鉄道用PC

鉄道用PCとは

鉄道用PCとは、鉄道車両への搭載を前提として作られた産業用PCです。

鉄道車両や鉄道施設における設備の故障は多くの列車の運行に支障が生じるため、鉄道用PCには信頼性や安定稼働に関して厳しい規格があり、出荷の際はその国や地域の規格に適合した製品を出荷する必要があります。

その中でも、EU内での統一規格EN (英: European Norm) の一つであるEN50155は、環境試験項目を多種設けて、それぞれにクラス分けをして基準を定めています。試験内容が充実しているため、鉄道用PCの認定基準のスタンダートとして取り扱われることが多くあります。鉄道用PCを生産しているメーカー各社では、そのPCが鉄道用である証としてEN50155規格のどのクラスに適合しているかをカタログなどに表記している例が多くあります。

鉄道用PCの使用用途

鉄道用PCの使用用途としては次の通りです。

車両の各種機器の状態をモニタリングして、異常が生じた場合に運転手や車掌に対して警告を発します。モニタリング対象は走行に係る装置、各車両のドアの状況、空調設備の状況などがあります。

また、列車の運行指令センターのコンピュータと常時通信して列車の位置や速度、異常の有無などを伝えます。

現在の鉄道車両は車内に液晶ディスプレイを設置して、列車の現在位置や通過する駅名、次に停車する駅の階段の位置など、きめ細かな情報を乗客に知らせています。車内のアナウンスも多くの場合は録音されたメッセージを流し、必要に応じて車掌がアナウンスを入れる方式になっています。このように、車内インフォテイメントの充実にも鉄道用PCが活躍しています。

鉄道用PCの原理

鉄道用PCは線路に配置された通信機器を介して指令センターと情報のやり取りをしたり、GPSを使って車両の位置情報を取得することもあるため、拡張用スロットが用意されています。

CPUは主にIntel社製のものを使用しており、Atom、Celeron、CoreシリーズやXeonと、一般用PCに使われているのと同じCPUが使われています。処理能力は高いものから低いものまで、幅広く使われています。メモリの大きさも含めたPC全体の処理能力も、高い性能のものから低いものまで幅広いラインナップがあり、使用用途に応じて適切な性能のPCが選択できます。

鉄道用PCの構造

OSはWindowsが主流であり、Linuxも選択可能になっていて、Windows CEで動作するものもあります。これも一般的な事務用PCと変わりありません。

鉄道用PCは、他の多くの産業用PCと同様にボックス型PCが主流です。金属の筐体に放熱フィンが付いた形をしています。また、冷却用のファンを持たないファンレスPCが主流です。

列車内に搭載されている多種多様な電子機器類と通信が行えるように、筐体の大きさに比較して多数のインターフェースを備えています。D-sub9ピンのシリアルポートから、RJ-45のLANポート、USB3.0等様々で、必要なインタフェースを選択して搭載可能です。

近年の車両では、客室内に設置した液晶ディスプレイを使って、列車の走行位置などの細かな情報を表示したり、ニュースや天気予報、短時間の番組などを流しています。このようにインフォテイメントシステムとして鉄道用PCを活用する際には、列車内高速LANのインターフェースが必要となります。

鉄道用PCの選び方

鉄道車両は非常に運用期間が長い乗り物です。十年以上使われるのは普通で、50年を超えて走り続けている車両も珍しくはありません。車両の寿命の中で、何回かは改装工事が行われ、機器類の更新も行われます。それでも、搭載機器に求められる寿命は長くなります。

鉄道用PCは厳しい規格に基づいた試験に合格したPCです。それでも構成部品の故障は起こり得るので、なるべく長い期間にわたり部品の供給とサポートが受けられるもの、あるいは代替え部品が入手可能かも検討して、長期の使用に適した製品を選ぶことが大切です。

鉄道用PCのその他情報

鉄道用PCの規格

鉄道用PCの最大の特徴は、耐久性に関する要求事項を盛り込んだ、各国・各地域の厳しい鉄道用PCの規格に適合していることが挙げられます。

鉄道用PCの規格として最も広く知られている規格がEU内の統一規格、EN50155です。EN50155は鉄道車両に搭載される電子機器について定めた基準で、耐環境性能に関して温度、湿度、衝撃、振動を始めとした多くの項目を規定しています。そして、その規定値はT1、T2、T3、Txという様にクラス分けされています。例えば、使用可能な温度条件では、一番厳しいTxクラスで-40℃から70℃と規定されています。そこで、最も厳しい環境用に作られた鉄道用PCのカタログには、「EN50155 -Tx規格適合」あるいは「使用可能温度-40℃から70℃」などと表記された例を多く見かけます。

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