過炭酸とは
過炭酸(ペルオキソ炭酸)とは、炭酸の過酸の総称であり、ペルオキソ一炭酸H2CO4(別称ヒドロペルオキシギ酸)およびペルオキソ二炭酸H2C2O6をさします。
ペルオキシド (パーオキサイド)は広義には過酸化物、狭義にはペルオキシ基-O-O-を有し、一般構造式がR-O-O-Rと表される有機過酸化物をさします。特に、酸素上に水素が置換したR-O-O-Hの構造をもつ化合物はヒドロペルオキシド(ハイドロパーオキサイド)と呼ばれます。そのうち、オキソ酸のヒドロキシ基−OHをヒドロペルオキシド基−OOHに置き換えた構造を持つ化合物を過酸(ペルオキソ酸)と呼び、過炭酸はこの過酸のひとつです。
過酸は金属粉といった共雑物の存在下では急速に分解し、爆発することもありますが、共雑物が少ない状態では比較的安定です。
過炭酸の使用用途
過炭酸そのものの使用用途は非常に限定的ですが、過炭酸の塩は主にその酸化作用を利用した用途があります。
たとえばペルオキソ一炭酸カリウムK2C2O6は、H2O2と同様に酸化・還元の両方の作用を示します。そのため、顕微鏡検査の試薬、写真(残留ハイポの除去)、化学分析における酸化剤、捺染などに用いられました(現在ではあまり使用されていません)。
なお、家庭用の酸素系漂白剤や除菌・消臭剤の成分として使用されている「過炭酸ナトリウム」は通称であり、過炭酸のナトリウム塩ではありません。この化合物は、炭酸ナトリウムと過酸化水素が 2:3 のモル比で混合された付加化合物であり、化学式Na2CO3・1.5H2O2 で表されます。この化合物は、日本の法令上では炭酸ナトリウム過酸化水素付加物と呼ばれています。