赤外線サーモグラフィ装置

赤外線サーモグラフィ装置とは

赤外線サーモグラフィ装置

赤外線サーモグラフィ装置は、測定対象から出ている赤外線放射エネルギーを検出し、対象物表面の温度分布を画像表示する装置です。物体の温度が高いほど赤外線の放射量も大きくなるという、赤外線の性質を利用しています。 

赤外線サーモグラフィ装置には以下の特徴があります。

  1. 物体に触れず、離れたところから温度を測定する
  2. 対象物の一点の温度ではなく、広い範囲で面の温度分布を測定する
  3. リアルタイムで温度を測定する

赤外線サーモグラフィ装置の使用用途

赤外線サーモグラフィ装置は、対象物の表面温度をリアルタイムに可視化できることから、様々な産業分野で、温度管理や監視・検査に使用されています。 

建築分野では、建物外壁タイルの目に見えない剥離状態を、表面温度の違いを利用して検出することができます。ほかにも、太陽光パネルは異常があると発熱が大きくなることから、太陽光パネルの点検に用いられることもあります。

産業機械を利用する現場では、電気装置が故障前に高温になる傾向にあることを利用して、故障の予防保全にも使われます。 
また、制御盤や電子回路の放熱機構を設計する際の調査にも用いられます。高温になりやすい部分が分かっていれば、より効果的な放熱機構を設計・搭載することができます。

対象物に接することなく衛生的に温度測定ができるため、食品業界でも、生鮮食品の保管状況管理、惣菜の配膳もれの検出、パッケージ検査などに利用されています。
このほか、人の発熱状態を非接触で素早く可視化できることから、感染症対策が必要な施設の入場者検温器として普及しています。近年、新型コロナウイルスの流行に伴い、発熱の検査のために多くの赤外線サーモグラフィ装置が施設に導入されました。

赤外線サーモグラフィ装置の原理

熱を持っている物質はすべて、その温度に応じた赤外線を放っています。赤外線サーモグラフィ装置はこのことを利用し、測定対象から放射された赤外線エネルギーを検出し、その値を温度に換算して対象物の表面温度を求めます。

一般的なカメラは、可視光線を検出し画像化する装置と言えますが、赤外線サーモグラフィ装置も同様に、赤外線を検出し画像化する装置と言えます。 

実際の赤外線サーモグラフィの検出器には、対象物からの赤外線放射エネルギーの他に、以下のエネルギーが入射します。

  • 対象物がその周囲の赤外線を反射したエネルギー
  • 赤外線サーモグラフィ自体が放出するエネルギー

さらに検出時の損失も存在するため、実際の測定エネルギーは誤差を含んでいます。
これらは周囲の環境温度に依存しているので、入射エネルギーと同時に環境温度も測定し、誤差要素を除去する補正を行った上で、赤外線エネルギーから温度へと換算します。 

赤外線エネルギーは、黒体 (放射率が1の物体) から放射される理想的な熱放射の場合、絶対温度の4乗に比例します。実際は測定対象の放射率は0~1で変化します。また、対象までの距離、赤外線の波長などの要素も含まれるため、校正テーブルを使って赤外線エネルギーから温度に変換する処理を行います。

赤外線サーモグラフィ装置のその他情報

通常のカメラでは赤外線をとらえることができないため、サーモグラフィ画像を得ることはできません。
しかし、直近ではスマートフォンのカメラに専用の機材を取り付け、専用のアプリを使用することでスマートフォンを赤外線サーモグラフィ装置として利用する動きも出てきています。

参考文献
https://www.thermography.or.jp/about/index.html
http://www.jaira.jp/download/pdf/guidelines.pdf
https://www.flir.jp/discover/instruments/process-quality/thermal-imaging-cameras-in-the-food-industry/

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