無電解ニッケル

無電解ニッケルとは

無電解ニッケルめっきとは、電気を使用せずに化学的還元反応を利用して、素材表面にニッケル-リン合金皮膜を析出させる表面処理技術です。

電解ニッケルめっきと異なり電流分布の影響を受けないため、複雑な形状の部品であっても均一な膜厚でめっきを施すことが可能です。無電解ニッケルめっきは、自動車、電子機器、航空宇宙、化学プラントなど幅広い産業分野で利用されています。特に、寸法精度が要求される精密部品や、過酷な環境下で使用される部品の機能性向上、長寿命化を実現しています。

無電解ニッケルの使用用途

無電解ニッケルの使用用途として、自動車部品、電子機器部品、航空宇宙部品、化学プラント部品の4つを解説します。

1. 自動車部品

自動車産業では、エンジン部品、トランスミッション部品、ブレーキ部品など、高い耐久性や信頼性が求められる部品に無電解ニッケルめっきが採用されています。例えば、ディスクブレーキやピストンには耐摩耗性と耐食性を付与するために、シリンダやベアリングには潤滑性と耐焼き付き性を向上させるために用いられます。自動車部品は、高温・高圧、摩擦、腐食性ガスなど過酷な環境にさらされるため、無電解ニッケルめっきによる表面改質が有効です。

2. 電子機器部品

電子機器分野では、コネクタ、スイッチ、リードフレームなどの接点部品や、ハードディスクドライブの基板などに無電解ニッケルめっきが広く使用されています。接点部品においては低い接触抵抗と高い耐摩耗性を実現し、長期にわたる安定した電気的接続を確保します。

3. 航空宇宙部品

航空宇宙分野では安全性と信頼性が重要視されるため、無電解ニッケルめっきは重要な役割を担っています。例えば油圧機器や電気系統部品、バルブ配管、エンジン部品、スクリュー部品などに適用され、耐食性、耐摩耗性、硬度の向上を実現しています。特に、宇宙空間や極低温環境など極限環境下での使用に耐えうる表面特性が求められる場合に有効です。

4. 化学プラント部品

化学プラントでは、反応槽、輸送管、揺動弁、バルブ類、ポンプ、パイプ内部、熱交換器など、腐食性の高い化学物質にさらされる部品に無電解ニッケルめっきが施されます。無電解ニッケルめっきは耐食性だけでなく耐摩耗性にも優れているため、化学物質による腐食や摩耗から部品を保護し、プラントの安全性と安定稼働を実現しています。