車載用PCとは
車載用PCとは、自動車に搭載して使用するための産業用PCです。
CPUはパソコンはIntel社のCeleron、Coreシリーズ、Xeonシリーズが多く、OSもWindowsが主流です。車載用PCは使い勝手の面と、アプリケーションソフトの開発環境ではデスクトップPCに近いアーキテクチャで作られています。
その一方で、自動車に搭載して特定の任務をこなすために厳しい環境条件に耐えて長期間安定して稼働する信頼性が求められます。車載用PCに要求される条件は、振動への耐性があり、他の装置からの電気的ノイズの影響を受けず、他の装置に電気的ノイズを与えないことなどがあります。他には-30℃~70℃くらいの広範囲な温度条件、不安定な供給電源の元で稼働することなども挙げられます。
車載用PCを製造・取り扱う各社では、信頼性の担保として安定性面での評価の高い部品の採用、エージング試験の実施、故障時の不良原因の解析、公的認証の取得などを実施しています。汎用デスクトップPCより長期的に使用されることが多く、産業機械用のコンピュータ (FAコンピュータ) と同様のロングライフサポートが受けられる機種が多くあります。
車載用PCの使用用途
車載用PCの使用用途には車両の運行管理、車両の自己診断、車内でのインフォテイメント、自動運転や安全運転システムの開発などがあります。
車両の運行管理では、運送会社が自社のトラックに車載用PCを搭載し、車載用PCに内蔵された通信ユニットを介して各車の配送状況等を把握します。また、消防の指令センターでは、救急車の搭載した車載PCを通して指令センターで各車の稼働状況を知り、適切な車両に出動の指示を出します。
車内インフォテイメントではバスでの活用が挙げられます。長距離高速バスを中心に車内でのエンタテイメント提供や、車内からのインターネット接続などの情報通信サービスの提供が増え、車載PCの活躍の場が増えてきています。最近では高度運転支援システムや自動化運転の開発競争が激しく、これらのシステムの開発用としての活用も考えられます。
車載用PCの原理
車載用PCはIntel社のCeleron、CoreシリーズやXeonなど一般のPCと同じCPUを使用し、Windowsが稼働することから、市販されている数多くのアプリケーションソフトや開発ツールを活用することができます。
その一方で、厳しい環境下での安定稼働が求められるため、ハードウエアの面ではデスクトップPCとは異なる多くの特徴を持っています。また、車載機器などとの連携を考慮して、多種のインターフェースを備えています。
稼働可能な温度は概ね-30℃~70℃と、広い温度範囲で稼働が可能です。
車載用PCの構造
本体は、外部からの電磁波による干渉と誤動作を防ぎ、外部に電磁波の影響を与えないために金属のシャーシを持っています。多くの場合、シャーシ上部に大きな放熱板があります。比較的低負荷で稼働するPCは、シャーシの中に冷却用のファンを持たないファンレス構造になっています。
振動する車内で固定するためにボルトを通す穴が設けられ、車載PCの中には振動吸収台に乗せた上で車体に固定するタイプもあります。そして、耐振動性、耐衝撃性に関して国際規格を満たすように設計されています。
電源は、車両のイグニッションのON/OFFに連動しています。特に、車両の電源を切った際には正常にシャットダウンが行われるように短時間のバッテリーを積載しています。また、ショート時に電源回路を保護する機能も備わっています。
このように、車載用PCはハードウエアと外観はデスクトップPCとかなり異なるところがあります。さらに、欧州自動車EMC指令の要求事項に適合したPCとして、Eマーク (英: ECE Regulation) を取得したPCが主流となっています。
車載用PCの選び方
車載用PCはCPUがCeleron、Core i3~i9、Xeonと幅広いレンジから選ぶことが可能です。CPUは同じクラスの名前がついていても、世代が異なると性能は大きく異なります。その一方で車載用PCはデスクトップPCと比較して長期間使用するのが通例です。PCの価格もデスクトップPCと比較すると割高になっています。
車載用PC選択時には、将来的な機能の拡大や、PCの負荷の増大が予想される場合には、ある程度余裕を持たせたスペックの製品を選択しておくことが推奨されます。