和紙壁紙

和紙壁紙とは

和紙壁紙とは、伝統的な製法で作られた和紙を用いて製造された壁紙 (クロス) 製品です。

やわらかな風合いに優れており、天然素材を漉き込んだり、伝統的な土壁風の意匠を用いたりと、製品によってそれぞれ個性ある雰囲気づくりが可能です。また、機能性にも優れており、調湿作用、調光効果、吸音効果などを期待することができます。

和紙壁紙の使用用途

和紙壁紙は、インテリアに和風の風合いを持たせたい場合に使用されることが多いです。全体的に光の反射も明るくなり、柔らかい印象になります。

和室に使用すると、襖や障子、調度品と統一性の取れた、美しい空間を演出することができます。また、吸音性や調湿作用があるため、寝室にも適しています。リビングをはじめとするフローリング貼りの洋室に使用すると、和洋折衷のモダンな印象の空間づくりが可能です。アクセントクロスのように色を切り替えて使用する方法も効果的です。天井に施工することで、照明の光を柔らかく反射させる使用方法もあります。

ただし、和紙壁紙は水には弱く、水性汚れや油汚れはシミになります。そのため、水回り全般や、ペットのいるお部屋や子供部屋などの汚れやすいお部屋にもあまり適していません。トイレなどの匂いがこもりやすい場所も、壁紙が匂いを吸着してしまうので避けたほうが良いとされています。

和紙壁紙の原理

1. 原料

代表的な伝統的和紙の原料は、楮 (コウゾ) 、三椏 (ミツマタ) 、雁皮 (ガンピ)です。コウゾは、クワ科の植物で1年に約2~3メートルにもなり、毎年収穫できる素材です。維が長くて太く、丈夫な紙ができます。ガンビは栽培が難しいため、自然のものが原料にされています。繊維が細く、強くて粘りがある素材です。ミツマタは、原料として収穫できるまでに3年ほどかかりますが、繊維が丈夫で細くつやがあります。

また、ケナフや亜麻など非木材紙を原料としたクロスも製造されています。ケナフは、成長が非常に早く短期間で多くの収穫が可能です。木の5倍以上の炭酸ガスを大量に吸収して固定する環境改善作物でもあります。上質で強く、風合いの良い紙を作ることができます。

その他、麻、イネワラ、オクラ、竹幹、熊笹、竹皮、炭などが原料として使用されることがあります。

2. 性質

和紙には和紙の繊維が手触りの優しさや絶妙な色合いがあり、独自の質感による美しさがあります。自然素材であることから、燃やしても有害ガスが出ることがなく、土に埋めればそのまま自然に還ります。また、化学的な処理を最小限に抑えた製造工程により、ホルムアルデヒドをはじめとする化学物質の放散も無く、シックハウス症候群の恐れがありません。

機能面では、

  • 調湿作用
  • 調光効果
  • 保温効果
  • 吸音効果

などの効果が期待できます。調湿作用により結露やカビが発生しにくく、夏は涼しく冬は暖かく過ごすことができ、 繊維が光を乱反射させるため照明の灯りや太陽光も柔らかく感じられます。

和紙壁紙の種類

1. 概要

和紙壁紙には様々な種類の和紙が使用されます。前述の通り様々な原料が用いられている他、色合いも白系、茶色系、灰色系、緑系、青系など様々なものがあります。また、金箔入や熊笹入りなど、異素材を漉き込んだものを選択することも可能です。

和紙壁紙で用いられている代表的な種類には、土佐和紙、柿渋和紙、漆和紙などがあります。

2. 土佐和紙

土佐和紙とは、高知県土佐市で作られる伝統的な和紙です。古い起源を持ち、平安時代より作られてきたと言われています。日本の伝統工芸品として指定を受けており、土佐和紙を代表する「土佐典具紙 (とさてんぐし) 」と「清帳紙 (せいちょうし) 」は国の無形文化財にも指定されています。

和紙壁紙としては様々な色が用意されており、麻や藁などを漉き込んだものも選択することが可能です。

3. 柿渋和紙

柿渋和紙は、柿渋を塗った和紙素材です。柿渋とは、未熟な青柿の汁を発酵させて作られた液で、古い柿渋は塗料に適しており、色が濃く艶のある仕上がりになります。

和紙に柿渋を塗ることで、耐久性を高めることが可能です。 また、松煙墨や、赤色顔料のベンガラを混ぜる場合もあります。柿渋には、防虫、抗菌、防腐、消臭、防水など、様々な効果があり、柿渋和紙にもこれらの効果が発揮されます。

4. 漆和紙

漆和紙とは、コウゾを主原料とした和紙に、漆を塗ったものです。非常に強い和紙を作ることができます。

漆和紙の壁紙は、濃い目の色が多く、華やかで重厚な雰囲気をも演出することが可能です。また、表面が立体的になっているため、明かりが当たると陰影を楽しむこともできます。