デュプリケーター

監修:株式会社ワイ・イー・シー

デュプリケーターとは

デュプリケーターとは、データのコピーやバックアップを行うための装置です。

OSを介さず、HDD (ハードディスクドライブ) やSSD (ソリッドステートドライブ) といったストレージメディア全体を、物理セクターレベルで完全に複製します。 これにより、OS、アプリケーション、設定、隠しファイル、さらには削除されたデータの一部まで、元のストレージの構造を寸分たがわず再現できます。

またハードディスクやネットワーク内において、一つのサーバーのデータを他のサーバーにコピーして冗長性を持たせたり、システムの移行を支援したりします。突然のハードウェア故障やシステム障害が発生した際にデータの損失を防ぎ、復旧を迅速に行うことができます。

デュプリケーターの使用用途

デュプリケーターは以下のような用途で使用されます。

1. IT

IT業界でデュプリケーターは、主にデータのバックアップや災害復旧のために使用されます。サーバーやデータベースのコピーを複数の場所に保管することで、システムの可用性と信頼性を高めます。

企業の重要データなどの迅速な復旧を可能にするため、データセンターでの使用が一般的です。また、クラウドバックアップシステムや、HDD /SSDなどのストレージの冗長化においても利用される場合があります。

2. 製造業

製造業では、生産データや品質管理データのバックアップに使用されることが多いです。製造ラインの運転データ及び設計図、製品仕様書などの重要な情報を複製して保存するために使用します。万が一のデータ損失を防ぎ、製造工程の中断を最小限に抑えることができます。

また、製品設計の改訂履歴や生産スケジュールなどのデータを複数拠点で管理する場合にも使用することが多いです。これにより、業務の効率化やリスク管理の向上にも貢献します。

3. 金融業

金融業界では、データの保護と可用性が極めて重要です。デュプリケーターを利用して取引内容や顧客情報、財務報告書などのデータをバックアップし、万が一のシステム障害やサイバー攻撃による損失に備えます。

また、金融機関は規制に基づいてデータの保持が必要なため、データの複製によりコンプライアンスを守りつつ、リスクを管理することが必要です。

4. 医療

医療業界では、患者情報や医療記録、診断結果などの重要なデータを保護するためにデュプリケーターを使用します。患者のプライバシーを守るため、冗長性とバックアップを確保することが法的に求められる場合があります。デュプリケーターを使用することで、効率的にバックアップを取ることが可能です。

デュプリケーターの原理

デュプリケーターはまず、ソースデータを読み取ります。ソースデータはHDDやSSDなどの記憶媒体に保存されています。これらのソースメディアからSATAやUSBなどのインターフェースを使用して内容を読み取る仕組みです。

ソースデータを読み取った後、指定された複製先メディアにコピーします。複製先メディアにはハードディスクやネットワークストレージなどがあり、データをそのまま1:1でコピーする場合もあれば、圧縮や暗号化などの処理を加えることもあります。

また、複数の複製先メディアに同時にコピーできる製品も販売されています。このような並列処理を活用することで、大量のデータを短時間で複製することができ、時間やコストの削減が可能です。

上記のように、メディアのコピーを効率よく行うことを中心に構築された装置です。安全性や可用性を確保するために、多くの業界で利用されています。

デュプリケーターの選び方

デュプリケーターは以下の要素を考慮して選定します。

1. 対応メディア

まず、対応するメディアを確認することが大切です。HDDやSSD、USBメモリ、SDカード、DVDやBlu-rayディスクなど、様々なタイプのメディアに対応した製品が販売されています。自分が複製したいメディアに対応している製品を選定する必要があります。

2. インターフェース

デュプリケーターの一般的なインターフェースにはSATAやUSBなどがあります。SATAは特にHDDやSSDの複製に使用され、データ転送速度が高速で、デスクトップやサーバー環境で使用することが多いです。

一方、USBインターフェースは、外部ストレージデバイスやフラッシュドライブの複製に便利です。

3. 処理速度

処理速度は、デュプリケーターのパフォーマンスに直結します。コピー速度は複製するメディアの種類やインターフェース、デュプリケーターの内部設計に依存します。高い処理速度を持つデュプリケーターを選ぶことで、メディアを効率的に複製することが可能です。

