調整剤

調整剤とは

調整剤とは、植物の成長、発育を調節するための薬剤です。

農薬登録上の用語では「植物成長調整剤」と呼ばれます。調整剤の主成分は、植物から分泌される植物ホルモンや、それと同類の活性を有する有機化合物などです。

植物ホルモンとは、自身の生理機能を調節するために、植物自らが作り出す物質で、調整剤の代表的な天然成分です。

調整剤の使用用途

調整剤は、花木、稲、野菜、果樹などあらゆる作物の栽培に使用されています。その使用目的は、植物の生理機能に作用して、成育をコントロールすることです。

対象となる植物および作用効果は多種多様なため、植物調整剤の種類も非常に多いです。中でも、植物ホルモンを主成分としたものが多く利用されています。

調整剤の種類

調整剤の主成分として、代表的な植物ホルモンと作用効果は以下の通りです。

1. オーキシン

低濃度では、茎の伸長促進や発根促進といった成長を促す作用があります。高濃度ではエチレンの合成を阻害し、成長を抑制します。

2. ジベレリン

稲の病原菌の代謝生産物です。オーキシンの合成を促し、発芽や茎の成長促進、開花促進などの作用があります。種なしブドウを作るのにも利用されます。

3. サイトカイニン

オーキシンとともに作用することで、発芽の促進、植物の細胞分裂促進などの効果を発揮します。細胞質分裂を意味する「サイトキネシス」から命名されました。

4. アブシシン酸

発芽の抑制、落葉の促進など、植物の成長を抑制する作用があります。また休眠誘導や生長抑制、気孔の開閉調節などを促進します。ストレスホルモンとも呼ばれ、過酷な環境下で植物体内での生成量が増加します。

5. エチレン

花成、開花を促したり、果実の成熟を早める作用があります。茎を肥大化させる働きもなど広範囲の効果を持っています。また、分泌する植物自身以外に周囲の植物体にも影響を与えることが特徴です。

調整剤の選び方

調整剤には、植物の生理機能を促進または抑制させる効果があります。適切な種類のものを選ぶことで様々な効果を得られる反面、選択を間違えるとかえって逆効果となってしまう場合もあります。例えば、サイトカイニンは発芽を促進するのに対し、アブシシン酸は発芽を抑制します。

このように、調整剤を選ぶ際には目的に合った効果が得られるものを選ぶことが大切です。

調整剤の特徴

長所

調整剤は、植物の生理機能を促進または抑制させる効果があり、調整剤を用いることで、植物の品質の向上、収穫量の増加、安定化などが図られます。使用対象による長所の違いは、以下の通りです。

1. 野菜
開花期にオーキシンを含む調整剤を散布することで、花や果実の落下を防いだり、果実の肥大を促すことができます。ナスやトマト、メロンなど、幅広い種類の野菜に使用可能です。

2. 果樹
ブドウの栽培においては、開花前にジベレリンを含む調整剤を散布することで、種無しブドウにすることが可能です。また開花後にもう一度ジベレリン処理することで、果実を大きくすることができます。またリンゴや梨などでは、収穫前の果実の落下を防ぐことを目的として調整剤が使用されます。

3. 水稲
水稲では、ジベレリンの合成を阻害する調整剤を用いることで、水稲の背丈が低くなり、水稲を倒れにくくすることが可能です。これは、穂が水に浸かって発芽したり、収穫作業に手間がかかったりするリスクの軽減に繋がります。また、登熟歩合の向上や病気の予防を目的としても、調整剤が活用されています。

4. 花卉
草花の苗や鉢物に用いられる花卉では、節間が詰まっているものが好まれます。これは、節間が詰まっている方が、花のボリューム感が出るためです。例えば、茎の伸長を抑える調整剤を処理することにより、花卉の見栄えを整えることができます。

5. その他の植物
作物以外の栽培にも、調整剤は応用可能です。例えば、調整剤を用いて芝や街路樹などの成長を抑制することで、剪定作業の効率化をはかることができます。

短所

1. 使用量に注意が必要
調整剤を有効に活用するには、適量の使用が必須です。調整剤は基本的に少量で効果を発揮しますが、少な過ぎると十分な効果が得られないこともあります。また、多過ぎると期待した作用と逆効果が現れたり、作物に調整剤が残留してしまう可能性があったりと、作物に悪影響を与えてしまう場合もあります。

2. 散布時の安全対策
調整剤を使用する際には、調整剤が肌に直接触れないよう注意して作業します。これは、調整剤の中には刺激性のものや医薬用外劇物など、身体に影響を与えるものも存在するからです。また、作業後はすぐに手足、顔などをよく洗い、付着した調整剤を落とします。可能であれば衣服も交換すると、より安心です。

3. 保管方法に注意が必要
調整剤は可能なかぎり1度で使いきれる量だけ用意するようにします。やむを得ず保管する場合は密封し、直射日光に当たらない涼しい場所で保管してください。また、誤飲などの事故を防ぐために、食料品とは別の場所で保管することが重要です。

 

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