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過塩素酸

過塩素酸とは

過塩素酸とは、化学式HClO4で表されるハロゲン酸の1種です。

CAS登録番号は7601-90-3、分子量は100.46です。融点は-17℃の無色の発煙性液体で、強い酸化力を持ちます。常温では液体ですが、高濃度では危険性が高いので、一般的には60~70 %水溶液が市販されています。

消防法では、危険物第六類に分類されますが、毒劇物取締法には非該当です。

過塩素酸の使用用途

過塩素酸の主な用途は、分析化学用試薬 (イオン交換クロマトグラフィーの溶離液など) 、金属・合金・鉱石などの溶解、有機合成用触媒、過塩素酸塩  (過塩素酸アンモニウムなど) またはその誘導体の製造原料です。

そのほか、ロケットやミサイルの推進剤、エアバック、火薬、花火、マッチ、信号炎管、金属の電解研磨やエッチングなど工業的な用途もあります。

1. 分析化学

過塩素酸は、金属分析での前処理で使われています。酸化力が高いので、有機物を多く含む検体の分解に対して有効です。過塩素酸を有機物に直接加えると、爆発する恐れがあるので、必ず硝酸などの存在下で添加します。

また、イオン交換クロマトグラフィーの溶離液に添加されることがあります。有機酸など比較的酸性度の低い物質は、溶離液のpHによって保持時間が変わってくるため、解離パターンの調整に使用されます。

2. 過塩素酸塩の製造原料

過塩素酸は、過塩素酸塩の製造に使用されます。過塩素酸塩は過塩素酸イオン (HClO4) を含む結晶で酸化力が高く、火薬や爆薬などに使用されています。危険物第1類 (酸化性固体) に該当する物質です。

過塩素酸塩の1つである過塩素酸アンモニウムは、ロケットやミサイルの推進剤として利用されています。過塩素酸アンモニウムは、過塩素酸とアンモニアを反応して得られます。

  HClO4 + NH3 → NH4ClO4

過塩素酸の性質

過塩素酸は、強酸性で使用条件によっては爆発するおそれがあるため、使用の際には注意が必要です。化学物質の有害性情報を示すGHS分類は次の通りです。

  • 酸化性液体 区分1
    強酸化性物質: 火災又は爆発のおそれ
  • 金属腐食性 区分1
    金属腐食のおそれ
  • 急性毒性(経口) 区分4
    飲み込むと有害 (経口)
  • 皮膚腐食性/刺激性 区分1
    重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1
    重篤な眼の損傷
  • 発がん性 区分2
    発がんのおそれの疑い
  • 生殖毒性 区分2
    生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
  • 特定標的臓器毒性(単回ばく露) 区分3
    気道刺激性: 呼吸器への刺激のおそれ
  • 特定標的臓器毒性(反復ばく露) 区分1
    甲状腺: 長期又は反復ばく露による臓器の障害

過塩素酸は加熱および有機物や還元剤との接触で爆発しやすいため、注意が必要です。有機物の分解作業中、爆発し、負傷する事故が過去に発生しています。試薬をこぼしてしまった場合は、大量の水で流すようにします。

過塩素酸は金属を腐食して水素を発生させます。保管はガラスやポリエチレン製の容器を使用し、直射日光を避け、換気の良いなるべく涼しい場所に常温で保管することが推奨されています。

過塩素酸のその他情報

1. 人体への有毒性

過塩素酸は高濃度では酸化力が非常に高く、有機物を腐食します。皮膚なども腐食するため、使用の際には保護手袋や保護メガネなど、保護具の着用が必須です。

また、呼吸器への刺激性があるため、局所排気装置下など換気の良い場所で使用する必要があります。

2. 過塩素酸の酸性度

過塩素酸はオキソ酸の1種で、塩素原子 (Cl) を含むオキソ酸の中では最も酸性度が高いです。塩素原子を含有するオキソ酸の酸性度の強さは次の通りです。

  HClO < HClO2 < HClO3 < HClO4

酸素数が多いほど、酸素原子の有機効果が大きくなり、プロトン解離後の塩素酸イオンの安定性も高くなるため、酸性度も高くなります。過塩素酸のpKaは-10で、硝酸や硫酸と同様の強酸です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0071JGHEJP.pdf
https://www.env.go.jp/chemi/report/h23-01/pdf/chpt1/1-2-2-04.pdf

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