ヨウ化カリウムとは
ヨウ化カリウムとは、ヨウ素のカリウム塩です。
ヨウ化カリウムは、ヨウ化水素酸に炭酸水素カリウム、またはヨウ化水素酸に水酸化カリウムを作用させることで生成します。工業的には、ヨウ素を鉄粉と反応させてヨウ化鉄とし、炭酸カリウムで処理する方法によって製造されています。
ヨウ化カリウムは、労働安全衛生法で「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物」に指定されており、取り扱いには注意が必要です。
ヨウ化カリウムの使用用途
ヨウ化カリウムは、各種ヨウ素化合物の原料や飼料添加物、ナイロン強化剤、写真乳剤、スマートフォンやパソコンの液晶用偏光フィルム、化学品の反応触媒など、幅広い用途にわたって用いられています。
医薬品分野では、抗真菌薬や去痰薬、ヨウ素補充薬などに使用される他、慢性関節炎・慢性リウマチ・神経痛・梅毒などの治療にも利用されることがあります。さらに、ヨウ化カリウムはオキシダント測定で使われるヨウ化カリウムデンプン紙という形で外部指示薬として、次亜塩素酸酸化還元滴定に用いられるなど、分析用試薬としても使用可能です。
ヨウ化カリウムの性質
ヨウ化カリウムは無色の立方晶系結晶です。化学式はKI、式量は166.00で、密度は3.13g/cm3、融点は681℃、沸点は1,330℃です。水溶液中では電離しており、カリウムイオンとヨウ化物イオンになっています。
ヨウ化カリウムは、水・アルコール・アセトン・グリセリンに溶けますが、エーテルには難溶です。湿った空気中では潮解性を示します。ヨウ化カリウムは、水に溶解する際に、強く吸熱します。ヨウ化カリウムの水溶液は、中性または微アルカリ性です。
また、光や空気酸化によって、徐々にヨウ素が遊離します。黒ずむため、遮光して密栓し保存することが必要です。硫酸が存在するとヨウ素が遊離するので、この性質を滴定反応として幅広く利用されています。
ヨウ化カリウムにはヨウ素を溶かす性質もあり、放置すると酸化され、ヨウ素を遊離して黄色に変化します。溶解したヨウ素の構造は、三ヨウ化物イオン (I3−) です。ヨウ素ヨウ化カリウム溶液はヨウ素液とも呼ばれ、デンプン水溶液に加えた際にヨウ素デンプン反応を起こします。
ヨウ化カリウムのその他情報
1. 予防薬としてのヨウ化カリウム
ヨウ化カリウムは甲状腺腫による甲状腺機能亢進症の治療に使用されており、ヨウ素を補給することが可能です。福島原発事故の後に、正式に放射性ヨウ素の内部被曝予防薬としての効能が承認されました。
原子力災害などで放射性ヨウ素を吸入すると、β崩壊によって内部被曝を起こしやすいです。そして甲状腺癌や甲状腺機能低下症といった晩発的な障害の危険性が高くなります。そこで、非放射性のヨウ化カリウムの製剤として使用すると消化管から吸収され、24時間以内にその10~30%が甲状腺に有機化合物として蓄積されます。
したがって、甲状腺内はヨウ素の安定同位体で満たされ、以後のヨウ素の取り込みを阻止し、放射線障害を予防することが可能です。後から取り込まれた過剰なヨウ素は、すぐに尿中へ排出されます。さらに、放射性ヨウ素の吸入後でも、8時間以内ならおよそ40%、24時間以内ならおよそ7%の取り込み阻害効果が認められています。
2. ヨウ化カリウムの応用
ヨウ化カリウムは残留塩素の測定に利用されます。ジエチルパラフェニレンジアミン法 (N,N-diethyl-p-phenylenediamine method) と呼ばれ、DPD法と略される場合もあります。
アンモニアの検出に用いるネスラー試薬 (英: Nessler’s reagent) に使用されるほか、第三級アミンやアルカロイドの検出に使われるドラーゲンドルフ試薬 (英: Dragendorff’s reagent) の調製にも利用されています。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0397JGHEJP.pdf