インジウム

インジウムとは

インジウムとは、周期表第13属に属する金属元素で、元素記号はIn、原子番号は49です。

密度は7.3で、融点は156.4℃で、金属の中ではかなり低い部類に入ります。インジウムは発光スペクトルが濃い青色であることから、Indigoという言葉が語源になって名前が付けられました。

天然では単独の鉱物として存在せず、主に閃 (せん) 亜鉛鉱などの硫化物中にわずかに存在し、亜鉛や鉛の精錬の際に副産物として回収されます。非常に希少性が高く、レアメタルの1つです。希少な資源であるにもかかわらず、需要は拡大しているため、資源確保およびコストの面が問題になっています。

化学式 In
原子番号 49
英語名 Indium
分子量 114.818
融点 156.6°C

インジウムの使用用途

インジウムの主な用途に、液晶ディスプレイやタッチパネルがあります。構造上、液晶パネルには透明な電極が必要ですが、この透明な電極には酸化インジウムスズが利用されています。酸化インジウムスズは、インジウムの酸化物である酸化インジウム (In2O3) に酸化スズ (SnO2) を添加した物質で、通称ITOと呼ばれています。

酸化インジウムスズ (ITO) で形成された薄膜 (ITO膜) は、可視光の透過性と導電性を併せ持っており、液晶パネルにおける透明な電極としての役割を果たしため多く用いられてきました。そのほか、インジウムをシリコン、ゲルマニウムにドーピングすることでp型半導体とすることができます。

また、インジウムは、常温でも柔らかく、展延性に優れていますので、ガラスや金属との接合性が非常に高いです。そのため、低温環境下でも使用可能なシール材として利用されたり、低融点合金のはんだとしても有用です。

インジウムの性質

物理的性質は、帯青白色または銀灰色をしており、ナイフで切断できるほど柔らかいです。常温の空気中では非常に安定しています。化学的性質は、酸に侵されやすいですが、アルカリには安定しています。

インジウムの化合物として、酸化インジウム、リン化インジウム、ヒ化インジウム、アンチモン化インジウムなどが挙げられます。また、インジウムは質量数が113のものと115のものが存在し、113のものが安定同位体で、115のものが放射性同位体となっています。

しかし、インジウムは自然界においては質量数115のものがおよそ95%の存在比を占めており、安定同位体よりも放射性同位体の方が多くの存在比を持つという珍しい元素です。しかし、この質量数115の放射性同位体は半減期が441兆年と非常に長く、ほとんど安定同位体と言っても差し支えありません。

そのため、さまざまな電子部品にインジウムは使用されていますが、その放射能が問題とされることはありません。

インジウムのその他情報

1.  インジウムの危険性

インジウムから作られるITOについて、以前に間質性肺炎による死亡例が報告されており、ITOを取り扱う作業者の間で間質性肺炎の罹患例はいくつか報告されています。それを受けて、2010年に厚生労働省からインジウム・スズ酸化物等取扱い作業による健康障害防止対策が発表されました。

2. インジウムの生産

かつては日本の北海道にある鉱山が世界で最もインジウムを生産していましたが、現在は中国が最も生産しています。その他、生産量が多い国は、韓国やカナダ、日本などです。

しかし、現代の需要に応じてインジウムの採掘現場や加工工場が急速に増加し、そのことが環境破壊につながっているとされています。そのため、日本においてはインジウムのリサイクルを促進したり、代替材料を使用したりといった対応策がとられています。

参考文献
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/5359967
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7440-74-6.html 

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