本記事はデュプリケーターを製造・販売する株式会社ワイ・イー・シー様に監修を頂きました。

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PEEKフィルム

監修:株式会社旭ポリスライダー

PEEKフィルムとは

PEEKフィルム (ポリエーテルエーテルケトン、英: Poly Ether Ether Ketone) とは、PEEK樹脂を原材料とする薄膜素材です。

スーパーエンプラに分類されるPEEK樹脂の性質を持つPEEKフィルムは、耐熱性、耐化学性、機械的強度、電気絶縁性など多くの優れた特性を備えます。また、接着や熱圧着、コーティング、表面処理、ダイカットなど様々な二次加工も可能で、設計・加工の自由度をもたらします。

PEEKフィルムは、電子機器、半導体、航空宇宙、自動車、医療、工業など幅広い分野で使用され、耐久性・軽量化など製品性能の向上にはなくてはならない熱可塑性フィルムです。

PEEKフィルムの使用用途

PEEKフィルムの主な使用用途を紹介します。

1. 電子機器および半導体

ガスケットやフレキシブルプリント基板などの電気絶縁用途として用いられます。クリーンルーム環境下での半導体製造工程におけるウェハーキャリアや、ウェハー搬送テープにも適しています。

2. 航空宇宙産業

航空機のエンジン用断熱遮音ブランケットや電気絶縁用途として使用され、機体の軽量化及び燃費向上の効果があります。

3. 自動車産業

自動車の高温部品の耐熱マスキングや電気絶縁用途として活用されます。高温下での安定性が求められるエンジンやモーター、バッテリーなどに適しています。

4. 医療分野・食品

生体適合性や滅菌処理が必要な医療機器部材や医療用ラベル、センサーの保護を目的として使用されます。また、飲食品の加工装置や包装材料にも使われています。

5. 工業分野

化学薬品や溶剤に対する耐性が必要な、過酷な環境でのライニングや保護フィルムとして使用されています。銅線の電気絶縁被覆や、圧力センサーや熱交換器の部材などにも適しています。

6. 印刷やラミネート

高い寸法安定性や耐熱性が求められる高性能ラベル印刷や、ラミネート加工に使われています。

7. スピーカー

携帯電話のスピーカー用の振動膜として使用され、優れた音響性能を発揮します。

PEEKフィルムの性質

PEEKは、エーテル基とケトン基で結合した高い結晶性を持つ熱可塑性樹脂です。PEEKフィルムの優れた特性は、原材料であるPEEK樹脂の性質に由来しています。以下に、PEEKフィルムの主な性質を記載します。

1. 耐熱性

PEEKフィルムの性能が維持できる連続使用温度は、電気的用途が約200℃、機械的用途が約220℃です。高温環境でも形状や特性を維持します。また、熱水及びスチームにも耐性があり、高圧蒸気滅菌も可能です。

2. 機械的強度

高い結晶性により、引張強度や耐摩耗性、耐衝撃性が優れており、負担がかかる環境でも長期間使用できます。

3. 低吸水率

低吸水率であり温度変化や応力に対しても収縮や変形が少なく、安定した電気特性及び寸法特性があります。

4. 化学的耐性

酸、アルカリ、溶剤、油などの化学物質に対し高温下でも耐性があり、腐食に強いです。耐薬品性が求められる医療機器にも使用できます。但し、濃硫酸は溶解するため注意が必要です。

5. 電気絶縁性

優れた絶縁特性を持ち、高電圧や高周波環境での使用に適しています。

6. 低毒性

低ガス放出性・低抽出性であり、難燃性にも優れているため、燃焼時に煙や有毒ガスの発生が極めて少ないです。そのため、鉛フリーはんだ工程で使用でき、リサイクルも可能です。

7. 加工性

軽量かつ柔軟性があり、ダイカットやサーモフォーミングが容易で、多様な用途に対応します。

PEEKフィルムの種類 

以下に、PEEKフィルムの主な種類を記載します。

1. 結晶性PEEKフィルム

一般的なPEEKフィルムで、耐熱性や機械的強度、電気絶縁性における標準的な性能をもち、電気絶縁材、機械部品の保護フィルムなどの用途があります。

2. 非晶性PEEKフィルム

非晶性PEEKフィルムは、約400℃の溶融押出法で押し出された溶融フィルムを、約100℃の表面温度の冷却ロールで急冷することで作られます。ガラス転移温度である143℃ 以上の温度で結晶性フィルムになるため、非晶性PEEKフィルムはサーモフォーミングを行いたい用途に適しています。

本記事はPEEKフィルムを製造・販売する株式会社旭ポリスライダー様に監修を頂きました。

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