導波管

導波管とは

導波管とは、マイクロ波やミリ波付近の電磁波を通す管のことです。

広義には、音波でも可視光でも使用できる言葉であるため、光ファイバーなども含まれますが、一般的にはマイクロ波やミリ波付近の波長の電磁波を通すための管の名称として使用されています。形状は、四角もしくは円形の断面を持つ中空の管の構造体です。

マイクロ波は電子レンジなどに用いられており、物体を温める効果が高い電磁波です。しかし、波長が長いため光ファイバーは使用できず、マイクロ波発生源から処理システムまで送る際は、専用のマイクロ波導波管を用いる必要があります。

導波管の使用用途

導波管の使用用途は、高出力のマイクロ波発生装置の場合が多く、レーダー用アンテナやミリ波周波数帯の信号の伝送用途に使われています。例えば、電子レンジの場合、家庭用の電子レンジのように低出力だとマイクロ波発生装置であるマグネトロンが筐体内に設置されていて、直接照射することができます。

しかし、高出力だとマイクロ波によってマグネトロン自身が破壊されるため、別の場所で照射処理を行わなければなりません。加熱などの処理を行う処理室まで導波管をつなげて用いることで、高出力のマイクロ波が供給されます。

導波管はレーダーにも使用されており、電波照射装置であるスロットアンテナの役割があります。RFなどの通信伝送評価用にもマイクロ波だと同軸ケーブルで対応可能ですが、ミリ波帯のSub THz用途向けには導波管が利用されるケースが多いです。

導波管の原理

導波管の原理は、対象とする周波数の電磁波が、菅の中をその形状に応じた伝搬モードを形成しながら伝搬する物理的な性質を用いる点にあります。導波管でよく用いられる中空タイプの構造においては、内蔵する導体がないため内部損失が少なく、比較的大電力の電磁波を伝搬させることが可能です。

例に挙げると、電子レンジでよく使用されている2.45GHzの振動数の電磁波もマイクロ波であり、この電子レンジの電磁波の波長は12.2cmです。電子レンジのマイクロ波を通したい場合には、導波管の直径は12.2cmの波長程度が必要で、マイクロ波の波長が長ければ長い程導波管の直径は大きくなります。

このように、電磁波の波長を基にして導波管の設計が行われます。導波管の形状は四角形の断面の管が一般的ですが、中には円形の導波管や特殊な目的で使用されるリッジ形導波管もあります。

導波管のその他情報

1. 同軸ケーブルとの比較

これまでは、航空管制塔のレーダーやホーンアンテナなどの無線通信システムにおいて導波管はよく使用されてきましたが、昨今では自動車のミリ波レーダーや、5G/beyond5Gなどの次世代無線通信システムにおいてミリ波帯のアプリケーション開発に使用される機会が増えてきました。

これまでのマイクロ波帯での同軸ケーブルと比較して、以下の点が長所として挙げられます。

  • 低損失での送信が可能であり、耐電力に優れる。
  • 金属製の構造物であり、形状が安定しているため、整合を取りやすく反射が少ない。

しかし、長所だけでなく、以下のような短所も存在します。

  • 周波数帯域幅が狭い。
  • 重量が重く高価。

周波数がマイクロ波の場合は、ケーブルの取扱いのしやすさと周波数帯域がミリ波に比較して低いこともあり、同軸ケーブルが用いられる頻度が高いのです。しかし、ミリ波帯で特に110GHzからのD-band含めた高い周波数領域では、一部製品を除き同軸ケーブルが特性面で対応不十分な周波数でもあるため、一般に導波管が用いられている場合が多くあります。

2. 導波管の仕様サイズ

導波管の場合、各種アプリケーション周波数に適合した導波管サイズを選定する必要があり、特にミリ波の場合にはフランジ規格が異なると使えない場合があるため、その仕様選定には十分注意が必要です。ちなみに、導波管サイズを表す 「WR-xxx」 とは「方形導波管」を意味しており、xxxの数字は導波管内幅を100分の1インチ単位で示しています。

参考文献
http://www.vinita.co.jp/institute/microwave/070010.html
https://kotobank.jp/word/%E5%B0%8E%E6%B3%A2%E7%AE%A1-104024

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