アルミヘアライン加工とは
アルミヘアライン加工とは、アルミ素材に対し単一方向へ伸びる髪の毛のようなラインを付ける研磨方法です。
ヘアラインと呼ばれる髪の毛ほどのライン (幅0.18mm程度) が表面上に生まれ、外観の印象も変わります。つや消し効果があるので光沢や映り込みは少ないですが、アルミ特有の質感は維持されています。
加工方法にも種類があり、模様や風合いが調整可能です。装飾や傷を目立たなくする目的で使用されるケースが多く、使用用途は多岐に渡ります。
アルミヘアライン加工の使用用途
電化製品では、スマートフォンケースやウェアラブル系のデバイスにアルミヘアライン加工が施されれいます。より精密機器では、外付けハードディスクドライブとも相性が良く、採用される場合が多いです。 建材では、システムキッチンの外装や窓枠フレーム、家具の支柱が挙げられます。
表面処理済みの板材も汎用性が高いです。アルミ素材自体、比重が軽く丈夫であり、電気伝導率も高いため、さまざまな分野に使用されています。そこにヘアライン加工処理での意匠性が加わり、さらに適用が広がっています。
アルミヘアライン加工の特徴
装飾を目的とした加工において高級感を付与できるため、デザイン重視の製品へ広く採用されています。表面に線状の凹凸が発生し、指紋などの油分汚れが目立ちにくく、滑り止めの効果も期待できます。
一方で、ヘアライン方向に対し垂直に入った傷はとても目立つのがデメリットです。ラインの溝に成分が溜まりやすいので、その他研磨方法よりも耐食性が低い傾向もあります。また、経年劣化によりヘアライン模様自体が薄まる現象も挙げられます。
アルミヘアライン加工の種類
1. 機械加工
機械加工は、旋盤やベルト研磨機など、様々な機械設備で研磨を行う方法です。旋盤ではアルミ材料自体を回転させ、研磨工具を接触させることでヘアライン模様を付与します。研磨盤では研磨工具を回転させ、そこにアルミ材料を接触させます。
ベルト研磨機では、輪形状の砥粒研磨ベルトを研磨機で回転させ、アルミ材料に接触させることで金属表面の加工が可能です。研磨ベルトの表面には砥粒が付着しており、これにはJISにて設定された規格が存在します。
粒径の大きい粗粒がP12~P220で15種、粒径の小さい微粉がP240~P2500で13種あります。機械加工は仕上がりが安定しているので大量生産に適していますが、加工の微調整が不可のため、デザインによっては対応できません。
2. 手作業加工
手作業加工は、手動でヘアライン模様を付与する加工方法です。研磨剤を塗布し、サンドペーパーやクロスにて一定方向に磨きます。
手作業にて行うため、加工の微調整が可能ですが、コストが高くなりがちです。一点物の記念品などは手作業でのヘアライン加工が好まれる傾向にあり、より高いデザイン性への対応が求められます。
アルミヘアライン加工のその他情報
アルミヘアライン加工による外観の種類
スクラッチヘアライン
意図的にヘアラインを短い線にして加工を行います。よりつや消しの質感が強まり、落ち着いたトーンの外観が表現できます。
ヘアライン・クロス
ヘアラインをクロス状にデザインし、意匠性を高めた加工方法です。交差したヘアラインが各々の角度で光を反射させ、表面に高級感をもたらします。
デザインヘアライン
ヘアラインを織物状にデザインして加工する方法です。編んだ繊維のような模様を表現することが可能で、金属上に柔和なイメージを付与できます。
2. アルミヘアライン加工後の表面処理
ヘアライン加工後の処理の一例として、陽極酸化処理が挙げられます。化学品による表面処理の1種であり、ヘアライン加工での外観を維持したまま耐食性の向上や染色が可能です。人工的に表面へ酸化被膜を生成させ、装飾や機能性皮膜として新たな性能が加わります。
ヘアライン加工自体はステンレスや他の金属にも可能ですが、素材自体の性能は変わりません。より使用用途のスペックへ近付けるため、ヘアライン加工後もさまざまな表面処理手法が存在しています。