スナップリングプライヤーとは
スナップリングプライヤーは、工業製品の組立・整備に使用されている特殊工具です。
スナップリングと呼ばれるC型の留め具を取り付る (取り外す) 際に使用され、スナップリングの開口部に先端部を差し込みグリップを握ることで、容易にスナップリングを縮めたり広げたりすることができます。グリップを握ったときの先端部がどちらに動くかで大別され、広がるものが「軸用」閉じるものが「穴用」です。
また、両方の動きをすることができる兼用タイプも用意されています。
スナップリングプライヤーの使用用途
スナップリングプライヤーは、主に工業機械の回転部のベアリング抜けを防止するために取り付けられたスナップリングを脱着する際に使用されます。
スナップリング自体は「マイナスドライバーなどでこじる」「ノーズプライヤで縮める」などの手順で取り外すことができますが、この場合軸やハウジングなど相手の部品を傷つけてしまうことがあります。特に、オイルシール周辺や高速回転する部分のスナップリングを取り外す際、母材を傷つけることは禁忌とされているため、スナップリングプライヤを使用して脱着を行うことが重要です。
回転部の軸の大きさによりスナップリングの大きさが変わってくるため、スナップリングプライヤーも取り外しや取り付けを行うスナップリングの大きさに合わせる必要があります。適正サイズのスナップリングプライヤーを使用しない場合は、うまく作業が行えません。
スナップリングプライヤーの原理
スナップリングプライヤの特徴は、先端よりもグリップ部分が長くすることにより、テコの原理で小さな力でスナップリングの脱着が可能であることです。開口部の広いスナップリングや張力の高いスナップリングの脱着を行う際は、グリップを握りながら引き出す (押し込む) ことが困難な場合があるため、ある程度握り切った後にストッパーによって握り状態で固定する製品も用意されています。
先端部の差し込みが不完全な場合や、先端部とスナップリングの間に油分が付着している場合、突然スナップリングが外れて張力によって激しく飛んでしまうため注意が必要です。必ず両方を脱脂した上で、しっかりと噛み込ませて使用します。
メーカーにより先端部の形状が多少異なっています。これは作業時にスナップリングが外れにくくするための工夫ですが、繰り返しの使用により先端部が消耗していきます。外れやすくなってしまった際には、新品への交換を検討すると良いです。
スナップリングプライヤーの種類
スナップリングプライヤーには軸用と穴用の2つがありますが、それぞれに適応サイズがあります。軸用は持ち手部分を握ると先端部が開くように作られており、穴用は持ちて部分を握ると先端部が閉じるように作られています。
対応軸径は10mm以下に対応しているものから大きなものでは150mm以上にまで対応しているものとさまざまです。サイズが大きくなると曲げるにも大きな力を必要とするので、安全に作業が行えるように安全ストッパーがついていることがあります。
先端形状は大きく2つに分けられ、軸用穴用両ともまっすぐになっているストレートと90度曲げられているベントです。ストレートの場合は軸と平行に持ちますが、ベントの場合は軸に直交するように持ち作業します。
また、通常よりも先端部が大きく伸ばされているものもあり、手が入りにくい奥部の作業ができるようになっている製品もあります。
スナップリングプライヤーの選び方
スナップリングプライヤーは、作業を行うスナップリングの大きさと作業環境に応じて選びます。先端形状はストレートが基本ですが、まっすぐ届かないときにはベントを使います。
軸用と穴用が1本でできるものから、先端をストレートとベントに付け替えられる製品まであり、目的に応じて選び方はさまざまです。例えば、先端部分が交換可能なものにおいては、スナップリングの開口部の形状に関わらず使用できるのがメリットです。
しかし、度重なる使用や無理な使用等によって先端部にガタが出やすいというデメリットも併せ持っています。