溶剤回収装置

溶剤回収装置とは

溶剤回収装置とは、使用済みの廃溶剤から水分や不純物などを取り除いて再び利用可能な溶剤成分を回収する装置です。

溶剤回収装置は、蒸留の原理を利用して廃溶剤中から純度の高い溶剤を取り出す仕組みです。溶剤回収装置を用いて廃溶剤を再生することで、廃棄物排出量の削減や減容化、溶剤の購入コスト削減などの効果が期待できます。

なお、廃溶剤を再生する装置の他、印刷プロセスなどで使用される有機溶剤の蒸気・ガスを回収し、再利用可能な液体形態に凝縮する装置を指して溶剤回収装置と呼ぶ場合もあります。

溶剤回収装置の使用用途

1. 利用分野

溶剤回収装置は、有機溶剤を使用する様々な分野で使用されています。有機化学、無機化学、食品、医薬、金属、印刷など広い範囲の分野にまたがり、化学薬品工場、金属加工工場、印刷工場、クリーニング工場、塗装工場、ゴム工場など、様々な工場で利用が可能です。

2. 具体的な使用目的・シーン

上記の様々な分野において、廃溶剤からの溶剤回収を行う溶剤回収装置の主な使用目的には下記のようなものがあります。

  • 電子部品・精密機械の洗浄で排出される廃溶剤の回収
  • 塗装工程の際に排出される廃溶剤の回収
  • 化学・医薬品・食品・発酵工業などにおける廃溶剤回収
  • 汚泥・排水残渣の高濃縮減容化
  • 廃溶剤の焼却前の濃縮

また、排気されたガスを回収して濃縮するタイプの溶剤回収装置もあり、主な用途は下記の通りです。

  • 自動車関連部品、精密部品、半導体などの脱脂洗浄工程における排気処理
  • 化学薬品・樹脂などの乾燥・反応工程における排気処理
  • 医薬原体・中間体などの、反応・遠心分離・貯蔵の各工程における排気処理

溶剤回収装置の原理

1. 廃溶剤からの回収

溶剤回収装置は、蒸留を利用して廃溶剤から純粋な溶剤成分を取り出します。再生したい溶剤の沸点まで加熱して気化させ、生じた蒸気を冷却して凝結させることで溶剤成分だけを回収できます。

一般的な装置の仕組みは下記の通りです。

  1. 廃溶剤を蒸留用のタンクに投入する
  2. ヒーターでタンク内の廃溶剤を沸点まで温める
  3. 溶剤が気化して蒸気になる
  4. 生じた蒸気を空冷コンデンサ・冷却ファンで冷却する
  5. 冷却によって再度液体になった純粋な溶剤を回収する

2. 排ガスからの回収

排ガスから溶剤を回収するタイプの溶剤回収装置は、粒状活性炭などを利用して排ガス中の溶剤を吸着させ、清浄空気を排気します。活性炭層に水蒸気を吹き込むことにより吸着した溶剤を活性炭から脱離させ、凝縮・分離し、回収する仕組みです。

3. 回収可能な溶剤

溶剤回収装置で回収可能な主な溶剤には、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ハロゲン系溶剤などがあります。一方、下記の条件に当てはまる溶剤は、一般的に回収することが困難です。

  • 沸点が280℃以上の場合
  • 液性が酸性やアルカリ性の場合
  • 粘度が高い場合
  • ニトロセルロースが混入されている溶剤

溶剤回収装置の種類

溶剤回収装置には様々な種類があり、用途に応じて使い分けることが必要です。廃溶剤から回収する製品と排ガスから回収する製品で大きく装置の仕組みが異なり、その上でそれぞれに細かい機構の違いがあります。

1. バッチ式と連続式

廃溶剤からの回収装置には、バッチ式と連続式があります。バッチ式とは、タンクに一回充填した分の廃溶剤のみを処理する方式です。

対して連続式とは、タンク内の廃溶剤の減少に応じてポンプで連続自動充填される方式です。廃溶剤の減少は蒸留タンク内の液面センサーで感知されます。連続式の長所は、追加充填を行うことでタンク容量の数倍の量を連続的に再生することが可能である点です。

2. 圧力

溶剤回収装置は、常圧で蒸留する製品と減圧で蒸留する製品があります。常圧で蒸留する製品の場合、主に溶剤の沸点温度が約50℃~180℃の溶剤を処理することが可能です。

それよりも沸点の高い溶剤を処理する場合は減圧式の製品を用いる必要があります。減圧下では沸点が下がるため、概ね常圧時の沸点が250℃までの溶剤の蒸留が可能です。