帯電防止剤

帯電防止剤とは

帯電防止剤とは、プラスチックや合成繊維といった絶縁体表面に電子が偏在化、蓄積され、静電気が起きる帯電現象を防止する薬剤です。

静電気が起きるとほこりや花粉などが吸着し、汚れの原因となったり、静電気が放電されると不快に感じたり、家電や電子機器においては故障や誤作動につながります。また、帯電したもの同士の間には、静電的な引力や斥力が働くため、ものづくりの工程での不具合を招くケースも多いです。このような静電気によるトラブルを避けるために、帯電防止剤が用いられます。

帯電防止剤には、プラスチックの成形品やフィルムに塗布して使用する塗布型帯電防止剤と、練り込んで使用する練り込み型帯電防止剤があります。

帯電防止剤の使用用途

帯電防止剤は、電気製品や自動車、紙、繊維、印刷、樹脂、フィルム、プラスチック、電子材料など様々な分野で使用されています。使用目的は、商品の性能を向上させるためと、商品の製造工程における不具合をなくしたり、生産性を高めるための2つがあります。

1. 商品の性能向上を目的とした使用用途

  • 家具、衣類へのホコリの付着防止や静電気防止
  • 家電、電子機器などのホコリ付着防止や、静電気による破損、誤作動防止
  • 車のプラ部分各所、室内内張、エンジンカバー、エアクリボックス内側吸入部分の静電気除け
  • 電子機器搬送ケースや緩衝材の帯電防止
  • フィルムなどの付着防止
  • 粉末をいれる袋への粉末の付着防止

2. 生産性向上を目的とした使用用途

生産性向上を目的とする場合、後工程で帯電防止剤を除去するケースと商品性能向上を目的にそのまま残すケースがあります。

  • 繊維製造における紡糸、延伸、紡績工程での帯電防止
  • フィルム製造工程における、フィルム同士の張り付き防止

帯電防止剤の原理

プラスチックの帯電防止方法

図1. プラスチックの帯電防止方法

帯電防止剤は、プラスチックへの塗布 (表面処理)または練り込むことで、プラスチック表面またはプラスチックそのもののイオン伝導性を向上させています。イオン伝導性を向上すると、プラスチック表面が帯電しにくくなるためです。

プラスチックの帯電を防ぐためには、物体の電子伝導性を向上させる方法もありますが、帯電防止剤のほとんどはイオン伝導性を向上させています。

電子伝導性の向上も帯電防止の極めて有効な手段ですが、プラスチックの表面に金属めっきの施工や、カーボンブラックや金属粉などの電子伝導性の高い導電フィラーの添加が必要です。

ただし、これらの処理のほとんどが、カーボンや金属の色がプラスチック表面に着色されるため、黒色、または金属の色がついてもよい用途に限られます。

帯電防止剤の作用機構

帯電防止剤の分類と作用機構

図2. 帯電防止剤の分類と作用機構

帯電防止剤はプラスチック表面に帯電防止剤を存在させることで、プラスチック表面に静電気が帯電しにくい状態にします。施工方法は、塗布型と練り込み型の2通りです。

主に、帯電防止剤などの低分子型帯電防止剤が使用され、練り込み型は低分子型帯電防止剤のほかにも、分子内にイオン伝導性部位をもったポリマーなどの高分子型帯電防止剤が用いられます。

1. 塗布型帯電防止剤

塗布型帯電防止剤は、プラスチック成形品の表面に塗布され、空気中の水分を吸着することで静電気を逃がします。しかし、表面に塗布されているだけなので、掃除などの際の水拭きなどで除去されてしまい、持続性が低いです。

2. 練り込み型低分子帯電防止剤

練り込み型低分子帯電防止剤は、プラスチックに練り込んだ際に表面ににじみ出てくるように設計されており、プラスチック成形後に表面に帯電防止剤の膜が表面に形成され、この部分に水分が吸着されることで静電気を逃がします。そのため、プラスチックへの練り込み量は0.2~2%程度と少なめで効果を発揮します。

塗布型同様に水拭きなどで簡単に取れてしまいますが、拭き取られてもプラスチック内部に帯電防止剤が残っている限りは、内部から再びにじみ出てくることで帯電防止性が復活します。

3. 練り込み型高分子帯電防止剤

練り込み型高分子帯電防止剤は、低分子型と異なり分子が大きいため、にじみ出てくるような効果はありません。そのため、成形直後から表面に必要量存在させておく必要があります。

5~20%とかなりの量を練り込んでおく必要がありますが、プラスチック中にしっかりと組み込まれており、水拭き程度では拭き取られることがない点が魅力です。そのため、効果の持続性では最も長くなります。

帯電防止剤の種類

帯電防止剤の種類

図3. 帯電防止剤の種類

帯電防止剤の種類としては、図3のようなものが代表例として挙げられます。前述したように、種類によって特徴や最適な用途が異なるため、状況に応じて適切な選定が必要です。

参考文献
https://www.dks-web.co.jp/catalog_pdf/585_1.pdf
https://www.hyosinnet.com/unelec_spray.html
http://www.nissin-kk.co.jp/product/taiden.html#ta_01
https://www.techspray.com/esd-products

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