アデノシンとは
アデノシンとは、筋肉細胞や脳細胞における主要なエネルギー源であるATP (アデノシン三リン酸) が分解されることによってできる物質です。
睡眠物質の1つといわれています。日中に筋肉細胞や脳細胞が働くことによってATPが燃えて分解され、アデノシンが産生されます。さらに、体内にアデノシンが蓄積することで眠気を引き起こすという仕組みです。
また、アデノシンの作用を抑制するためにカフェインが使用されます。一般的に、眠気覚ましを目的としたものにカフェインが配合されているのは、その理由である場合が多いです。
アデノシンの使用用途
アデノシンの主な使用用途は、以下の通りです。
1. 心疾疾患の診断
アデノシンは、体内で分解されることによって作られる物質であるため、能動的に摂取するものには含まれていません。しかし、最近の研究によって、アデノシンの受容体に対するアゴニストやアンタゴニストが発見され、薬理作用などが明らかになりました。
その中で実用化に至っているものは、心臓疾患の診断を行うために負荷誘導をかける医薬品です。これによって、運動負荷をかけられない人にも心筋血流シンチグラフィによる心臓疾患の診断を行えるようになります。
しかし、心臓疾患の診断を行うために使用する場合には、副作用に対する注意も欠かせません。負荷誘導にアデノシンを使用する場合、胸部への違和感や過度な血圧低下を引き起こす可能性があります。そのため、使用時には血圧の測定や心電図の確認など副作用が生じた際に対処できる準備を行うことが重要です。
2. 育毛剤
また、アデノシンは近年、育毛剤にも使用されています。育毛剤には育毛作用はもちろんのこと、ヘアサイクルを整える効果も欠かせません。
アデノシンには人の毛根にある毛乳頭細胞へ作用し、発毛促進及びヘアサイクルを整える効果があると言われています。そのため、心臓疾患の診断を行うためだけでなく育毛剤にもアデノシンが配合されています。
3. 化粧品
アデノシンは化粧品にも使用されています。アデノシンを配合した化粧品は肌のシミやシワを薄くさせることが可能です。肌のシミやシワの原因として代表的なものはメラミンと言われており、肌のターンオーバーが乱れると発生しやすくなります。
シミやシワを押さえるためにも、肌のターンオーバーを整え、肌の代謝を高めることが欠かせません。アデノシンにはターンオーバーを促すために必要な肌の代謝を高める効果が認められています。そのため、アデノシンを含んだ化粧品を使用することで、シミやシワを薄くさせることが可能です。
アデノシンの特徴
アデノシンは、アデニンとリボースが結合したヌクレオチドの一つです。アデノシンの化学式は、C10H13N5O4で表されます。なお、アデノシンの外観は白色です。
水には溶けますが、エーテルにはほとんど溶けません。また、融点は約235℃、沸点は676.3℃で常温 (20℃) においては個体です。
アデノシンのその他情報
1. アデノシンの製造方法
アデノシンは生物の体内で生成されることが一般的ですが、工業的に製造する場合は核酸を加水分解することでアデノシンを生成することが可能です。
例えば、ATPを加水分解した場合にはアデノシン-5-リン酸 (AMP) とピロリン酸が生成されます。また、アデニン誘導体をペンタアセチル-D‐リボフラノースと溶融縮合及びアセトハロゲノ-D-リボフラノースと縮合させる方法でも生成されています。
2. アデノシン取り扱い及び保管上の注意点
取り扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 遮光容器を使用し、暗所かつ換気の良いところで保管する。
- 強酸化剤との接触及び混同しないよう注意する。
- 取り扱い時には下水や河川などに排出しないよう注意する。
- 取り扱い時には目や口に付着しないよう、保護具を着用する。
- 火気などの熱源の傍では使用しない。
参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/A0152
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/KAG_DET.aspx?joho_no=38912