振動解析ソフトウェアとは
振動解析ソフトウェア (英: vibration analysis software) とは、おもに物体の固有値を解析したり、周波数応答を解析したりするツールです。
振動解析は構造解析の1つで、数理的手法とコンピュータを用いて、目で見ることのできない現象を可視化して評価できます。振動状態を評価するためのモード形状、共振周波数、位相、振幅などの様々なパラメータを求めることが可能です。
また、定常状態や過渡状態の振動荷重に対する構造物の応答の計算、対象物の振動状態や振動に対する応答、耐震・免振性能なども評価できます。
振動解析ソフトウェアの使用用途
振動解析ソフトウェアは、任意の物体に振動が加わったときに、その振動状態を定量的に評価する場合に使用されます。日常生活の例は、自動車やバイク、電気製品などで生じる振動や環境騒音などの解析です。
スポーツでは、テニスラケットや野球のバットなどの道具の振動解析に使われます。建築分野では、建造物に対する地震応答解析や制振性能の評価を目的としています。
振動解析ソフトウェアの原理
振動解析ソフトウェアでは、構造物が有する振動の固有値を調べる「モード解析」、外部から振動を加えたときの応答を調べる「周波数応答解析」・「過渡応答解析」、「流体騒音解析」などに分類できます。
1. モード解析
モード解析は、外力が印加されていない状態 (自由振動) において、対象物の振動を解析します。対象物の固有振動数を算出し、揺れが増大する共振周波数を避けるための対策を立てることができます。
2. 周波数応答解析
周波数応答解析は、特定の周波数で外力が加わる場合に、対象物の応答を解析します。対象物が一定の周波数と振幅で振動し続けた状態になると、時間変化がない定常状態となります。周波数応答解析は、定常状態における周期振動の評価です。
3. 過渡応答解析
過渡応答解析は、時間と共に変化する荷重に対して物体の時刻暦応答を計算できます。地震、風、爆発を受ける構造物、や窪みを通過する車両の振動挙動の計算が可能です。
4. 流体騒音解析
流体騒音解析は、自動車のドアミラーや新幹線のパンタグラフなど、流体の圧力変動の伝播により発生する騒音を解析します。
振動解析ソフトウェアのその他情報
1. 振動分析ソフトウェア
振動分析ソフトウェアは、オフライン後処理解析ソフトウェアです。時系列データに対する各種解析、及び解析結果データに対する各種後処理を PCで行ないます。
具体的には、シミュレーションを行って各種動作を事前に評価することが主体です。また、対象物の時系列データからFFTやトラッキング解析することにより、振動に関する様々なパラメータを出力します。さらに、FFTのプロセスを使って入力信号から特定の周期振動を抽出し、フーリエ変換により周波数成分を求めることが可能です。
2. 振動解析ソフトウェアの事例
構造解析
- 構造物のき裂進展
半円状の初期き裂が3次元的に進展していく様子を表現した事例です。初期き裂発生後からの寿命を推定することができます。 - リード部品の振動解析
2本の端子をもつリード部品の根本に任意の振動を印加した場合の応答を解析した事例です。調和解析は正弦振動を加えたときの応答解析が可能です。過渡解析は任意の振動波形の応答を解析することができます - 射出成形でのリブの効果
リブの追加やリブの厚み変更によって、固有振動数を変えることができる事例です。射出成形では形状変更が比較的しやすいため、解析しながらより良い形状を探索すると効果が出ます。
地盤解析
降雨時の地盤浸透水挙動は、降雨が地面に浸透していく状況を計算した事例です。時間経過による安全率低下即ち、斜面崩壊の危険性増加の推定ができます。
流体解析
配管の浸食予測は、配管内を流れるガスとダストの固-気2相流解析した事例です。ダストの衝突位置・速度・角度情報から配管摩耗速度の予測ができます。
粉粒体解析
回転体内の粒子挙動は、回転体内の粒子挙動を離散要素法DEMを用いて解析した事例です。粉体に水分が含まれると粒子間に付着力が働き、乾いた状態とは異なる挙動になります。
データ分析・最適化
時系列データ分析は、時間と共に変化するデータを用いた相関分析事例です。大規模かつ複雑なデータでも有意な情報のわかりやすい提示ができます。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime1966/19/3/19_3_235/_pdf