電子ビーム溶接とは
電子ビーム溶接とは電子管から発射された電子を磁界や電界を利用して加速し、工作物(ワーク)を加熱溶解させて溶接する加工法です。
電子管の陰極は加熱されると熱電子を放出します。この放出現象はブラウン管等に使用されたものと同じ原理です。
この熱電子をワークに照射して加熱溶解する工法は基本的に真空内で行われています。
ワークとしては厚板から薄板までの加工が可能であり、溶接した部分に歪みが残りにくいことが特長です。
最近では真空度が低い環境でできる溶接法や、電子を発射する電子銃移動型も利用されています。
電子ビーム溶接の使用用途
電子ビーム溶接の使用用途は部品材料別に多数提案されています。
- 他の溶接法では難しい材料
ステンレスと鉄、ステンレスと銅などの異種金属材料です。 - 気密性が高い溶接部品
圧力タンク、真空チャンバ等の大型構造物、水冷ジャケットなどの冷却部品です。 - 低歪溶接、高速溶接に対応した部品
ギアなどの自動車部品です。 - 溶接時にワーク表面の酸化を防ぐ材料
チタン、ニオブなどの活性金属材料です。 - キーホール溶接(深溶け込み溶接)、細い溶接ビード(溶接金属)、低歪み溶接に対応した部品
銅、アルミニウムなどの熱伝導率が高い金属材料です。
電子ビーム溶接の原理
真空中で陰極のフィラメントを加熱すると電子が連続的に放出されます。ここで発生する電子は熱電子と呼ばれています。
そして、放出された熱電子は陰極-陽極間に印加した高電圧(60~150KV)で加速され電子ビームをつくります。
この電子ビームは電磁コイルで集束し更に偏向コイルで走査方向を制御しながら、目的とするワーク表面の特定スポットへ集中照射させることができます。
その後ワークに衝突した熱電子の運動エネルギーは熱エネルギーに変換され、その表面は高熱となりワークが溶解して溶接が完了します。
通常使用する電子ビーム溶接機のスポット径は約0.2mmと非常に小さく、溶接部の周辺に加えられる熱影響が少ないため金属表面や内部に歪みが残りにくい溶接が可能です。
電子ビームの出力を調整することで、金属の溶け込み範囲や深さのコントロールが可能であり、薄板から厚板まで幅広い範囲の板厚材料の溶接ができるようになっています。
参考文献
電子ビーム溶接の原理 | 電子ビーム溶接 | 溶接革命 | キーエンス (keyence.co.jp)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj2/60/2/60_16-RV-032/_pdf/-char/en
https://www.ebtohoku.co.jp/technical/welding.html
https://engineer-education.com/production-engineering-27_electron-beam-welding/#i