成分分析装置とは
成分分析装置とは、成分 (化学的な組成や元素の組成) を確認する目的で原料や製品などを分析する装置です。
成分分析装置には樹脂、金属、食品、体組成などの対象にそれぞれ特化した製品があります。分析対象に応じて多種多様な分析原理のものが存在し、運用されている状況です。
代表的な成分分析装置を以下に示します。
- ハンドヘルドの非破壊分析装置であるもの:蛍光X線を用いるもの (合金・土壌・貴金属・樹脂などの元素の測定) 、レーザーによる光学発光を用いるもの (合金などの軽元素の測定) などがあります。
- 栄養成分の迅速分析装置であるもの (栄養成分自動分析装置) :近赤外分光法を用いるものです (有機物の測定、食品など) 。スペクトルを解析することで各成分の定量が出来るようになっています。
- 体成分 (体組成) の分析装置であるもの (体組成計) :身長・体重・インピーダンスを用いるものです (人体の筋肉量・体水分・体脂肪の測定) 。
- 成分分析ができる据え置き型の分析機器であるもの:X線回折装置 (XRD) 、フーリエ変換赤外分光分析装置 (FTIR) 、ラマン分光光度計 (Raman) などの分光分析装置を成分分析装置と呼ぶ場合があります。また、燃焼後に特定の元素由来の生成物 (ガス) を検出する燃焼分析装置も成分分析装置と呼ばれます。
成分分析装置の使用用途
成分分析装置は多様な目的・用途で使用されています。以下に主な4つの類型を記載します。
原料の受入検査・製品の出荷検査
原料の受入検査・製品の出荷検査はハンドヘルド型の非破壊分析装置の主な使用用途です。
入手した原料が正しい成分を有しているかを非破壊的に検査します。また、出荷前に、製品の組成が規格通りであるかを非破壊検査または抜き取り検査します。
食品の栄養成分検査
食品を対象とした加工食品製品の抜き取り検査は栄養成分自動分析装置の主な用途です。加工食品製品が設定通りの成分を含んで製造されているかを確認する目的で、製品の抜き取り検査を行います。
また、栄養成分自動分析装置の普及により、惣菜製品の栄養表示を計算ではなく分析結果の実測値に基づいて行うことや、食事を直接分析して栄養管理の精度を向上させることも提案されています。
健康診断・健康管理
健康診断・健康管理は体組成計の用途です。代表的な目的は、体脂肪率を把握し、高値が持続しないように生活習慣を改善することです。
製品の研究開発
製品の研究開発では、製品の組成を確認するため、あるいは、製品の時間経過による劣化を把握するために成分分析が行われます。この場合には実験目的に応じた装置が用いられ、据え置き型の分析機器が多く用いられます。
成分分析装置の原理
成分分析計は、分析対象ごとに異なる原理を用いています。以下に代表的なものを示します。
蛍光X線を用いるもの(蛍光X線分析、XRF)
X線を物質にあて、元素の電子を励起させ、この電子が放出するエネルギーを蛍光X線として観察します。蛍光X線は元素に固有の特徴を持つため、これを用いて成分を特定します。
レーザーによる光学発光を用いるもの(レーザー誘起ブレークダウン分光、LIBS)
高集束レーザーを物質にあて、電子励起状態になった原子やイオンを含む微量のプラズマを発生させます。原子が基底状態に戻るときに放出する光は元素特有の波長をもつため、これを用いて成分を特定します。
近赤外分光法を用いるもの
食品分析に近赤外吸収スペクトルを用いた成分分析が広く活用されるようになっています。
水分や有機物が近赤外光を吸収し、化学構造に特有の吸収波長があることを利用したものです。データを多変量解析することで複数成分の定量ができるようになっています。
燃焼後ガス分析をするもの
試料を燃焼し、特定の元素由来の生成物(ガス)を検出します。例えば、炭素は二酸化炭素として、イオンは二酸化硫黄として検出します。これらは赤外吸収を有するため、主に赤外吸収法で検出します。
インピーダンスを用いるもの
体組成計は、インピーダンス(交流電流の流れにくさ)を用います。脂肪に電流が流れにくいことを利用して組成を推定します。