グリオキサール

グリオキサールとは

グリオキサールの基本情報

図1. グリオキサールの基本情報

グリオキサール (Glyoxal) とは、分子式 C2H2O2で表されるジアルデヒド化合物です。

ジアルデヒド化合物の中で、最も簡単な構造に当たります。IUPAC命名法による名称はエタンジアールであり、別名にはシュウ酸アルデヒドという名称もあります。CAS登録番号は、107-22-2です。

分子量58.04、融点は15℃、沸点は51℃です。常温では、無色から淡黄色の液体で存在します。固体状態では、黄色柱状の結晶です。

密度は1.27g/cm3であり、水や有機溶媒に溶けます。40%程度の水溶液で取り扱われることも多い物質です。引火性があることから消防法では、第4類引火性液体に指定されています。また、有害性の観点では、労働安全衛生法において、変異原性が認められた既存化学物質に指定されています。

グリオキサールの使用用途

グリオキサールは、ヒドロキシル基を持つ高分子化合物 (ポリビニルアルコールなど) と架橋反応をする性質があるため、樹脂や繊維の製造分野において架橋剤として用いられます。グリオキサールを架橋剤として用いることにより、水溶性を下げたり、表面加工の上で役立つ効果があります。

また、研究開発分野では、変性剤として、電気泳動・ブロッティング試薬や、ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE) 用試薬に用いられます。これは、グリオキサールがRNAが持つ2次構造を解消する作用があり、RNAの電気泳動の際に有用であるためです。

その他の用途は、医薬・香料などの有機合成原料、土壌硬化剤、紙仕上げ剤、消臭剤などです。また、グリオキサールは、グルコースの自動酸化あるいは脂質の過酸化においても生成するため、種々の食品や煙草の煙中に含まれていることが知られています。

グリオキサールの特徴

水溶液中のグリオキサールの構造

図2. 水溶液中のグリオキサールの構造

グリオキサールは、空気中ではすぐに吸湿重合して白色の粉末になる性質があります。そのため、水溶液で取り扱われることが殆どです。

水溶液ではグリオキサールは水和物や水和物オリゴマーの形で存在しているため、揮発性や臭気がほとんどありません。そのため、アルデヒドでありながらも皮膚や粘膜の刺激性が小さく、また、単体に比べて引火性も低くなっています。40%水溶液の引火点は100℃以上です。尚、pHは2.1から2.7です。

反応性の上では、DNA中のグアニン残基に特異的に結合するという変異原性がある物質です。生体内では、グリオキサールは、メチルグリオキサールと共に、グアニジン基と反応して終末糖化産物を生成する原因物質とされています。

グリオキサールの種類

現在グリオキサールは、一般的には主に研究開発試薬製品として販売されています。基本的には単体での販売ではなく、40%水溶液での製品化です。

製品容量の種類は、500mLや500gなどです。実験室で取り扱いやすい容量での提供となっています。室温で保管可能な試薬として取り扱われます。

前述の通り、引火性があるとともに変異原性がある有害な物質です。取り扱いの際は、各種法規制を遵守し、安全に取り扱うことが求められています。

グリオキサールのその他情報

1. グリオキサールの合成

グリオキサールの合成

図3. グリオキサールの合成

グリオキサールは、エチレングリコールの触媒的酸化反応や、アセチレンオゾンや酸素・銅触媒存在下の空気で酸化させる反応により合成可能です。別の合成方法には、亜セレン酸を用いたパラアルデヒドの酸化や、硝酸を用いたアセトアルデヒドの酸化反応などがあります。

2. グリオキサールの法規制情報

グリオキサールは単体では引火性のある物質であることから、消防法において「第4類引火性液体」に指定されています。一般的に取り扱われる40%水溶液では引火点不明ですが、熱や高温のものを火気から遠ざけて保管することが必要です。

また、アルデヒド基の性質により変異原性があることから、労働安全衛生法では「変異原性が認められた既存化学物質」に指定されています。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)では「第1種指定化学物質」です。有害性を正しく理解し、法令を遵守した取り扱いをすることが求められています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0107-0090JGHEJP.pdf

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