膜分離とは
膜分離とは、膜を利用して物質をふるい分けることで、分離・抽出・濃縮する技術です。
膜分離に使用する膜には小さな孔が空いており、物質のサイズや電荷、浸透圧の違いなどによって物質を選択的に透過できます。
膜分離は、積極的に物質を透過させるための推進力として、エネルギー勾配を利用しており、原理的には、化学ポテンシャル・圧力差・電位差の3種類に大別されています。
膜分離の使用用途
膜分離は、主に純化や濃縮、分離といったプロセスにおいて活用されています。そのほかにも蒸留や晶析、抽出などによる方式も存在しています。
1. 純化
純化は、水中の懸濁物や細菌、イオンといった不純物を除去する方法です。海水の淡水化や工業排水の処理および再生、下水の処理などに用いられます。
2. 濃縮
濃縮は、イオン交換膜電気透析法という方式により、海水から食塩を製造する方法です。この方法では、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に並べることで、電気透析そうを構築し、電位差によりイオンの移動と選択的透過を行います。
3. 分離
分離は、低分子と高分子に分ける方法です。主にバイオや医薬品関連で使用されています。この方法では、主に低分子と高分子を分けますが、それらに限らずにウイルスや酵母、コロイド、微粒子などを分離することが可能です。
膜分離の原理
膜分離は、主に膜を用いたろ過方式として、全量ろ過方式とクロスフローろ過方式の2種類で行われています。
全量ろ過方式は、供給される原水の全量をろ過する方式です。この方式では、廃棄水が発生しません。
また、膜に原水を供給することで、膜にろ過残渣(ざんさ)を形成します。一般的な砂ろ過と同じ方式により、ろ過を行い、定期的な洗浄を必要とします。
一方、クロスフローろ過方式は、膜面に対して原水を平行に供給し、不純物を膜面に堆積させながら、ろ過を行う方法です。この方法では、原水が横方向に流れるため、ろ材に目詰まりが生じにくく、全量ろ過方式と比べて、透過流束が高いことが特徴として挙げられます。
膜分離の種類
膜分離は、主に分離する対象物の大きさによって、4つの種類に分けられます。下記の膜分離の種類から対象物が大きく粗い順に記載しています。そのほかにもいくつかの膜分離方式があり、このトピックでは、イオン交換膜とガス分離膜を解説します。
1. 精密ろ過膜 (MF)
精密ろ過膜は、Micro Filtrationと呼ばれ、約0.01umから数umまでの微粒子や微生物を分離する膜方式です。この方式では、主にウイルスやバクテリア、藻類・泥を分離しています。応用例としては、排水の再生や除菌、上水の処理などが挙げられます。
2. 限外ろ過膜 (UF)
限外ろ過膜は、Ultra Filtrationと呼ばれ、約0.1umから2nmまでの溶質や粒子を分離する膜方式です。この方式では、主にタンパク質やウイルス、バクテリアを分離しています。応用例としては、果汁や乳製品の濃縮、電着塗料の分離もしくは回収などが挙げられます。
3.ナノろ過膜 (NF)
ナノろ過膜は、Nano Filtration Membraneと呼ばれ、約数nmから数十nmまで粒子や高分子を分離する膜方式です。この方式では、主にイオンやタンパク質、ウイルスを分離しています。応用例としては、果汁の濃縮や上水の処理などが挙げられます。
4.逆浸透膜 (RO)
逆浸透膜は、Reverse Osmosisと呼ばれ、約0.1nmから数nmまでの溶媒と溶質を分離する膜方式です。この方式では、主にイオンやタンパク質を分離しています。応用例としては、海水の淡水化や果汁および乳製品の濃縮、排水の浄化などが挙げられます。
5.イオン交換膜 (IE)
イオン交換膜は、Ion Exchange Membraneと呼ばれており、約0.01umから1nmまでの陽イオンや陰イオンを選択的に通過させる膜方式です。この方式では、主にタンパク質や多糖類、酵素、抗生物質などを分離しています。応用例としては、食塩の製造やカセイソーダなどが挙げられます。
6.ガス分離膜
ガス分離膜は、約1nmから0.1nmまでのガス成分を分離する膜方式です。この方式では、主にイオンや分子を分離しています。応用例としては、酵素富化やメタン、二酸化炭素、水素の分離などが挙げられます。