除鉄装置とは
除鉄装置とは、井戸水などに含まれる鉄を取り除く装置です。
薬品を用いて水中に含まれる鉄の酸化や抽出を行い、濾過された井戸水は飲料水や生活用水として利用可能です。
中小規模施設用から、教育施設、介護施設、病院のような大規模施設用まで、現場に合ったサイズの除鉄装置を選べます。鉄、マンガン、硬度成分を除去できる除鉄除マンガン装置もあります。
除鉄装置の使用用途
除鉄装置を用いると井戸水を一般飲料水、雑用水、工業用水として幅広く利用できます。鉄の濃度が高くて井戸水を利用できない場合は、井戸ポンプと屋内配管の間に除鉄装置を設置するとさらに安全に使用することができるようになります。
特にイオン交換方式の除鉄除マンガン装置は日常生活で使用するすべての水を軟水化できます。井戸水の除鉄や除マンガンに加えて硬度成分を取り除き、軟水化も含めて除鉄除マンガン装置1台だけで可能です。
従来の蛇口に設置する方式とは異なり、井戸と屋内配管の間に除鉄装置を設置すると家庭内のすべての水を軟水化するため、調理、風呂、洗濯などの日常のあらゆる水を軟水として供給できます。
除鉄装置の原理
除鉄方法はイオン交換方式と接触酸化方式の2種類があり、それぞれの方式で原理は異なります。
1. イオン交換方式
イオン交換樹脂 (英: ion exchange resin) を使用した水処理装置です。イオン交換樹脂は合成樹脂の一種で、イオン交換ポリマーとも呼ばれます。イオン交換基として電離する分子構造を有し、水中に含まれる鉄イオンを吸着して処理可能です。同時に硬度成分を取り除き、軟水化も可能です。
イオン交換樹脂に吸着された鉄、マンガン、硬度成分が飽和状態になると除去性能が低下します。したがって水質によって再生のサイクルを考慮する必要があります。
再生とはすべてイオン交換方式の装置に必要不可欠な装置内部の洗浄を指し、吸着によって取り込まれた含有成分を専用のボイラーソルトのような置換剤を使って、鉄、マンガン、硬度成分などを剥離させます。ろ材洗浄によって除去能力を再生すると運転が長期安定し、除鉄装置で処理された水が提供されます。
2. 接触酸化方式
次亜塩素酸ナトリウム (NaClO) を加えて水中に含まれる鉄分を強制的に反応させ、砂濾過器のような装置によって濾過すると鉄を取り除けます。濾材には、砂、アンスラサイト、バーム、セラミック粒などを使用可能です。
地下水に含まれる鉄分は主に重炭酸第一鉄として存在しています。重炭酸第一鉄と次亜塩素酸ナトリウムの反応ではFe(OH)3やFe2O3・3H2Oが生成し、不溶解性物質 (英: suspended solids) となるため、反応で生じた不溶性の鉄を濾過で物理的に除去可能です。
地下水中の鉄分は空気中の酸素や原水中の溶存酸素と接触した際にも不溶性のFe(OH)3やFe2O3・3H2Oが生成します。
除鉄装置の選び方
イオン交換方式や接触酸化方式のメリットやデメリットを考慮して選択する必要があります。
1. イオン交換方式
鉄の濃度が高くても除鉄でき、装置1台だけで軟水化が可能です。少量の水にも適用でき、短時間で再生し、塩素を使わないため安全性が高くて腐食の心配もありません。設置にスペースを取らず、水量に見合った再生ができ、ボイラーソルトを節約できます。しかし殺菌はできず、状況に応じて殺菌器が別で必要です。酸化した鉄も除去できません。
2. 接触酸化方式
塩素を用いて鉄を取り除き、同時に殺菌も可能です。使用する塩素は安価ですが、2ppm以上の高濃度の除鉄は難しく、軟水化のためには別で軟水器が必要です。設置にスペースを取り、大量の処理水が必要で、逆洗や再生に長時間かかります。高濃度の塩素を使用すると配管などが腐食し、濾過器の保守にはコストがかかります。