保護リレーとは
保護リレーは、電力系統設備に発生する電流・電圧の急激な変化を瞬時に検出し、遮断器に制御信号を送って異常箇所を切り離す装置で、保護継電器とも呼ばれます。
保護リレーは、電力系統の事故発生時に故障箇所を迅速に切り離すことで、過電流による損傷が広がることを防ぐだけでなく、停電時間を最小限に抑え、電力を安定供給するという目的があります。
そのため、事故設備を切り離すための設備事故除去リレーと、事故の影響拡大を防止するための事故波及防止リレーとが、電力系統内に分散して配置されます。また、事故復旧を迅速に行うための再閉路装置も、保護リレーの一種として扱われます。
保護リレーの使用用途
保護リレーは、落雷などの事故の影響が電力系統に広がることを防ぎ、電力の安定供給を確保するための装置です。電力会社が管理する発電所、変電所、送配電線など電力系統を構成する設備の各所に、保護リレーが設置されています。
また、電力会社の電力系統と連系した自家用発電設備も、自家用発電設備の故障時には電力系統を保護し、電力系統の事故時には自家発電設備を保護するために、受電箇所に保護リレーを設置することが義務づけられています。
発電設備以外でも、ビル、工場、病院、鉄道など電力需要施設の受変電設備を保護するために、保護リレーが使用されています。
保護リレーの原理
保護リレーの動作原理は、保護リレーの種類によって異なります。保護リレーの主な方式と動作原理は以下の通りです。
- 過電流保護リレー(OCR:Over Current Relay):保護リレー設置箇所の電流値が設定値を超えたとき動作します。過電流保護リレーが動作する要素には、次元要素と瞬時要素の2通りあります。次元要素は、過負荷によって長時間過電流が流れたことを検出して動作するもので、電流値が大きいほど早い時間に正常な系統を保護します。瞬時要素は、短絡によって定格電流をはるかに超える大電流が瞬時に流れたことを検出して、正常な系統を保護します。
- 過電圧保護リレー(OVR:Over Voltage Relay):保護リレー設置箇所の電圧が設定値を超えたとき動作します。発電機などの故障による電力系統側の過電圧を検出し、負荷側の系統や機器を保護します。
- 不足電圧保護リレー(UVR:Under Voltage Relay):保護リレー設置箇所の電圧が設定値以下に低下したとき動作します。停電や短絡故障などによる電力低下を検出し、負荷側の系統や機器を保護します。
- 地絡保護リレー(GR:Ground Relay):ケーブルなどが大地と接触して起こる地絡事故を検出して動作します。地絡保護リレーは、零相交流器(ZCT)を使って、地絡事故発生時に三相回路のバランスの崩れによる不平衡電流を検出します。このとき、電流の大きさだけで地絡故障を検出するため、電力系統の事故電流か、自己回線側の事故電流かを見分けることができず、誤検出する可能性があります。
- 地絡方向保護リレー(DGR:Directional Ground Relay):回線と大地間の零相電流と零相電圧とで地絡事故を検出して動作します。電流と電圧の位相差の方向で、自己回線の事故電流だけを検出することができます。
- 差動保護リレー(DFR:Differential Relay):保護区間の入力電流と出力電流のベクトル(電流値と位相)差に比例する差動電流が一定値を超えたとき動作します。保護区間内で短絡が起きたときのみ、交流器(CT)の二次電流に差が生じて動作コイルに差電流が流れる仕組みです。この方式では、CTの特性差などにより正常時に差電流がゼロにならず誤作動する可能性があります。
- 比率差動保護リレー(RDFR:Ratio Differential Relay):差動保護リレーの誤作動を防ぐため、差動保護リレーに、電流が通過すると抑制力が発生する抑制コイルを付加した構造をしています。外部事故による大電流が通過すると大きな抑制力が働いて、誤動作を防ぎます。
保護リレーの方式には、この他に電力保護リレー、過周波数保護リレー、不足周波数保護リレー、短絡保護リレー、短絡方向保護リレーなどがあります。
参考文献
https://www.iee.jp/pes/termb_060/
https://jeea.or.jp/course/contents/08103/