摩耗試験機

摩耗試験機とは

摩耗試験機

摩耗試験機とは、主に金属材料に対する試験機の一種です。

一定期間に試験片を相手材を押し付けながら相対運動を与え、その時の摩耗特性を測定します。なお、摩耗試験には金属以外にプラスチックや衣料品に使われる布地等の耐摩耗性を評価する場合もありますが、ここでは広く用いられる金属材料の摩耗試験機について説明します。

金属材料の試験の中でも引張試験や曲げ試験などは、付加する荷重の大きさによって物理的特性・機械的特性が決定するのに対し、摩耗試験では試験片に摩擦力を加えるための相手材の形状や荷重の与え方、試験環境によって異なる特性が出現することが大きな違いです。そのため、摩耗試験機には、相手材を直線上で往復運動させるものや回転させるものなど、さまざまな種類の装置があります。

また、ウェット・ドライ条件や温度など、実際の使用状態に近い環境を設定することができる装置もあります。摩擦試験はトライボロジー領域で扱われる試験です。トライボロジーとは、摩耗や摩擦、焼き付きなど相対運動しながら互いに影響を及ぼしあう2つの表面の間に起こる全ての現象を対象とする科学と技術のことを指します。

摩耗試験機の使用用途

摩耗試験機は産業機器、建設機器、医療機器、自動車、架線、レールなど摩耗を伴う製品の開発において使用されます。また、摩耗が関与した市場不具合の原因究明として、摩耗試験機による検証が行われることもあります。

工業製品の使用による摩耗現象は、非常に長期間によって生ずる場合がほとんどです。製品開発や市場不具合の検証の場合でも、製品が実際に使用される時間をかけて実験することは現実的ではありません。

そこで、荷重や摺動回数などを大きくして、実際よりも早期に摩耗を生じさせる加速試験として行われるケースが多いです。部品や製品が要求される耐摩耗性を満足することを評価するための試験だけでなく、部品、メッキ、潤滑材などの材料を選定するための試験など、摩耗試験機はさまざまな目的で使用されます。 

摩耗試験機の原理

摩耗試験機にはいくつかの種類がありますが、いずれも2つの部材を接触させて荷重を負荷し、相対運動を与えます。試験条件として潤滑油を塗布したり、温度環境を設定することも大切です。

摩耗試験機では一定時間の試験を行い、試験片の摩耗量や試験時の摩擦係数などが計測されます。

摩耗試験機の特徴

摩耗は、物体同士が擦れ合って生じる摩擦によって摩擦面の一部が劣化する現象です。摩耗試験機は、摩擦現象をそれぞれの状況に応じて再現して、摩耗のメカニズムや特性を明確にし、摩耗が発生した場合の影響などを把握します。

摩耗試験は試験方法に大きく依存することから、規格として統一された試験方法は、摩擦試験を必要とする分野の広さに比べ、多くありません。また、摩耗試験は通常、実際に使われる条件で実施するため、摩耗試験機は他の材料試験機より種類が多いという特徴があります。

摩擦試験機のその他情報

摩擦試験の種類

摩耗試験機で実施する摩耗試験の主な種類は、以下の通りです。評価する特性として、静止摩擦係数、動摩擦係数、摩擦係数の経時変化、摩耗量、材料を変えた時の耐摩耗性の比較などが挙げられます。

  • ピンオンディスク試験
    回転する平板試験片 (ディスク) の表面にピンを押し当てる摩耗試験です。
  • ボールオンディスク試験
    回転するディスク試験片の表面にボール試験片を接触させます。平面とボールが接触するため摩擦面積が小さく、安定した接触を保持できるという長所があります。
  • リングオンディスク試験
    リング状の試験片とディスク試験片の組合せによる摩耗試験です。
  • ピンオンプレート試験
    プレート試験片にピンを押し当て、プレートを水平方向に往復摺動させます。
  • ボールオンプレート試験
    プレート試験片にボール試験片を押し当て、プレートを水平方向に往復摺動させます。

材料試験機には、これらの試験のうち1種類のみ可能なものから複数の試験が実施できるものまで、さまざまな種類があります。

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