ノルトロックワッシャーとは
ノルトロックワッシャーとは、緩み止め機能をもつ2枚組のワッシャーです。1982年にノルトロック社によって発明されました。
ノルトロックワッシャーは2枚1組となっており、カム面(上図参照)同士が向き合うよう2枚を重ね、リブがボルト/ナットと相手材にグリップできるように使用します。2枚組の間で接するカムの作用によって、ボルトの回転緩みを「物理的に」許さないウェッジロック機構が作用します。
ノルトロックワッシャーはねじの緩み対策に有効なワッシャーですが、効果が得られるのは回転緩みのみです。ねじの緩みには回転緩み以外に、非回転緩みがあります。非回転緩みはねじによって挟まれている部材が塑性変形することによって生じるものであり、ノルトロックワッシャーでは緩みを防止することはできません。
ノルトロックワッシャーの使用用途
ノルトロックワッシャーは、回転緩みが許されないねじ締結において使用されます。よって様々な分野の特定の部位に使われています。建築物、電力設備、鉄道などの交通輸送分野、各種設備機器など様々です。
具体例を挙げると建築物では吊橋のケーブルバンド、鉄骨橋梁などに採用されています。電力業界では風力発電のタービンローター、原子力発電所の原子炉圧力容器、潮力発電のコンバータ、鉄道車両の連結装置などに用いられています。
ノルトロックワッシャーの原理
1. ボルト/ナットを閉める場合
ボルトの機能はしばしば、バネに例えられます。ボルトは締め付けることで引き伸ばされ、同時に発生する元に戻ろうとする力 (軸力) によって、被締結物を挟み込んでいます。
ノルトロックワッシャーは他の緩み止め製品とは異なり、摩擦ではなく軸力そのものを利用してボルト/ナットが戻り回転を起こせない状態を作り出しています。ノルトロックワッシャーを用いて、ボルトまたはナットを締め付けるとカム同士が噛み合い、2枚組外側のリブがボルト/ナットと相手材表面にグリップして固定します。
このグリップ跡はボルト/ナットと相手材双方にインプレッションマークとして残り、緩み止め効果が作用している証となります。 緩み方向への力が加わると、内側のカム間がスライドするように動き ますが、カムの∠αはねじリード角∠βより大きく設計されているため、カムが動くとワッシャーの厚みが増し、ボルトヘッドを引っ張り上げます。
このウェッジロック技術により、激しい振動に晒されても 回転緩みを物理的に防ぐことができます。
2. ボルト/ナットを緩める場合
ボルト/ナットを緩める時にもノルトロックワッシャーはボルト/ナットと相手材との間はリブにより固定されているため 2枚組内側のカム間だけがスライドし、相手材側のワッシャーは動きません。カムが相手側のカムを1つ乗り越えるまでの間、ボルトヘッドが引っ張り上げられるため軸力が上昇しますが、相手側のカムを乗り越えるとウェッジロックが解除され、取り外すことができます。
また、ノルトロックは締付トルク以下のトルクで取外しができるよう設計されています。
ノルトロックワッシャーのその他情報
1. ノルトロックワッシャーの材質
ノルトロックワッシャーは用途に応じて、通常の鉄 (鋼、デルタプロテクトコーティング) とステンレス (SUS316L相当) だけでなく、スーパーステンレスと呼ばれる高耐食性ステンレス鋼、254SMO® (SUS312L相当) 、Alloy C276 (ハステロイC-276同等材) 、Alloy718 (インコネル718同等材) で作られています。
2. ノルトロックワッシャーの再利用
ノルトロックワッシャーは再利用が可能です。初回利用時は2枚組のワッシャーは糊付けされています。再利用時など糊が剥がれた後は、カム面 (ギザギザが大きな面) 同士が接触するよう重ねて取り付けます。また、再利用できる回数は、使用条件などにより異なります。
3. ノルトロックワッシャーの締め付けトルク
ノルトロックワッシャーを用いた締結における締め付けトルクは、それぞれの利用者の必要軸力により決めるのは一般の締結と変わりません。その上でメーカーでは、トルク決定のためのトルクガイドラインや、ノルトロック締め付けトルク自動計算アプリなどを準備しています。
参考文献
https://www.nord-lock.com/ja-jp/nord-lock/products/washers/dimensions/
https://rivi-manufacturing.com/
https://morisita-fastener.co.jp/products/detail.php?id=239
https://www.nord-lock.com/ja-jp/nord-lock/torque-guidelines/