センタードリルとは
センタードリルとは工作機械に用いる切削工具の一種です。
下穴を加工する前の位置決めをするためのドリルですが、汎用性が高いため位置決め以外の用途に使用されることも多いです。
位置決めするための穴とは、旋盤や円筒研磨などで円筒形状の工作物 (軸類) を加工する際に、工作物を支持するための穴です。位置決め穴は下穴加工のベースとなる為、曲がりや歪みがなく高精度である必要があります。よって普通のドリルと比較すると剛性が高く、加工時に位置ずれを起こしにくい特徴があります。
センタードリルの使用用途
センタードリルは円筒形の工作物 (軸) の端面にセンター穴を加工する際に使われます。センター穴をあける以外の用途としては、以下の場面で使われます。
1. 位置決め穴加工
穴あけをする際に、精度よく下穴を加工するために使用されています。加工を開始する時にドリルでは先端がぶれてしまう事が有り、このようなときにぶれにくいセンタードリルを使う事ができます。
2. 穴の面取り
センタードリルには、60°、75°、90°、R型の刃がそろっているので、これらで面取り加工をする事ができます。
3. 板材の穴あけ
薄い板であれば貫通穴の加工が可能です。下穴をあける工程が不要となる事や、穴あけ後に面取りまで一度に加工できるため、作業時間の短縮につながります。
センタードリルの種類
センタードリルの形状は全長が短く、シャンクが太くて剛性が高いです。普通のドリルでの加工は、刃がワークに食いつく際に刃の先端がブレてしまい、穴あけの位置の精度に影響を与えます。高い剛性をもつセンタードリルは刃のブレが非常に少ないです。センタードリルの種類は下記の通りです。
1. A型
刃先の短い小径部分の次に、60°のテーパ部分が付いています。テーパ部は、75°や90°のものも流通しています。A型60°/A型75°/A型90°と表します。
2. B型
刃先の短い小径部分の次に、60°のテーパ部分がありその次に3段目として大きく面取りが取れる刃がついています。これは加工や段取り替えの際にセンター穴を保護する役割があります。
3. C型
刃先の短い小径部分の次に、60°のテーパ部分がありその次に3段目としてザグリ加工を行う形状に刃がついています。ザグリ部分はB型の面取りと同様にセンター穴を保護する役割があります。
4. R型
刃先の短い小径部分の次のテーパ部の形状にRがついています。Rになっているため、センターとの接触が線接触です。テーパの角度が合わない場合や軸芯がずれている場合でも線接触で支持が可能です。小さな工作物の精密な加工のときなどによく用いられます。
センタードリルの使い方
センタードリルを用いて位置決めを行う際は、センタードリルの深さに注意します。
センタードリルの深さが浅いと下穴加工の精度が低下し、下穴を加工した後に再度面取り加工を施さないといけなくなるので二度手間となり、効率が良くありません。
逆に深すぎるとセンタードリルの負荷が増え、テーパ部を超えて深く加工してしまうと最悪の場合、センタードリルが折れてしまうこともあるため、必ずテーパ部の途中で加工を完了しましょう。
また、下穴の直径を考慮して面取り部が残るように加工深さを計算してから位置決め加工をすると、穴加工後の面取り作業が省けるので効率良く穴加工をすることができます。
センタードリルのその他情報
センタードリルの回転数
センタードリルの回転数は、おおむね1,000rpmが基準です。
S45CやSS400など広く使われている鋼材では1,000rpm前後で問題ありませんが、ダイス鋼といった非常に硬い鋼材を加工する際は、500rpm前後まで落とし、送り速度も遅くする必要があります。また、材料の硬度が硬い時は超硬センタードリルを用いることもあります。
一般的なセンタードリルの材質はHSS (ハイス鋼) ですが、超硬はダイス鋼といった硬い鋼材の加工にも対応できます。
参考文献
https://toolremake.com/center-drills/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/038/
https://sakusakuec.com/shop/pg/1drill03/