化したカメラが販売されており、ある程度の汎用性を持たせたカメラもあります。産業用音響カメラの選択の際には、具体的な使用目的と使用環境を考慮して、それに合致した特徴を有した産業用音響カメラを探し出すことが大切です。

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