発泡プラスチック

発泡プラスチックとは

発泡プラスチック

発泡プラスチックとは、合成樹脂に気泡を含ませて成形したもので、炭や軽石の構造に見られるような、独立気孔や連続気孔を無数に有した多孔質体です。

主な合成樹脂原料として、ポリウレタンポリスチレンポリオレフィンなどがあり、これらの発泡体は「三大発泡プラスチック」といわれています。また、ポリスチレンを原料とした発泡プラスチックは、一般的に発泡スチロールと呼ばれています。

工業的に、気泡を形成する方法は数種類あります。例えば、合成樹脂材に直接ガスを混入させる気体混入法や、あらかじめ炭酸水素ナトリウムなどの発泡剤を合成樹脂材に混ぜた後、加熱して発泡を促し、気泡を形成させる方法などです。

発泡プラスチックの使用用途

発泡プラスチックは、緩衝性や断熱性、浮揚性に優れるため、断熱材、浮力の求められる製品・部材に適しています。また、連続気泡構造を有する発泡プラスチックは、柔軟性が高く、吸水性や吸音性に優れており、吸音材、吸水性の求められる製品・部材に適しています。したがって、発泡プラスチックは、あらゆる分野で利用されている素材です。

1. 農水産物の輸送梱包資材

発泡プラスチックは緩衝性や断熱性に優れており軽量であるため、農水産物の輸送用資材や梱包用資材として利用されています。例えば、ポリスチレン発泡シート (PSP) は、生鮮食品を販売する梱包容器として頻繁に利用されています。また、断熱性が高いため、コンビニエンスストアなどで汁物惣菜の容器としても有用です。

ポリスチレンビーズ発泡体 (EPS) は断熱性が高いため、保冷状態を保った輸送が可能です。したがって、魚介類や農産物の輸送容器として利用されています。

2. 自動車部材

発泡プラスチックは衝撃をやわらげる緩衝性があるため、自動車の安全性を向上させる目的に使用されます。また、自動車の軽量化に効果的です。

自動車部材で多く利用されている発泡プラスチックはウレタンフォームです。軟質ウレタンフォームは柔らかく復元性があるため、自動車の座席クッションやマットレスに利用されています。

ポリプロピレン樹脂 (PP) も自動車部材に求められる耐衝撃性と耐熱性、耐薬品性を兼ね備えており、また安価な樹脂であることから自動車部材として適した素材です。発泡ポリプロピレン (EPP) は バンパー内の緩衝材などに採用されています。

3. 建築資材用断熱材

 発泡プラスチックは断熱効果が高いことから、建築資材として利用されています。発泡プラスチックの断熱効果は、気泡内に空気を閉じ込めることで発揮されます。

建築資材として利用される発泡プラスチックの主な種類は次の通りです。

  • ビーズ法ポリスチレンフォーム
  • 押出法ポリスチレンフォーム
  • 硬質ウレタンフォーム
  • フェノールフォーム

ビーズ法ポリスチレンフォームは、金型によってさまざまな形状に成形することが可能です。また、硬質ウレタンフォームやフェノールフォームは難燃性に優れているという特徴があります。

発泡プラスチックの特徴

長所

発泡プラスチックは、合成樹脂の種類や気泡構造を変えることによって、非発泡樹脂成形品 (ソリッド) にさまざまな機能性を付加もしくは向上させることができます。

  • 発泡プラスチックはソリッドに比べて同体積だと軽量
  • 個々の気泡が独立した状態 (独立気孔) で成形されている発泡プラスチックは、剛性・反発性が高く、緩衝性や断熱性、浮揚性に優れ緩衝性に優れる
  • 気泡同士がつながっている状態 (連続気孔) で成形されている発泡プラスチックは、柔軟性が高く、吸水性や吸音性に優れる

短所

発泡プラスチックの短所は次の通りです。

  • 樹脂部分が同体積のソリッドと比較して少ないため、強度や耐熱性はソリッドに比べて劣る
  • 体積が大きいため一度に大量に輸送できない
  • 発泡プラスチックの原料であるプラスチックは自然に分解されないため、漂流ごみとして海洋汚染の原因の1つとなっている

発泡プラスチックの選び方

発泡プラスチックの特性は、使用される合成樹脂の種類によってそれぞれ異なります。特に、耐熱性は使用される合成樹脂の性質で決まります。100℃以下の条件で使用する場合は、ポリオレフィンなどの汎用樹脂の発泡体でも使用可能です。

高温条件下で使用する場合は、PETやナイロンなど高耐熱のエンジニアリングプラスチックの発泡体を選ぶ必要があります。また、気泡構造の違いも、発泡プラスチックの性質に大きく影響をあたえます。

強度や断熱性は独立気泡の発泡体が優れています。一方、吸音性や吸水性などは連続気泡の発泡体が優れているため、使用用途によって選択が必要です。

発泡プラスチックの使い方

発泡スチロールなど、使用用途の形状にすでに成形されている発泡プラスチックはそのまま使用することが可能です。また、シート状の発泡シートは成形機でトレー状などに成形して使用することもできます。

近年では、発泡プラスチックの強度を上げるためにCFRP (炭素繊維強化プラスチック) など他の素材と複合化する研究開発も進んでいます。

発泡プラスチックのその他情報

発泡プラスチックの発泡成形法

1. 溶融発泡成形法
溶融状態の樹脂に発泡剤を混合し、樹脂を発泡させる手法です。具体的な方法としては、押出機で樹脂を溶融しながら、発泡ガスを注入します。

高圧の押出機内から樹脂が射出し、低圧になる際に気泡が生成し、発泡体が得られます。樹脂を溶融する必要があるため、原料樹脂は主に熱可塑性樹脂です。

溶融発泡成形法ではシート状やボード状の成形品を得ることができます。発泡ポリスチレンシート (PSP) やポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンの発泡シート、PET発泡シートなどが流通しています。また、溶融した発泡性樹脂を金型内に射出する射出発泡という手法もあります。

2. 固相発泡成形法
固相発泡成形法は、固体の樹脂から発泡体を得る方法です。樹脂粒子に発泡ガスを含浸し、蒸気などで熱を与えることで予備発泡粒子を製造します。次に製造した予備発泡粒子を金型に充填し、もう一度熱を与え、さらに発泡させることで成形体を得ることができます。

このような製造法はビーズ法と呼ばれ、金型の形状により任意の形状の発泡成形体が得られることが特徴です。ビーズ法による発泡成形体は、ポリスチレンを原料としたEPSやポリプロピレンを原料としたEPPなどが魚函や自動車部材などで利用されています。

3. 注型発泡成形法
注型発泡成形法は液状の原料を金型に注入し、硬化させながら発泡させる方法です。ポリイソシアネートとポリオールを、触媒、発泡剤、気泡調整剤などと混合して得られるポリウレタンフォームや、フェノール樹脂とホルムアルデヒドを原料としたフェノールフォームなどがあります。

注型発泡成形法は型に液体を流し込んで成形するため、非常に寸法精度の高い発泡成形体を得ることが可能です。また、ポリウレタンフォームの1種である硬質ウレタンフォームは現場施工が可能であるため、吹き付けタイプなどが建設現場などで重宝されています。

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