シアニドとは
シアニドとはCNであらわされるシアン配位子を有する化合物の総称であり、シアン化合物とも呼ばれます。広義にはニトリル基を有する有機化合物(アセトニトリルなど)もシアニドの一種ということができますが、一般的にシアニド、シアン化合物という名称はシアン化物イオンをアニオンとして有する塩について用いられています。これはニトリル基を有する化合物と、一般的なシアニドとでは大きく性質が異なるためであり、後者は人体に対して非常に有害な化合物として知られています。
代表的なシアニドとして青酸カリの名称で知られるシアン化カリウムが挙げられます。シアン化カリウムはGHS分類において急性毒性、皮膚腐食性/刺激性、眼刺激性、特定標的臓器・全身毒性に分類されています。また法規制について、労働安全衛生法において名称等を表示・通知すべき危険有害物、リスクアセスメントを実施すべき危険有害物、特定化学物質第2類、管理第2類物質に、労働基準法において疾病化学物質に、PRTR法において第1種指定化学物質に、毒劇物取締法において毒物に指定されています。
シアニドの使用用途
シアニドの使用用途としては、その毒性の高さを利用して殺鼠・殺虫剤の燻蒸剤や果実の消毒、金属との錯形成能を利用してメッキや冶金などに使用されています。また、特にシアン化カリウム、シアン化ナトリウムは有機合成におけるシアン化イオン供給源として用いられることが多く、広く反応に用いられます。
シアノ基は強い電気吸引性を有しており、カルボン酸やアミド、アミン、アルデヒドといったさまざまな官能基への変換が可能なため、有機合成における有用な官能基のひとつです。シアノ基の導入方法としてシアニドは最も一般的な反応試薬であり、シアン化カリウムをシアニドとして用いたハロゲン化アルキルとの反応、シアン化銅をシアニドとして用いたザンドマイヤー反応などが知られています。