ジクロルボス

ジクロルボスとは

ジクロルボス (英: Dichlorvos) とは、殺虫剤や農薬に含まれる成分として知られている有機リン系の有機化合物です。

組成式はC4H7Cl2O4Pで、無色~琥珀色の液体で特徴的な臭気を有します。ジクロルボスは比較的毒性の低い農薬、殺虫剤として日本国内で広く使用されてきました。2012年に日本での農薬登録が失効したため、現在では家庭用の農薬、殺虫剤および防疫用殺虫成分、動物用医薬品として使用されています。

散布後に殺虫成分が早く消失するため農作物に残留しにくいのが特徴です。ジクロルボスの原体は毒物及び劇物取締法における劇物、消防法における第4類引火性液体、第三石油類水溶性液体に指定されています。

ジクロルボスの使用用途

有機リン化合物であるジクロルボスはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、生物の体内で神経伝達物質であるアセチルコリンエステラーゼの活性を阻害する結果、過剰量のアセチルコリンが分解されないまま神経に作用し、殺虫効果を発揮します。

ジクロルボスは即効性の高い殺虫成分ですが、残留性が低いという特徴があるため、茶、桑、果樹、野菜、キノコなど広い用途に使用可能です。ジクロルボスは40~80%の濃度の乳剤、または燻煙剤として販売されています。

乳剤を希釈して散布するか、燻煙材を用いて燻煙することによって農作物への農薬として使用します。また、もう1つのジクロルボスの主な用途は防疫用殺虫剤です。ジクロルボスは動物用医薬品として薬事法によって承認されており、鶏舎や畜舎の衛生を管理するための殺虫剤や、馬用の寄生虫駆除剤として使用されています。

その他、ゴキブリやハエ駆除のための家庭用殺虫剤も用途の1つです。日本国内では、主に殺虫用燻蒸剤の成分としてジクロルボスが使用されています。

ジクロルボスの性質

ジクロルボスは水に溶けにくく、有機溶剤に溶けやすいという性質を持ちます。また、アルカリ性の水溶液に溶かすと加水分解されます。ジクロルボスは、毒物及び劇物取締法における劇物に指定されている化合物です。

危険有害性に関する情報として、経口・経皮・吸入での摂取による強い毒性、皮膚および眼への強い刺激があります。ジクロルボスを誤って摂取した場合、頭痛、倦怠感、吐き気などの症状が現れ、重篤な場合では意識混濁や死亡する可能性もあるため、使用には注意が必要です。

ジクロルボスを使用する際は、保護メガネ、呼吸器の保護具、保護衣、保護手袋などの保護具を着用してください。なお、特に高濃度のジクロルボスについては、二トリルゴムおよび塩ビは適切な保護材料ではないため、ネオプレンの保護手袋が推奨されています。

また、ジクロルボスを含む薬剤を大量に散布するような場合は、全面耐薬品性防護服とブーツの着用が推奨されています。使用前に安全データシートや商品の使用説明書をよく確認してください。

ジクロルボスのその他情報

1. ジクロルボスの別名

ジクロルボスの別名は、ジメチル‐2,2‐ジクロロビニルホスフェイト、DDVPなどです。日本国内の大手メーカーのウェブサイトでは、主に「ジクロルボス」または「DDVP」の名称が使用されています。

2. ジクロルボスの使用上の注意

ジクロルボスは消防法における第4類引火性液体、第三石油類水溶性液体に指定されている化合物です。ジクロルボスは高温での加熱により分解し、リン酸化物、塩素、ホスゲンなどの有毒なガスを発生させます。

そのため、ジクロルボスは高温物や着火源がない場所で使用してください。換気がよく施錠された場所にて、密閉された容器内で保管する必要があります。

3. 廃棄処分方法

ジクロルボスは、水生生物に対して強い毒性を持っています。そのため、ジクロルボスやジクロルボスを含む溶液を直接河川に放出したり、埋め立て投棄することは推奨されていません。

ジクロルボスは、各地方自治体のルールに従い、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者などに依頼して適切に廃棄処理してください。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0076.html

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