チオグリコール酸アンモニウム

チオグリコール酸アンモニウムとは

チオグリコール酸アンモニウム

図1. チオグリコール酸アンモニウムの基本情報

チオグリコール酸アンモニウム (Ammonium thioglycolate) とは、チオグリコール酸の塩類の一つである有機化合物です。

化学式C2H7NO2Sで表されます。分子内にメルカプト基とカルボキシル基を1つずつ持つ、チオグリコール酸のアンモニウム塩です。他の慣用名には、メルカプト酢酸アンモニウム、チオグリコール酸アンモニウム、アンモニウム=メルカプトアセタート、ATGなどがあります。CAS登録番号は5421-46-5です。

分子量は109.15ですが、水溶液で販売されています。常温では無色透明の液体であり、硫黄臭やアンモニア臭に類似の独特な臭いがあります。密度は1.190g/cm3です。

保管の際は、直射日光や高温を避けて保管する必要があります。強酸化剤との混触は厳禁です。金属腐食のおそれがあるため、金属容器は避けなければなりません。これらを遵守した通常の保管方法においては安定です。消防法やPRTR法では特に規制の対象とはなっていません。

ただし、飲み込むと有毒であり、皮膚付着によってアレルギー性反応を起こすおそれがあります。取り扱いの際は皮膚や眼への接触を避けることが必要です。

チオグリコール酸アンモニウムの使用用途

チオグリコール酸アンモニウムは、タンパク質を分解する目的や還元剤としてで広く使用されています。具体的には、パーマネントウェーブ用剤、羊毛染色整理剤、塩ビ安定剤、防錆剤、金属表面処理剤などです。

チオグリコール酸アンモニウムは中性 (pH 6.8 – 7.4) で、他の有機溶剤と違って安全に使用できます。また、一般的なサビ取り剤の主成分である塩酸硫酸などと違い毒劇物には該当しません。

ホームセンターなどで購入することができます。赤錆と反応すると紫色に変色するため洗浄の目安となることも、錆取り剤として使いやすい理由の一つです。

チオグリコール酸アンモニウムの原理

パーマ剤におけるチオグリコール酸アンモニウムの作用原理

図2. パーマ剤におけるチオグリコール酸アンモニウムの作用原理

チオグリコール酸アンモニウムは還元剤として働く化合物です。チオグリコール酸そのものと比べると危険性は低いため、汎用的に用いられます。

パーマ剤として使用される際には、ケラチン蛋白質に含まれるシスチンのジスルフィド結合をメルカプト基に還元することで切断し、タンパク質を分解しています。これはすなわち、パーマネントウェーブにおいては、曲げた毛髪が元に戻ろうとするのを防ぐ働きです。

除錆剤におけるチオグリコール酸アンモニウムの原理

図3. 除錆剤におけるチオグリコール酸アンモニウムの原理

錆取り剤として作用する際は、鉄錆を還元しています。還元された鉄錆はチオグリコール酸鉄としてキレート化し、水溶性になります。この水溶化作用により、落としやすくなり、錆を除去することができる仕組みです。

このように、チオグリコール酸アンモニウムが作用する原理は、還元作用に由来しています。

合成化学においては、チオグリコール酸アンモニウム溶液は以下の合成にも使用可能です。

  • 水からCr (VI) 、Hg (II) 、Cu (II) 、Pb (II) 、Cd (II) およびAg (I) を除去するための吸着剤として利用できるチオール官能化卵殻膜
  • セルロース-ローダミンBメタクリルアミド (セルロース-RhBMA)

チオグリコール酸アンモニウムの種類

チオグリコール酸アンモニウムは、それ自体は一般の化学薬品/化学試薬として販売されています。通常、水溶液として販売されており、濃度は45.0~55.0%、50%、60%などの種類があります。容量規格には500mL , 1L , 25g , 500gなどがあり、ガラス瓶容器で販売されます。室温保存可能な薬品です。

また、産業用途では除錆剤原料として販売されており、24kg入りや250kg入りなどのポリドラム包装の製品があります。その他のチオグリコール酸アンモニウム製品は、中性のサビ取り用洗剤やパーマ液などです。どちらも主成分として使用されており、様々なメーカーから多くの製品が発売されています。

参考文献
http://www.pacificpartnersyc.com/product/pdf/chio_1.pdf
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/A2217#docomentsSectionPDP

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